早朝に起きて窓を開けるたびに微かな薫香がただよってくる。花の薫だと思うのだがどの花から来るものかはわからない。朝日が昇る頃にはこの匂いは消えてしまう。夜の闇の間のみ放つ匂いなのだろうか、あるいは人が活動を始めるころになるとこの微妙な薫を感じなくなるのだろうか。ヤコウボクあるいはナイトジャスミンと呼ぶ花のせいだとバリの人は云うが確かな事はわからない。
市場でセダップ・マラム Sedap malamと呼ばれる白い花をときどき買ってテーブルに挿すが、これはインドネシア語で夜に匂う花との風雅な意味で、この花も薫は夜に匂うものらしい。
ジュプンの花からとった天然のエッセンスで線香を作る。ジュプンの花を集めて乾燥させ業者にもっていくと1キロ50円ほどで買い取ってくれるらしい。バリのどこにでも見られる風景だがこれが上等の線香の原料になる。バリで朝晩に漂う匂いのよさに感動することがあるが、実はジュプンから採った天然の薫りだったのだ。