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まさおレポート

今日のノスタルジックフォト ゴンドラ10選

日本での人力車、バリでの馬車、タイのトクトク、モロッコのロバとラクダなどいろいろな乗り物に乗った。中でも最も印象深いのは2006年6月に訪れたヴェネツィアのゴンドラだろうか。

ゴンドラと言えばゴンドラの唄が懐かしく思い出される。どこでこの名歌がヴェネツィアのゴンドラと結びつくのだろうかなどという疑問とともに選んでみた。

いかにもイタリアらしい白と黒で決めたゴンドラ漕ぎゴンドリエーレ。

ゴンドラ (gondola)は、ヴェネツィアの伝統的手漕ぎボートでカナル・グランデ(大水路)の渡し船としての役割を果たしている。

そして乗り手。船体が非対称で左舷の方が右舷より25cm程度長い。ゴンドリエーレとの体重バランスを考えたものだ。

頭の形に親近感を覚える。舳先に向かって立つゴンドリエーレが、片方だけのオールで押す力によって推進する。

夕闇が迫るサンマルコ寺院風景。船の前面にある鉄製の装飾は「フェッロ・ディ・プルーア」(ferro di prua) 「舳先の鉄」という意味で装飾はもちろん船尾近くに立つゴンドリエーレとバランスを取るおもりの役目も果たす。

ヴェネツィア共和国時代に黒の塗装を義務づけられ、ヴェネツィア共和国がなくなり法律が無効になってもゴンドラは黒に塗装されている。

われは始て「ゴンドラ」といふ小舟を見き。皆黒塗にして、その形狹く長く、波を截きりて走ること弦つるを離れし箭やに似たり。逼せまりて視れば、中央なる船房にも黒き布を覆おほへり。水の上なる柩とやいふべき。即興詩人 森鴎外訳

こんどは赤と白のストライプで決めた漕ぎ手のカップル。漕いでいるのは女性だ。ゴンドリエーレは男性名詞なので、女性はゴンドリエーラ。

左右を見るのに忙しい。

 

漕ぎ手の親父は周りの風景の説明を試みるがよく聞き取れない。

ゴンドラを止めるはしけ

一周してはしけに降りる。

さて冒頭の疑問を解明せんとネットをさまよってみると即興詩人 ハンス・クリスチアン・アンデルセン 森鴎外訳に行き着いた。

即興詩人
森鴎外訳を青空文庫で読むと(いや探すと)次の文章が見つかった。

傍に一少年の蹲れるありて、ヱネチアの俚謠を歌ふ。其歌は人生の短きと戀愛の幸あるとを言へり。こゝに大概を意譯せんか。其辭にいはく。朱の唇に觸れよ、誰か汝の明日猶在るを知らん。戀せよ、汝の心の猶少く、汝の血の猶熱き間に。白髮は死の花にして、その咲くや心の火は消え、血は氷とならんとす。來れ、彼輕舸の中に。二人はその蓋の下に隱れて、窓を塞ぎ戸を閉ぢ、人の來り覗ふことを許さゞらん。少女よ、人は二人の戀の幸を覗はざるべし。二人は波の上に漂ひ、波は相推し相就き、二人も亦相推し相就くこと其波の如くならん。戀せよ、汝の心の猶少く、汝の血の猶熱き間に。汝の幸を知るものは、唯だ不言の夜あるのみ、唯だ起伏の波あるのみ。老は至らんとす、氷と雪ともて汝の心汝の血を殺さん爲めに。少年は一節を唱ふごとに、其友の群を顧みて、互に相頷けり。

 なるほどゴンドラの唄の原詩であることがわかる。

命短し
恋せよ少女
赤き唇
褪せぬ間に
熱き血潮の
冷えぬ間に
明日という日の
ないものを

命短し
恋せよ少女
黒髪の色
褪せぬ間に
心の炎
消えぬ間に
今日は再び
来ぬものを

でもなんでゴンドラの唄か、これは即興詩人の妄想の章にゴンドラがたくさん出てくるので納得だ。

是れ舟を行やる道なり。われは始て「ゴンドラ」といふ小舟を見き。皆黒塗にして、その形狹く長く、波を截きりて走ること弦つるを離れし箭やに似たり。逼せまりて視れば、中央なる船房にも黒き布を覆おほへり。水の上なる柩とやいふべき。

舟は轉じて他の水路に入りぬ。その幅頗る狹くして石橋あまたかゝれり。こゝには人ありて、或は橋を渡りて家の間に隱れ、或は石壁の門を出入す。されど街と名づくべきものは、水路の外有ることなし。

日は「マルクス」寺の星根の鍍金めつきせる尖さきと寺門の上なる大いなる銅馬どうめとを照して、チユペルス、カンヂア、モレア等の舟の赤檣せきしやうの上なる徽章ある旗は垂れて動かず。數千の鴿は廣こうぢを飛びかひて、甃石の上にあされり。

渠水を望めば、燈影長く垂れて、橋を負へる石弓せりもちの下に、「ゴンドラ」の舟の箭やよりも疾はやく駛はしるを見る。忽ち歌聲の耳に入るあり。

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