レゴンは、繊細な指の動き、複雑な足技、表現豊かなジェスチャーを特徴とする。
リジャンはバリ島の伝統的な踊りで神々への奉納だ。リジャンは純粋な女性が行う緩やかで個々の動きが一つ一つ丁寧に行われ、その結果、動き全体が一つの連続した流れとなるよう繰り返される踊りで、その動きは細かく制御されており独特のリズムとパターンがある。この踊りは極度に集中し、精神性を必要とし、その繊細さと繰り返しの中から美しさが生まれる。
それぞれの動作は、神々への敬意と奉仕を表現するためのものであり、全体としては独特の美しさと平和を作り出し、それはまた、神々とのつながりと、自然と人間との共存を強調している。
特にバリ島東部のカランガサム地区の村々では、この儀式的な踊りが重要な役割を果たす。踊り手たちは、葉や花で作られた美しい冠を頭につけ、これらの冠は自然とのつながりを象徴し、またポリネシアの一部の文化と共通の特徴を持っている。
この踊りのダンサーは、自分たちが神々の代理人となるという感覚を持つことが求められる。彼女たちは祈りや瞑想を通じて心を清め、精神的な調和を達成する。彼女たちの動きは、神々への深い敬意と尊敬を表わす。
レゴンダンスではチャンケットという姿勢を表す言葉がある。アグムと呼ばれる基本姿勢を構成する姿勢で胸を突き出し、尻を突き出す姿勢だ。欧米の舞踏文化であるバレーダンスやモダンダンスでは絶対にとらない姿勢だ。
プリアタン村では昔からとられていたポーズだと言われるがバリ全般に広がったのはシュピースのパリ植民地万博プロデュースからとも言われるが確たる証拠はない。Youtubeで古いフィルムを見てもさりげなくチャンケットの姿勢が見られる。
レゴン・ラッサムは、バリ島の伝統的な舞踊の一つで、レゴンというジャンルの中でも特に有名で親しまれている。その名前は、その出典となるジャワ島の古典文学「マラット」の登場人物、ラッサムから取られている。この舞踊は、美しい衣装、繊細な動き、そして力強い音楽が特徴的だ。
レゴン・ラッサムの舞踊は、チョンドンと呼ばれる侍女役による華やかな踊りから始まる。チョンドンの役は、視覚的に華やかで、舞踊の中でも特に華やかな部分を担当する。彼女たちは美しい衣装を着て、繊細な動きと高度な技術で観客を引きつける。
その後、舞踊は2人のダンサーによる舞踏に移りダンサーたちは、音楽とともに劇的な表情と動きを使って物語を語る。彼らの動きは、感情と情熱を伝えるために細かく繊細で、ときには力強いものとなる。
レゴン・ラッサムの舞踊は、見る者に深い感銘を与えるだけでなく、バリの伝統的な文化と芸術の深さを表現する。その精神性、芸術性、そして娯楽性は、古代から現代までバリ島の人々に愛され、また観光客にも深く感動を与えてきた。
舞踊はガムランという伝統的な音楽演奏とともに行われガムランのリズムと旋律は、舞踊の各部分とダンサーの動きと密接に結びついている。この音楽と舞踊の組み合わせは、物語の情感を高め、観客に深い感動を与える。
レゴン・スマランダナのドラマはヒンドゥ教の神話に基づいている。この物語は愛の神スマラが、シバ神の深い瞑想を打ち破る任務を引き受け、最終的にその命を失うという悲劇的な結末を描いている。
物語は、ニラルドゥラカという存在がシバ神から特別な力を与えられて天界を混乱させるところから始まる。天界で神々がこの困難を解決するためには山で瞑想に耽るシバ神の助けが必要となる。しかしシバ神の瞑想を妨げるのは極めて危険なこととされていて、この危険な役割は愛の神スマラに任せられた。
愛の神スマラの妻ラティは彼の命が危険にさらされることを悲しみ泣き崩れるが、スマラは全てを受け入れ山へと向かう。山の中で瞑想しているシバ神を見つけたスマラはシバ神の瞑想を覚ますために特別な矢を放つ。しかしこれがシバ神の怒りを招きシバ神は第3の目から火を放ちスマラを焼き尽くす。
怒りが静まった後にシバ神は事態を理解しスマラを悼む。そしてスマラの魂が永遠に生き続けるようにとその灰を地上に撒き散らす。シバ神とパールヴァティとの間に息子カーマデーヴァが生まれ怪物ニラルドゥラカを退治する。
この物語は神々の間の力のバランスを描き出している。それはまた人間の行動が自然と宇宙の秩序にどのように影響を与えるかという深いメッセージを読み取ることも可能だ。
この物語に登場する主要なキャラクターは次のとおり。
- シバ神:ヒンドゥ教の三大神の一つで、破壊と再生を司るシバ神は深遠なる知識と瞑想の象徴であり、第三の目から放たれる破壊の炎は彼の全知全能を表している。彼の瞑想は極めて深く、邪魔されると極めて危険な事態が起こる。
- スマラ:愛と欲望の神であり、その矢は目標の全ての感覚を目覚めさせ、愛を感じるようにする。彼の勇敢さと犠牲精神は、天界を救うために自己の命を犠牲にする。
- ラティ:スマラの妻で、愛と欲望の女神で愛する夫が危険にさらされることを悲しむシーンは彼女の愛情と深い絆を示している。
- ニラルドゥラカ:シバ神から特別な力を授かった存在で、その力によって天界を混乱させている。彼の存在はシバ神の破壊の側面を担う。仏教の神々にはないヒンドゥの特徴を表す点に注目すべきだ。
- カーマデーヴァ:物語の後半で登場する、シバ神とパールヴァティの息子であり、愛と欲望の神で彼は父親であるシバ神から受け継いだ力を用いて、ニラルドゥラカを退治する。バリ島の舞踊は宇宙の力の善悪のバランスを象徴的に描くもので、バリヒンドゥ信仰の深い影響を反映する。善と悪、陰と陽、混沌と秩序といった二元性が中心的なテーマとなっている。これらの対立する力がバランスを保つことにより、調和の取れた宇宙が成り立つと考えられている。
タルナ・ジャヤTeruna Jayaは一般的に女性のダンサーによって演じられるが、踊りは男性的な性格を持っている。タルナは若者ジャヤは勝利を意味し成功を勝ち取り 大人の世界に足を踏み入れたという気持ちで 自信たっぷりの若者の感情を女性が男性的なエネルギー、精神、そして行動で表現する。踊り自体は力強くエネルギーに満ちている。ダンサーは彼らの身体や手、顔の動きを通じて若者の情熱、勇気、自信を表現する。これは戦の勝利を達成するための行動を象徴している。
衣装は男性的で、しばしば戦士の装束を思わせるようなもので、この踊りの主題を強調する。
「オレッグ・タムリリンガン」は、バリ島の伝統的な舞踊で、男性と女性のペアによる"蜜蜂の踊り"とも称されています。この踊りは1952年にイ・マリオ・スブリャナダナという著名なバリ舞踊家によって創作され、その美しさと感情的な強度で高く評価されています。
オレッグ・タムリリンガンは蜜蜂が花から花へと飛び回り、花粉を集める様子を表現している。踊りの中で、メスの蜜蜂(女性ダンサー)は繊細で美しく、花から花へと軽やかに舞い回る。一方、オスの蜜蜂(男性ダンサー)は力強く活発で、メス蜂に求愛する様子を表現する。
この踊りは、その華やかさと性的な帯びた動きにより、バリのダンスの中でも特に魅力的な一つとされている。また、踊りは音楽と密接に関連しており、ガムランと呼ばれる伝統的なバリ音楽が演奏される。これらの音楽は踊りの動きと同期し、踊りの情感を深める役割を果たす。
このダンスはまた、恋愛と魅力、誘惑と拒絶、そして最終的には男女間の絆の形成という普遍的なテーマを探求している。そのため、オレッグ・タムリリンガンは単に踊りとしてだけでなく、人間の感情と関係を象徴する作品としても見ることができる。