毎朝どこからともなくテラシの匂いが漂ってくる。テラシは主としてエビを発酵させて固めた調味料でベトナムのニョクマムなど魚醤系の匂いがする。サンバル作りには必需品でうま味を出してくれるがあまりに強烈だと少し辟易とする。朝だけではない、昼過ぎにもときとして匂ってくる。こうなると臭いという字をちょっと当てたくなってくるが、やはりアジアの食に欠かせないもので、臭いは失礼だろう。
それにしても日本ではどうしてこの種の調味料が全国区の調味料にならなかったのだろう。この種のものでは秋田のしょっつるが浮かぶ程度で、日本料理の主流の調味料にはなりえなかった。どうしてなのだろうか、このあたりを解読した書物にまだおめにかかっていない。
毎朝のこの匂いはおそらくいつも賑わいを見せる近所の魚料理の店「マクベン」が客に出すサンバルを作っているものだろうと思い当たった。