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まさおレポート

「透明性」の高いレイアウトは逆効果になる

2005年に汐留のソフトバンクテレコムのオフィスがオープンになったことがある。コンサルタント出身の社長が買収前に提案しており買収後もしばらく社長をしていたがその方の指示でオープンオフィスになった。自分のデスクがなく出社とともにロッカーから資料とパソコンを取り出し空いている席に置く。その後退職したので現状は知らない。

私自身オープンオフィスを好まなかった。社員が動物実験をされているような不快感があったからだ。そして本質的な経営で勝負しないでこうした見せかけで改革を推進した気になるコンサルタント体質のやり方も気に入らなかった。NTTデータでもマッキンゼーがコンサルタントに入ったが上辺の指摘をするだけで本質的なことは提案できず何も変わらなかった。日本高速通信でもトヨタ改善コンサルタントが入ったが同様だった。ソフトバンクでもコンサルが入ったが調査対応の時間ばかりとられて役に立つ提案はなかった。提案発表時には孫正義氏が「何を提案したいんだ」と苛立っていたことを記憶している。だから経験的にコンサルタントは役にたたないと考えている。たとえは適切ではないかもしれないが前線兵士に外部コンサルを呼んで改善を指南するようなものだと考えている。だれもそんな眠たい指導は受けたくないだろう。

少し前になるが次のような研究が目についたので参考にするためにメモしておく。


日本では一般的なオープンなつくりのオフィス。実は生産性やチームワークの観点からはあまりお勧めではないという研究結果が明らかになった。実際に、仕切りのあるオフィスをもつ企業2社でオープンな設計に変える実験を行ったところ、直接のコミュニケーションが激減してメールの量が増えたという。

英王立協会が発行する学術論文誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に発表された研究で、物理的な障壁をなくすとコミュニケーションや集合知が生まれにくくなることが示されたという。「フォーチュン500」に名を連ねる国際企業2社で、オフィスを従来型のレイアウトからオープンプランに変更したところ、従業員同士の直接のやりとりは時間換算で70パーセント減った一方で、電子メールの量は22〜56パーセント増加した。また生産性も落ち込んでいる。

ハーヴァード大学の研究者イーサン・バーンスタインとスティーヴン・ターバンは、次のように指摘する。

「オープン型オフィスの“死”を宣言するさまざまなニュース記事でも言われているように、オフィスの壁をなくしても従業員たちは広大なスペースに散らばってしまうだけです。そしてヘッドフォンをするなど自分の殻に閉じこもり、できるだけ忙しそうなフリをします。これは見られているからです」

「監視されている」ような感覚について不満の声が上がっている。さらに、仕切りのないレイアウトでは従業員の病欠率が高くなるという調査結果もある。

1社目では従業員52名について、レイアウト変更前の15日間と変更後3カ月経ってからの15日間の行動を調査した。

被験者はセンサーの埋め込まれたカードを身に着ける。カードには誰かと向き合ったときに反応する赤外線センサーと、会話を検知するためのマイクが組み込まれている。被験者同士のデジタルでのコミュニケーションも記録された。

最初の15日間に行われた被験者同士のやりとりは、対面が9万6,778回、電子メールが8万4,026回、インスタントメッセージ(IM)が2万5,691回だった。対面でのやりとりは時間換算では平均すると1人当たり1日5.8時間だったが、レイアウトを変更すると1.7時間に落ち込んだ。これに対し、電子メールとIMの量はそれぞれ56パーセント、67パーセント増えている。

企業側から提出されたデータによると、質的な生産性の低下も見られたという。ただ、こちらについては計測基準や具体的にどれだけ低下したのかといったことは明らかにされていない。 

2社目でも同様の観察が行われたが、被験者の数は100人になり、期間も8週間に延長された。レイアウト変更前後のインターヴァルは2カ月になっている。2回目の実験では、誰と誰とがやりとりをしたのかに加え、性別や業務内容、机の場所といった各被験者についてのより詳しい情報も記録している。

結果は全体的に1回目の実験と同じだった。対面でのやりとりは67〜71パーセント減少し(机の場所などのデータをどう組み込むかで結果が異なる)、電子メールの量は22〜50パーセント増加した。なお、2回目の実験ではIMの量は記録しなかった。

「透明性」の高いレイアウトは逆効果になる
論文は、オープンプランのオフィスは本来の目的から見れば逆効果になると結論づけている。仕事をするうえで適切な環境をつくるには、「境界」が必要になるというのだ。

またプライヴァシーも重要な要素だ。論文では以下のように述べられている。

全体の観察が容易であり「透明性」の高いオフィスレイアウトでは、従業員同士の対面でのやりとりは減少する傾向にある。これは、プライヴァシーの確保という人間の基本的な欲求に加え、個人的な空間を設けることが生産性の向上に寄与するという前述のエヴィデンスとも一致する。従業員は他者とのやりとりにおいて、それまでとは違った手段を用いるなど、プライヴァシーを守るために独自の方法を編み出すようになる。

論文は一方で、誰もが望んでいるにぎやかで創造性と集団知を生み出すような場所をつくり出す方法は、まだ発見されていないという事実も指摘する。少なくとも、壁や仕切りを取り除くだけではうまくいかないことは確かだろう。

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