まさおレポート

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ケチャダンスは音声のみによるトランス効果

2007-07-16 | バリ島 舞踏・レゴン・ケチャ・ガムラン

バリ島は年に何回もお祭りがあり、そのたびに村を離れて観光地のクタなどに働きに出ている多くの人々が帰郷する。経営者も従業員の申し出を拒むことはできない。その優先度は大変なもので彼らの人生の最も大切な一つだろう。仕事がたとえ忙しかろうとお祭りには帰る。そのために備える供物代や衣装交通費など相当なもの入りだと聞いている。

バリ滞在中は地元の友人夫妻の誘いでお祭りには何回か参加している。お祭りには村人全員がそろうようだ。祭に参加しないことはあってはならないことで、それは共同体からの離脱を意味する。全員で祭具を作り飾り豚を屠り捌き料理を作る。これらを村の大きな庭で和気あいあいと進めていく。男たちはガムランの演奏を奏でる。子供の時から見聞きしすべての男達が演奏できるようだ。

大きな祭りにはプロの舞踏集団が招かれる。プロと言っても農業の他に他の村に出向いて踊る人々のことで、子供も多く含まれる。このときに演じられるのはレゴンダンスと呼ばれる種類のもので、タイや中国の踊りをどこか連想させる。可愛い男の子のダンサーが登場するとおばさんたちの掛け声も熱を帯びてくる。

バリにはもう一つの舞踏がある。ケチャダンスあるいは単にケチャ、ケチャックと呼ばれる。これは男だけの舞踏で大勢の男たちが胡坐をかいてすわり、チャ、チャ、チャという声を連続して発する。その声の中を男のダンサーが踊る。踊り手はチャ、チャ、チャの声と舞踏で徐々に投資状態に入っていく。

陶酔が深くなってきたころ、ヤシガラに火をつけて床一面を火にする。ヤシガラは燃えてる。ふれればやけどは間違いのないところだ。その燃え盛るヤシガラのなかに男は飛び込み、裸足の足で踏みつけていく。踏みつぶして火の手が収まるころに男は失神する。僧がこの男を抱きかかえていく。これでダンスは終わりを迎える。

このダンスで驚くのは二つある。陶酔に入り熱さを感じなくなっているばかりか、やけどをしていないことだ。目の前で火の中に入り、直接燃えるヤシガラに触れているのに誠に不思議な現象だ。もうひとつは言葉ともいえない音の発声だけで深い陶酔に入り、火の恐怖と痛みを克服している点だ。酒も麻薬も使っていない単にリズミカルな連続した発声だけでトランス状態になっていけるものなのだ。

酒も麻薬も外部からの薬物効果だが、このケチャは音声のみによるトランス効果だ。体をむしばむことのない方法の一つだろう。もうひとつは北アフリカやエジプトで見る旋回舞踏だろう。これは音声ではなく、ひたすらクルクルと旋回することによりトランス状態に入る。

考えてみればこれらの方法は信仰にも使われている。念仏やお題目の繰り返しはこのケチャと通じるものがある。信長の時代に流行った踊り念仏は旋回舞踏と同じに見えてくる。

バロンダンスは平和で穏やかで神に感謝を捧げる踊り、ケチャダンスは生死をかけた戦闘の前の勇気を鼓舞するための踊りそんな理解を自分なりにしてみた。そしてケチャは音声の繰り返しだけでも麻酔に匹敵する効果があることを予測させる。

バリ芸術に及ぼしたシュピースの足跡 11426文字
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