デジタルデバイドゼロを一方的にNTTに課すことはユニバーサルサービスを存続させると言うことでありブーメランが戻ってきて自らを縛ることもあるという通信事業史の交渉経験を紹介したい。
過去の記事より
<それにしても高い工事単金>
ソフトバンク側が5分程度で出来ると考えていた作業は実際はそれほど簡単でないことも理解できたが、実はMDF配線板の位置を示すコードが事前に自動付与されていると効率的なことなど、作業の改善もなされるべきであり、又、7000円という工事費用はいくらなんでも高すぎるだろうとの印象も得た。当然のことながらこの7000円の内、工事会社に支払われるのは30ないし40%程度だろうと推測している。
この工事費用の明細をNTTと議論したことがある。コストの高いNTT東西の管理者全員のコストを売り上げ比例やスタッフ数比例で費用配賦すると時間当たり7000円程度と、一般民間会社より(非常に)高いものになる。この点を指摘しても、事実だから変えられないという返事が返ってくる。このコスト構造で平行線をたどることになる。MDF工事は高給をとる幹部の判断作業を必要とする割合はどう考えても低いのだが費用配賦のマジックで結果的に高いものになる。この費用配賦のマジックを解決しないとどうにもならない。
上野社長(当時)と面談した。上野社長は冒頭、協議再開に際してMDF自前工事は局所的ではなく全国ベースが前提だと切り出した。局所的な実施ではユニバーサルサービスとの関係で整合性がとれないという理由を説明した。つまり採算のとれない地方を都市部で補っているので、都市部等ばかりを自前工事化してもらっても困るという。
上野社長は「ユニバーサルサービスの責務がある当社は、費用のかかる離島も、費用効率の良い都市部も均一工事料金でサービスすることをNTT法で余儀なくさせられている。その前提の上に立った工事料金なので、経営効率の良いところだけつまり都市部だけをソフトバンクがサービスするというのは受け入れられない」と説明した。
これは先制パンチとしてはかなり強烈だった。
相互接続クロニクル NTT 新電電 孫正義 1989~2005
宮本 正男
宮本正男
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