顔見知りと雑談になった。話の流れで「いまどきバリで怖いもの」はなんだろうと言う話になり次のようなものが話題に上がった。
1 狂犬病 これは文句なくトップになった。数年前からの累積で160人以上の死者を出しながらいまだに収束の気配を見せていないようだ。これは表向きの数字で、このような場合には背景にもっと何倍もの多くの犠牲者がいると考えるのが常識だろう。いまだに放し飼いの手入れの悪い犬がうろうろしている。犬好きの私としては、早くなでなでできる日を待っているのだが、一向に終息宣言は出そうにない。
バリ当局の姿勢にも問題があるかもしれない。「観光客が減るから対策をとる」というのが理由に出すぎている気がしている。話が飛ぶが一昨年の日本人女性が殺害された時も、容疑者への判決理由に、真っ先に「観光客への影響」が述べられていた。それも理由の一つだが、真っ先に挙げる理由としては違うだろうと思う。
野良犬と飼い犬が判然としないのも対策を打ちにくい理由になっているのかもしれない。犬は神の使いのような宗教的な理由もあるだろう。新たな説としてはバリ人の犬肉嗜好が挙げられた。バリ人は犬の肉を好んで食う。そのために半野良犬を放ってあるのだという。これは10年ほど前にある漁村で実際に見聞したので事実だろうと思う。その漁村の漁師の家では庭に犬と豚に鶏が飼われていた。その庭で私が釣った魚を炭火で焼いてもらって食べていたある日、漁師はこともなげに「今晩この犬を食うか」と庭で遊んでいる犬を指して言い放った。驚いて手を振り断った記憶がある。
2.バイクの運転 バリの道路ではバイクが車の間を縫うように走る。車間距離もへちまもない。まさにすれ違うように走る。ときにこのバイクの集団に囲まれて身動き取れなくなることもあるらしい。観光客や滞在客が相手やバイクを傷つけると大変な賠償金を覚悟しなければいけないという。交通事故は一々新聞報道されないがタクシーで移動中でもときおり追突事故現場に遭遇することがある。日本に比べて多いのか少ないのか、断然多いだろうというのが感想だが。
3.デング熱 そんなに怖いものではないという意見もでたが、やはりバリの医療事情と小さな子供を持つ身としては怖い。それに人々に衛生観念が希薄で、バリ当局が蚊の発生源になる水たまりの撲滅を唱えても、一向平気でピンとこないようだ。蚊、水たまり、デング熱という因果関係が理解されていない気がする。デングのような病気も一種の神の怒りで理解されてしまうのかもしれない。現に滞在ビラでもすでに知っているだけで4人もデングに罹っているが、ボウフラの養殖場の感がある水鉢が至る所にあるが、スタッフも誰も気にもしていないようだ。スタッフにいっても埒があかないので昨日はオーナーに直言した。さてどうなることか。
4.水 まだまだ水道が普及していないので臭いや細菌、重金属などが心配だ。かつてののどかなバリときれいな地下水は、開発されたリゾート地では望むべくもない。下水は一般的ではないので、トイレは地下に浸透するままにしているのが最も多い。次に浸透膜とバクテリアで一旦分解する方法もホテルでは義務化されているが、従っていないところも多い。化学工場のような重金属を垂れ流すところはないのが救いだが、汚水による汚染が真剣に対処されている気配はない。なにせ保健所のような検査機関と水質保障マークのような安心させてくれる根拠がない。
5.頭上 頭の上も要注意で、昨日のように風の強い日は頭上からかなり大きな枝が落ちてくる。今のところ、比較的軽そうなものが多いが、時に当たれば相当な重傷になると思われる枝も落ちてくる。ヤシの実も直撃を食らうと命取りになる。藁ぶき屋根に載せてある瓦も恐ろしい。劣化していても誰もチェックしていないので、いつ何時落ちてくるかわからない。藁ぶき屋根はバウンドするのでかなり遠くまで飛ぶ。現に大人が柱にもたれかかっただけで瓦が数枚ものすごい音を立てて落ちた現場に遭遇した。以来、屋根の下はできるだけ注意して通る。日本では人災だがバリでは天災扱いになる。