「夏の落葉」
もうじき紅葉がはじまる。そして落葉し秋が去る。しかし夏の落葉もある。この夏に世を去った人々。紅葉しないまま落葉した人々の無念をおもう。3日前に「未来」の選者・桜井登世子さんからご著書をいただいた。現代短歌文庫の『桜井登世子歌集』、歌集というよりダイジェストか。既刊の4歌集から抄出、エッセイ、歌論など。桜井さんについてはじめて知ることも多い。
20年も前に「未来」の会員になり、きょろきょろ、もたもたしていた私に気さくに話しかけてくださった桜井さん、先生と呼ぶべきなのに。大先輩の作品については小池光先生の評をお借りします。
死を清めるもの 『夏の落葉』評 小池光
『夏の落葉』が出てから二十年以上の歳月が流れている。この歌集は当時創設された第1回ながらみ現代短歌賞を受けた。わたしはそのとき選考委員の一人で、感銘を受けたこの歌集を強く推した。(略) この歌集は亡き夫への挽歌集である。
❤そののちの日をわがひとり如何に生きむ赤々として月は満つるに
❤コバルトの照射範囲が墨引けるうつしみひとつ抱かんとすも
❤秋霖に湿る定期券出しゆくかかる気負ひもいつまでのこと
❤柩の窓ひらきぬ見たまへ冬晴れの蔵王に淡き虹かかりゐる
❤腹わたに沁みる花火の一つまた一つあがりて人は亡きかも
※小池先生の十二首についての解説は割愛しました。
新年会で「お互いに年をとったわね」と桜井さんがおっゃいましたが私だけ年を取ったような気がします。桜井さんは20年前とあまり変わらず、まだ中年みたいだなんて。
朝夕は肌寒くなりました。お互いに風邪をひかないようにしましょう。
桜井登世子さま 9月17日 松井多絵子