朝の9時過ぎの海岸沿いの舗道を自転車で走る。白い制服を着た小学生の一団が砂浜に座り込んでお弁当を食べている。横にはMATHEMATICSと書かれた赤い教科書が置かれている。一種の遠足かなと思いながら横を通ると笑顔で一斉にこちらをみる。
パラボラ型の結婚式場が見えてくる。青みがかったアクリル板のパネルと骨組みだけで建ててあるので、内部が透けて見える。ときどき牧師とカップルが結婚式を挙げているところにぶつかる。強烈な太陽光をまともに受けるので空調なしでは温室どころの暑さではないはずだなどと余計なことが頭に浮かぶ。
砂浜に育つ樹木は圧倒的にケタパン(KETAPANG)と呼ばれるものが多い。ゴムの木の葉によく似た葉をつけて暑熱の海岸に日影と涼しさを与えてくれる。この木には長径が5センチほどのフットボール型の木の実がなり、中にはナッツ様の実がなり、リスの餌になるという。
松の木のような木肌をしているカンプルン(CAMPLUNG)と呼ばれる樹木も目につく。非常に堅く、クルクンを作るのに用いる。クルクンは村の寄合所などにある、村人に集合などを知らせる鐘のようなものだが、この固い木で作るという。
ハントァ通りに近づいてくるとヌサ・レンボガン行きの高速艇に乗るバックパックを背負うなどした旅行者の一団と行き交う。ハントァ通りを横切るとヌサ・レンボガンへ物資を運ぶ船着き場が見える。船着き場と言っても足場も何もない堤防があるだけで、その堤防の上に今日はプロパンガスボンベが数十個も並んでいた。カニのような形をしたローカル船に男たちが重い荷を肩に担いで運ぶ。足場は護岸された切り立った石があるばかりで、その上を素足でわたっていく。さらに海水に腹まで使って船に運び込む。