▴ 年間未来賞②・岸原さや ▴
ツイッターでおなじみの 岸原さや が2014年度の年間未来賞を受賞した。三人の受賞者の1人である。2006年に短歌を詠み始めて翌年未来短歌会に入会、加藤治郎に師事。1昨年刊行した第一歌集『声、あるいは音のような』はすでに私のブログに書いている。
年間未来賞の ✿ 妙な長さを 20首 の中から4首を取り上げみる。
▴ たいせつな言葉があった風のなか真冬に太い釘を打ち込む
~ 太い釘はどこに打ちこまれたのか詠まれていない。読者に釘を打つ場所を委ねているのか。真冬の風の日、作者が打つ太い釘は彼女の心では、。心を支えるにために。
▴ 自販機にコインが落ちてゆくまでの妙な長さを突っ立っている
~ この20首のタイトルは「妙な長さを」である。作者のこだわる1首であろう。自販機にコインが落ちてゆくのは一瞬ではない。缶などが出てくるまでの時の間は何もできない。
▴ 雨脚がひときわ強い夜の部屋の二等客船みたいなめまい
~ 雨が激しく降る夜、部屋のなかで客船にいるような錯覚とは独特な表現だ。2等客船は揺れかたが複雑て、悪酔いをするのだろうか。
▴ まぶしさを銀の匙から受けとって晩餐という言葉のひかり
~ 銀の匙は上質なおしゃれな食事にふさわしい。ヨーロッパの古城の夕食を思わせて華やかさを纏う。 「晩餐」という言葉は私も「まぶしい」。 10時すぎからこの部屋に光がひろがっている。眩しくない光が。 2月12日 松井多絵子
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文芸情報 本屋大賞 候補10作品決定
♠ 『アイネクライネナハトムジーク』(伊坂幸太郎) ♠ 『怒り』(吉田修一)♠ 『億男』(川村元気) ♠ 『キャプテンサンダーボルト』 (阿部和重・伊坂幸太郎) ♠ 『サラバ』(西加奈子)
♠ 『鹿の王』 (上橋菜穂子) ♠ 『土漠の花』(月村了衛) ♠ 『ハケンアニメ!』(辻村深月)♠ 『本屋さんのダイアナ』 (柚木麻子) ♠ 『満願』米澤穂信