まさおレポート

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開高健「眼ある花々」「不思議な花」と旅の写真 バラ

2017-02-02 | バリ島 世界各地のバラ・蘭・花

開高健の「眼ある花々」は花や植物の表現に面白いものが多い。読了記念に書き抜いておくことにする。

バラ・・・夜ふけにバラの花を眺めているうちにクメール帝国の夕陽、石と木の無言の大野戦を思いだすのはどうしてだろうか。・・・一ミリの狂いもなく花弁がかさなりあい、くるまれあい、包みあい、また開きあっている、整序の象徴のようなこの花のどこにもあの史前期的な、または史後的な、氾濫と蕩尽と混沌を連想させるものはないはずなのに、アンコールの黄昏がまざまざとよみがえってくる。

 

ヤシ・・・「その胡弓はヤシの実で作ったもので、はなはだ原始的だけれど、立派に鳴いてくれる。」

ウォーター・ヒヤシンス・・・「このアジアの黄色い大河を、しばしばウォーター・ヒヤシンスのかたまりがゆっくりと流れていく。…そのからまりあった群生のおおきなのになると、ちょっとした島ぐらいもあるのだが、それが紫がかった小さな花を咲かせながら海へ流れていくのが見られる。」


 

ソテツ・・・「うるんだ亜熱帯の黄昏空を巨大な夕陽がソテツやヤシの林のかなたに沈んでいき、空には真紅、紫、金、紺青、ありとあらゆる光彩が、いちめんに血を流したようななかで輝き、巨大な青銅盤を一撃したあとのこだまのようなものがあたりにたゆたっている。」

ゼラニウム・・・「対岸のアパルトマンは垢を洗いおとされて史前期の巨獣の骨をつみかさねたようだが、どうしてかそこに一つだけ窓があいている。それが頭蓋骨の眼窩のように暗い。そこに真紅の血が一滴輝いている。声もなく輝いている。茸のように輝いている。ゼラニウムが咲いているのだ。」

茸・・・「すべての茸には一匹の魔が棲みついている。」

スイセン・・・「咲くというよりは閃くようであったスイセンを思い出すのである。それを眼にした瞬間に私の荒涼とした内部に何かかすかな音がしたようだったことも」

「灰白色の、ぶよぶよしているように見えるけれど頑強に固いその気根が東西南北、天地、地上地下、いっさいがっさいおかまいなしにのたうちまわり、這いまわり、からみあって、ジャングルから行進してきている」開高健「不思議な花」より。

「それら無数の多頭の蛇は石の壁を破壊し、男根の像を倒し、塔をつらぬき、望楼を地へ落とし、テラスをひび割り、巨大な人面像をらいさながらに犯し」開高健「不思議な花」より。

「全身をらいに犯された人間の体内を無影灯の明るさで眺めたらこのような光景が見られるだろうか」開高健「不思議な花」より。

2011/10 初稿

2017/2/1 追記


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