まさおレポート

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NTT法の行方と危惧を過去の通信事業史から考えてみる その2

2023-09-27 | 通信事業 NTT法廃止と課題

 

 

NTT法廃止に付随する問題点を以下に考えてみる。


当時の郵政省は「NTTは国民の共有財産として形成されてきた電気通信ネットワ-クを電電公社から承継して非常に公共性の高い事業を営む特殊会社としての性格を有する。 自主性といってもその範囲は決して無限定というものではない。法律の規定によっておのずからなる内在的な制約がある。例えばNTTの重要な財産の譲渡に当たっては郵政大臣の認可にかかる 」 と回答している。

国民の共有財産として形成されてきた電気通信ネットワ-クを電電公社から承継して非常に公共性の高い事業を営む特殊会社としての性格を有する。これをNTT法廃止に持っていくためには例えば①道路公団のように地域インフラ分離するか、あるいは②中曽根案のように工事会社だけを複数設立し競争状態に起き別会社にする案が考えられる。

①は効率の面で問題がありそうだ。②は競争も生まれる。

光の道構想の孫正義提案は町田徹氏から手厳しい批判を浴びた。3兆円を超える資産を1兆7000万円特別損失として処理することや早々に債務超過に陥る会社構想に疑問を投げかけられた。そうなれば、結果としてソフトバンクの儲けのために公的資金を投入したとの批判を免れまいとの指摘だ。

光の道提案の理論武装がお粗末であったために町田氏の攻撃でぼこぼこにされた。

NTT法規制緩和では必ずこの議論が沸き起こる。ライバル各社は今からぜひ理論武装の準備を怠らないで欲しい。


なぜ過去郵政はここまで分割にこだわったのだろうか、分割による天下り先の確保が見える。競争政策の推進が大義名分だったがしかし後の東西電話料金で醍醐委員が別料金を唱えたときに強固に反対し醍醐委員を外してしまったのが郵政であることを考えるとき、本気で競争政策の推進と分割が結び付くとは考えていなかった。

総務省の省益あって国益なしの悪癖をどう防ぐか。この辺りの監視や制度的工夫が今後の検討には必要だ。


自民党はなぜ分割に慎重だったのか。NTTや経団連からの働きかけもあっただろうが日本の半導体の凋落が自民党に慎重論を取らせたと考えるのは穿ち過ぎだろうか。

1980年代半ば、日本の半導体特にDRAMは世界を席巻し技術力、売上高でアメリカを抜いた。それに対してアメリカは通商法301条に基づく提訴や反ダンピング訴訟を起こした。

「日本半導体のアメリカ進出は、米国のハイテク産業あるいは防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題がある」との批判を繰り広げた。1986年7月に「日米半導体協定」(第一次協定)が結ばれた。1987年4月レーガン大統領は「日本の第三国向け輸出のダンピング」および「日本市場での米国製半導体のシェアが拡大していない」ことを理由として日本のパソコンやカラーテレビなどのハイテク製品に高関税(100%)をかけて圧力を強めた。

1991年8月に第二次「日米半導体協定」が日本市場での米国半導体のシェアを20%まで引き上げることを要求した。まさにNTT分割議論はこの日米半導体摩擦の真っ只中に行われたことになる。この日本の半導体の総本山にNTTがあると見た米国がNTT分割を演出していたと推測する。

自民党はこのあたりの事情を察知していて分割に慎重論をとったのではないか。

NTT法廃止によってIOWNの国際競争力を高める動機が強くあり、それは大賛成で最後まで純であって欲しい。この機に乗じた不純な仕掛けが入り込まないように留意すべきだ。


かつて齋藤情報通信審議会委員は国会で意見陳述し、審議会では「独禁法の改正という大テ-マにまで踏み込んでの議論は避けた」との審議会討議事情が語られている。

独禁法と公正取引委員会がIOWNの国際競争力、情報非開示を妨げないように制度変更しなければならない。ライバルからIOWN同様の最先端技術が出てきた時も同様の手立てが必要だ。


郵政省としても競争促進政策の推進という観点からNTT再編成の実績を誇りたい。しかしNTT再編成があまりに行き過ぎて完全民営化され、規制が及ばなくなると天下り先確保の各省庁で天下り先確保の期待は部外者には想像できないほど強い。

天下りポスト優先がどさくさに紛れて水面下で図られないようにすべきだろう。今後のNTT法廃止で留意しなければならない。


 

国防の観点からは表立って議論されないが恐らくNTT法廃止に付随する重要なポイントになる。いつものことながら表立って議論されないこの国防的観点が行く末が決定するので十分含意しながら阿吽の呼吸で論を進めるべきだ。


NTT先端技術総合研究所のIOWNは日本の国運をも左右するほどのものになりそうだ。NTT法廃止でNTT先端技術総合研究所の力がさらにアップすることが望ましい。NTT法があったからIOWNが生まれたのか、反対なのか、検証が必要だ。


八丈島でのサービス開始後、しばらく経った2004年6月、総務省でデジタルデバイド解消の研究会「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」が斎藤忠夫東大名誉教授の座長で始まり、わたしもソフトバンクを代表して出席することになった。

この研究会はブロードバンド化の遅れた地域つまりデジタルデバイド地域の改善を目指したもので、この研究会ではなぜデジタルデバイドが解消されないのか、つまり阻害要因についてもかなり討議がなされた。

NTT法が廃止されてもインフラが解放されていればデジタルデバイドの解消はできる。

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