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まさおレポート

「ブレイキング・バッド」と米国覚醒剤の蔓延

初稿2018-10-11 追加2024-03-25

さらに追記

今まで見たことにない悪人像を作り出した。

見直しての追記

鉄板ネタのドラッグを元天才化学者が肺がんを宣告され余命数年と宣告される。息子は脳性麻痺で補助具で歩行するが大学進学を控えて資金が必要だ。途中で義兄弟のハンクにもリハビリで金が必要な事態になる。

追い詰められてメタンフェタミン製造に走ることで巨大な悪の帝国を築き上げ、最後は自ら仕掛けた改造機関銃で悪の一味を道連れに死ぬ。役者の演技と現代にありそうな筋の設定でどんどん引きずりこまれる。47分62話だから相当な長さだがウォルター・ホワイトを演じるブライアン・クランストンの魅力で見せる。

しかし何かが残ったかと自問すると果たしてどうだろう。今のところ何も浮かんでこない。映画にそんなことを期待するのは無意味であり、言ってみれば安全なバスで暗黒街を旅する面白さだろうか。いや善と悪は繋がっている、善即悪 悪即善の深いところを描いている、そんなメッセージを投げかける。

 


米国テレビドラマ「ブレイキング・バッド」は2008年1月20日から2013年9月29日まで5年に渡り放送されたとあり、制作はおそらく2007年ごろだろうか。このころ米国でメタンフェタミン乱用が始まったのだろうか、その後の蔓延をこの米国テレビドラマは予兆(メッセージ)として映し出している。

但し、「ブレイキング・バッド」は教訓としての効果もあり下記の記事もある。予兆(メッセージ)であり、抑制でもあると見るべきだろう。現代の『ゴッドファーザー』との評はなるほどと思わせる。

NCADDの内部組織で共同議長を務めるハリス・ストラティナー氏は英RadioTimes.comに対して、「人を引きつける見事な作品です。私は『ブレイキング・バッド』を現代の『ゴッドファーザー』だと考えています」とコメントし、本作が影の指導者としての役割を担っていると語ったという。事実、2002年から2006年のピーク時には70万人のメタンフェタミン常用者がいたとの統計があるが、本作の放送が始まってから20万人ほどに減少しているそうだ。https://www.excite.co.jp/News/world_ent/20130904/Dramanavi_021261.html

メタンフェタミンは、心血管障害やけいれん、極度の低体温、膿瘍(のうよう)、精神障害を引き起こす中毒性の高い薬物。アメリカでは年間およそ2万5000人がメタンフェタミンの使用によって命を落としているという。メタンフェタミンを取り上げた『ブレイキング・バッド』では、売春やマネーローンダリング、殺人などを絡めてメタンフェタミン産業が引き起こす社会問題を幅広く描いている。ストラティナー氏は、本作がスタートした2008年から麻薬取締局がメタンフェタミンの製造者を厳しく取り締まるようになったとも話す。


主人公ウォルターはノーベル化学賞に貢献したほどの天才だが高校の化学教師に収まっている。自らのがん治療に金が必要で高い化学の知識を利用して覚せい剤「ブルーメス」を作り始める。彼の覚せい剤「ブルーメス」はノーベル化学賞に貢献したほどの天才が「料理」するため純度が極めて高い。当初は風邪薬からプソイドエフェドリンを抽出していたがは生産が追いつかなくなり、メチルアミンに切り替える。

このテレビドラマと符合するかのように米国ではバージニアからアラスカまでメタンフェタミン(結晶状覚せい剤)使用が米国で急増している。特に地方の田舎町で急増し、オクラホマ州からバージニア州、ケンタッキー州、フロリダ州へと拡大し2018年8月には既にアラスカ州まで北上している。

「ブレイキング・バッド」では当初の小規模製造の段階では薬局での風邪薬の買い付けに数量制限があるため、多数のアルバイトを雇うなどしている場面が登場する。1990年代に素人が風邪薬から覚醒剤を製作できることがわかり2006年に成立したCombat Methamphetamine Epidemic Act(メタンフェタミンの流行を阻止する法令の意)によって、覚醒剤合成に必要な原料を含む風邪薬の店頭販売を制限したことを映し出している。

「ブレイキング・バッド」では主人公ウォルターによって純度の高い覚醒剤の大量製造が可能になり、メキシコの麻薬カルテルにそれまでの96%台の純度から99.1%と高純度のメタンフェタミンを技術移転するエピソードが登場する。現在アメリカ国内で流通しているメタンフェタミンの大部分がメキシコの麻薬カルテル、シナロアの大規模工場で生産しており、純度の高い製品が安価で販売しており、これまでとは比較にならない大量の覚醒剤が出回っている。

「ブレイキング・バッド」ではクリーニング工場の地下で毎日40ポンド程度を「料理」する設定になっているが現在の数百ポンドにのぼるメタンフェタミン生産量は2007年以降の急速な蔓延を物語っている。現在のメキシコの生産量は工業規模で、1日の生産量は数百ポンドにのぼるという。

「ブレイキング・バッド」ではチキンのファーストフードの輸送に巧妙に忍び込ませる手法で大型コンテナによって運ばれるがこれも現在の密輸を予測しているようだ。アメリカ国境警備隊によると、ここ8年間でメタンフェタミンの押収量が約10倍に、2010年の8900ポンド(約4トン)が、2018年の現時点で8万2000ポンド(約37トン)になっている。

カリフォルニア州からアリゾナ州に広がる国境の警備が手薄な隙間をついてアメリカ国内に持ち込まれているが、やはりこのような巧妙に忍び込ませる手法で大型コンテナによって運ばれてるのだろうか。

「ブレイキング・バッド」ではメタンフェタミンは末端で1g1万円程度だが2012年、オクラホマ州で1オンス(約28グラム)は最高1100ドル(12万円)現在は同量が250〜450ドル(約2万8000〜5万円)と下がっている。「ブレイキング・バッド」の描く価格の10分の1になっていることも蔓延に拍車をかけているようだ。

「ブレイキング・バッド」ではジェシー・ピンクマンが鼻から吸ったり、丸い先のついたガラスであぶって煙を吸ったりするシーンが多いが、「スラミング」と呼ばれる静脈内投与も登場する。これはオピオイド蔓延の副産物であり、死亡のリスクを著しく高めるという。ジェシー・ピンクマンの恋人ジェーンはこの2種類の薬物を混ぜて使用する過剰摂取で嘔吐物を詰まらせて窒息死する。

果たしてこの「ブレイキング・バッド」は米国での覚醒剤蔓延に抑止力として働いたのだろうか、予兆としての意味があるのか、あるいは模倣犯を増殖させたか、さてどれに該当するのだろうか答えはよくわからない。しかし極めて付きの興味深いテレビドラマであることは間違いない。

ちなみにブレイキング・バッドは道を踏み外すの意味です。

「プリズン・ブレイク」のシーズン1~4に込められたメッセージ

「プリズン・ブレイク」 メモ

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