まさおレポート

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ビタリー・カツェネルソンの記事メモ

2018-03-05 | 通信事業 孫正義

孫正義氏を評した面白い記事を見つけたのでメモしておく。以下ビタリー・カツェネルソンの記事メモです。


2016年9月9日〔原文公開日〕とあり、この記事が現在から見てどう評価されるかが興味深い。

ビタリー・カツェネルソン Vitaliy Katsenelsonインベストメント・マネジメント・アソシエイツ社最高投資責任者

「ある産業が指数関数的な成長局面に入ったばあいは、企業のいま現在の株価がどうかなんて、大した問題じゃない」 

ソフトバンク社は、アーム社を、243億ポンド〔=320億ドル=3.3兆円〕で買収することを近ごろ決定した。ウォール街はこれを酷評している。年間利益の48倍なんて値段で買うのは、とんでもない高値掴みだ。

40年間、はじまりは、70年代のパソコンだ。パソコン市場の成長が加速局面に入ったとき、そこに身を投じてパソコンソフトの流通を手がけ、90年代にインターネットの成長が急速化する転換点に入ったときは、米ヤフー社に出資し、2000年代初めには、電子商取引に目をつけアリババ社へ出資した2000万ドル〔20億円〕は、いまや600億ドル〔6兆円〕という莫大な評価額へと成長した。

その次はワイヤレス市場だった。こんな実話がある。孫正義がスティーブ・ジョブスのところに、iPodにダイヤルパッドをくっつけたものを紙に描いて持ってきた。つまり、スマートフォンを作ってくれというのだ。アップル社がiPhoneの構想を発表することすら、この2年も後になってからのことだ。

孫正義は、スマートフォンの普及の波に乗った商売をするために、日本で最低最悪の無線モバイルキャリアを買収しいまや、ソフトバンク社の現金収入の屋台骨になっている。

2013年、孫正義は、モバイルゲームの成長率が加速すると考えこのときもまた、〈成長率の加速〉を捉えた。スマートフォンの計算処理能力と画像表示力が改善されて、スマートフォンでゲームをする人が増えたからだ。

ソフトバンク社は15.3億ドル〔1530億円〕を投じて、ヘルシンキを拠点とするゲーム制作会社「スーパーセル社」の株式の51%を取得した。2015年には、この保有割合を73.2%にまで引き上げた。そして、この持ち分のすべてを、入手時の評価額の3倍以上の価格で転売することに成功した。

2009年に、アップル社についてのリポートを読んだ200億ドルから1000億ドルにまで成長するであろう、2015年のiPhoneの年間売上は、1550億ドル〔1兆5500億円〕に達している。

2009年の時点だって、各種の数字による評価では、アップル社は安くなかった。

なぜかといえば、この2009年、アップル株は1株29ドルで、利益の22倍という値段がついていたからだ〔1株当たり利益は1.32ドル〕。翌2010年には、アップルの利益は1株あたり2.2ドルまで上昇したんだから。さらに1年後の2011年には、アップルの利益は1株あたり4.01ドルにも達した。ほんとうは1株29ドルなんて大安売りもいいところだったのだ。

アーム社をみて、ぼくはそれを思い出したということだ。アーム社は、プロセッサ〔処理装置〕の設計をして、ライセンスを他社に与えて稼ぐ。従来の半導体会社とは違って、アーム社は製造をしない。製造をしないどころか、製造の外注さえしない。

設計ライセンスを受けるのは、アップル社とか、ブロードコム社〔半導体製品の製造販売〕とか、クアルコム社〔通信技術および半導体の設計開発〕だ。こういう会社が、アーム社のプラットフォーム〔基盤となるシステム〕を利用したうえで自社のプロセッサを作り上げる。アーム社の基本設計を、それぞれのオペレーション・システムへと変化させるわけだ。

アーム社が基本設計をしたプロセッサのために何十億ドルもの研究開発費を投じるから、アーム社をめぐるエコシステム〔業界のしくみ〕はますます価値が高くなりモバイル機器の97%は、アーム社が基本設計したプロセッサによって動いている。アーム社は、ロイヤリティ〔使用料金〕をきわめて安く設定している。プロセッサ1つが売られるごとに、ほんの数ペニー〔1ペニー=約1円〕。

 ソフトバンク社が100億ドル〔1兆円〕の現金を調達したのは最近のことだ。アリババ社の持ち分を少し売ったのと、スーパーセル社の所有権を中国のテンセント社に売却した80億ドル。これが、ソフトバンク社がアーム社を買収するさいの手元資金になった。

孫正義は、〈モノのインターネット=IoT〉が、転換点にさしかかったと考えている。世界には70億人の人々がいる。2015年にアーム社が売ったプロセッサの数は150億個。一人あたり2個のプロセッサだ。2020年までには、1年に750億個のプロセッサを売るようになると同社は見立てている。5倍もの増加だ。孫正義によれば、将来のぼくらは、一人あたり数百個のプロセッサを必要とするようになる。自動車、街灯、電化製品、病院の患者…。すべてがインターネットにつながる。

そういうすべての「モノ」に、プロセッサを埋め込む必要がある。そこにいるのがアーム社だ。プロセッサを設計し、出荷されるすべてのプロセッサについて数ペニーをいただく。

アーム社がいまから5年で従業員数を倍増させることにだって合意している。 

2016年のアーム社は、16億ドル〔1600億円〕の売上と、6億6000万ドル〔660億円〕の利益を上げると予測されている。かりに、2020年には、アーム社のプロセッサの出荷数は、いまの売上にその5倍が加わるとしよう。ただし一個あたりの値段は半分に値下がりする(ロイヤルティも半分になる)。するとアーム社の売上はいまの売上の3倍、48億ドル〔4800億円〕になる。そのとき、孫正義はかねて約束のとおり、研究開発費を倍増させているとする。税引き後の利益がどうなるかというと、28億ドル〔約2800億円〕になっているはずだ。

ソフトバンク社が支払った価格〔3.3兆円〕は、アーム社の年間利益のたった12倍に収まることになる。しかも2020年というのは、爆発的成長のまだ初期段階にすぎないはずだ。もしこのシナリオ通りになるなら、アーム社の獲得によって、孫正義はソフトバンク社の1株当たりの価値を、少なくとも10ドルは高めることになる。 

Tモバイル社のCEO〔最高経営責任者〕が商売の天才っぷりを見せつけて、スプリント社からシェアを奪うというオチまでついた。

孫正義は去年、スプリント社のチーフネットワークオフィサーという役職を買って出た。目標としているのは、対抗各社のたった数分の一の費用によってスプリント社の通信網を改善することだ。かれは最近、こうも言っている。スプリント社が現金という血を垂れ流すのをやめさせて、今年中に現金収支を黒字にしてみせる、と。とはいえ、スプリント社の買収は失敗ではあった。かれ自身が真っ先にそれを認めている。 

アーム社が今後4年間、1年あたり15%しか成長しなかったら? そのときは、年間利益は12億ドル〔1200億円〕までしか伸びないから、19倍で評価したとしてもその企業価値は230億ドル〔2.3兆円〕。ソフトバンク社は80億ドル〔8000億円〕ほど余計な浪費をしたことになる。買収当時のアーム社の株価に上乗せして支払った43%のプレミアムに、ちょうど相当する額だ。

孫正義は、ソフトバンク株の20%を保有している。

ソフトバンクは1100億ドル〔11兆円〕の借金がある。

そのうちの330億ドル〔3.3兆円〕はスプリント社の借金だ。ソフトバンク社がスプリント社の株式の80%を所有しているせいで、この数字がソフトバンク社へと連結されているだけだ。もしスプリント社が破産しても、ソフトバンク社はこの330億ドルについては一切の責任がない。

孫正義の投資成績を上回る人間はほかにいない。20年以上にわたり、複利で年44%だ。 

まず第一に、ソフトバンク社は、現金を前払いするということは、まったくしない。アーム社の四分の一の所有権を現物出資するというかたちで、80億ドル〔8800億円〕をこのファンドへ最初に出資する。

次に、720億ドル〔7兆9200億円〕が外部の投資家たちから持ち寄られて、その62%が負債、38%が普通株という形をとる。

外部投資家たち(サウジ・ウェルス・ファンド〔サウジアラビアの政府系ファンド〕、アップル社、クアルコム社)は、今後12年間はロックイン〔引き出せない投資に〕される。

この負債は、ソフトバンク社に対してはノンリコース〔損失が生じてもソフトバンク社が背負う必要がない〕であり、年7%を配当する優先株というかたちで発行される。それも、現金ではなく、このファンドのエクイティ〔持ち分〕という形での配当だ。

サウジ政府を安心させるために、孫正義は、1億ドル〔110億円〕を超える規模の投資は全てビジョン・ファンドに入れる、と約束した。

この1000億ドル規模のファンドへソフトバンク社が突っ込むのは、合計で 280億ドル〔3兆800億円〕ということになる。これから 12年間で、ソフトバンク社は、おおよそ 60億ドル〔6600億円〕から 120億ドル〔1兆3200億円〕を、このファンドの運営手数料(年に1%)として受け取る。

ソフトバンク社は、年8%を超える部分の利益にかんしては、その 20%を実績報酬として受け取ることになる。

 


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