NTTは総務省幹部への接待問題で調査報告書を発表したが、「一応やりました」感がある、ほどほどの調査報告書だ。
官僚で出世した人はまれな例外を除いて接待問題に甘い。この問題は日本文化に根深くある「魚心あれば水心」「清濁併せのむ」を是とする現われではないかと。
NTTや総務省だけではない、多くの企業トップがいまだ腹の底にはその価値観を保ち続けている。正面切って言わないだけだ。なぜならば「魚心あれば水心」「清濁併せのむ」を共通の価値観として是としなければ出世できないばかりか存在しづしずらくなるからだ。
いやそれ以上に物欲の前に人は脆い。特に家族によい目を見させたい、私自身も30年前にはそうした現場に立ち会った人間としてそれは認めざるを得ないだろう。人間は性善でもあり性悪でもある。こうした対策を考える場合、性悪説に立ったうえでの議論が必要だ。
総務省、NTT、東北新社は自ら報告書を作成し、それなりに効果は出るのだろうか。似たような事柄を1989年から見聞きしてきた身としては「歴史は繰り返す」との言葉が浮かぶ。
官僚と規制される企業との癒着の最大の要因は天下りであることは政治家を含めておそらく気が付いているだろう。でもその根は太く長く地中の奥深くまで張り巡らされ、容易なことでは対処しようがない。見えている根っこだけを切っても離れた地面でしぶとく根が噴き出し巨木になる。
憲法22条に規定する職業選択の自由についての侵害問題を惹起するかもしれない。
官僚は同期のNTT幹部との生涯年収に敏感であろうことは容易に想像できる。心は公僕であっても家人からの心理的期待もあるだろう。嫉妬が大いに働いているのではと。嫉妬は厄介もので、自ら気がついていなくとも正義のふりなど理屈をつけて噴出する。
例えば谷脇康彦(当時)総合通信基盤局長は1960年9月11日生まれだから当時60歳前後か。1500万円前後と推測される。一方NTTの取締役の平均が4000万円前後と推測される。
倍以上の年収所得者に対して潜在的に嫉妬感情が芽生えても決しておかしくない。高潔な公僕の志で自らの気持ちを押さえつけていてもそう簡単ではないと推測する。どこかで「元をとらないとやってられない」という気持ちが働いてもおかしくない。かくして明治以来の天下り制度は正当化されるのではないか。
大胆だが高級官僚の給与待遇をもっとアップすることが必要ではなかろうか。米国の高級官僚の給与水準が参考になるかもしれない。
天下り先企業は莫大な費用を受け入れに費やしている。例えば1000人いるとして一人年間2000万円と仮定すると年間200億円、15年間で3000億円となる。
高級官僚の給与待遇はこの原資があればなんとかなるのではないか。国全体の収支は整うレベルではないか。
官民のなれ合い露呈 NTT、澤田社長ら16人処分
総務省接待問題 ネット・IT
2021年6月7日 23:23 (2021年6月8日 5:11更新)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC074BJ0X00C21A6000000/
NTTは7日、総務省幹部への接待問題について同社の特別調査委員会報告書を発表した。NTTは澤田純社長ら16人を処分したがは会食による政策のゆがみは「確認されなかった」とした。
「倫理法や大臣規範に関する知識や感度が不足し、具体的な社内規程が存在しなかった」とした。
NTT法第19条はみなし公務員となるNTT職員の収賄について、懲役の厳しい罰則を明記する。一方で贈賄には特別な罰則がない。
総務省は放送・通信行政の課長級職員ら約170人を対象にした調査の結果、延べ78件の事業者との会食が国家公務員倫理規程に抵触すると認定した。
NTTとの会食29件のうち5件は総務省の政務三役が出席した。NTTの鵜浦博夫相談役らが総務省の谷脇康彦総合通信基盤局長(当時)と会食し、1人当たり6万480円の費用をすべてNTTが負担したケースもある。