
機が降下を始め何気なくお茶のペットボトルを見ると随分ひしゃげている。南米で確か4000メートルから降りたときも同じ光景を見た。つまりそれだけの気圧落差があるってことか。機は与圧で調整をしているはずだけど。ひょっとしてこの機特有の問題かなどと思う。
気圧が低いと非現実的な妄想が湧きやすい。チベットでもそうだという。
下界に雲が広がっているのを眺めているあいだにこんな幻想を見た。
3人が話しあっている。たったいま昇天したばかりのようだ。
一人は超大金持ちの実業家。
昇天してみると俺の一生は一体何だったのだと思う。
志をたてて必死に頑張ってきたがなんだか違うんだよね。
一人は長い懲役の末に獄中で昇天した男。
お前も俺もよく似てるな。
獄中でのストイックな生活、家族との時間が皆無、自由もない。
違いは自分で求めたか強制されたかだね。
本質はあまり変わらん。
一人はしょぼいウェイター風の男。
黒い瞳って映画みたか。あれはおれがモデルになってるんだ。
愛する人の黒い瞳と肌の感触、ここでも俺の心を温めてくれる。