えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

待ち続ける40年

2016-12-25 09:46:11 | 歌う
          待ち続ける40年

 ♥ 寄り添いてながめていたり冬の海、春の来るのを待ち続けながら 松井多絵子
 
 新潟市の中学1年生だった横田めぐみさんが失踪したのは1977年11月15日。バトミントンの部活を終え、友だちと別れた直後だった。「娘のめぐみは家の光だった。明るくにぎやかで、よく歌っていた。突然いなくなって我が家は電気が消えたようになった」と語る早紀江さんは80歳、夫の滋さんは84歳になってしまった。

 転勤先の新潟で13歳の娘が突然いなくなった。手がかりが見つからず「神隠し」と言われた。いつ帰ってもいいようにと玄関に鍵をかけず、夜通し門灯を消さず待った。6年後に転勤のため新潟を去った。転居先を書いた札を玄関に貼って、、。

 北朝鮮による拉致の疑いが浮上したのは97年2月。02年9月には金正日総書記が日本人の拉致を認め、5人が帰国。めぐみさんに娘がいることもわかり、横田夫妻は14年3月にモンゴルで面会したが、北朝鮮側はめぐみさんが「死亡した」との主張を崩していない。
 
 滋さんはここ1,2年は歩くことや言葉を発することが困難になり病院へ通う。夫妻で全国を回って講演し拉致被害者救出を訴えてきたが、毎年新潟で開かれる集会も今年は会場は訪れなかった。「ある日家族がいなくなったまま返してもらえない。人間の尊厳を踏みにじられたままの40年」。待つ時間は長い、とても長く感じる。40年は400年かもしれない、人間の敵は人間なのか。心のなかまで凍えるXmasの新聞記事である。

       ひさかたの光かぼそき枯草の小道を歩く、街へ行こうか

                 12月25日 松井多絵子 
                           

『クリぽっち』 の人々

2016-12-24 09:11:46 | 歌う
          『クリぽっち』の人々
  
 ♥ 今年との別れを知らせる唄なのだジングルベルを聴かねばならぬ 松井多絵子
 
 クリスマスを普段通りに過ごす若者が多くなっているらしい。Line利用者に11月ウェブで実施した調査では、20代未婚男性では、恋人や友人、家族と過ごす予定のない人が33%を占めた。女性は26%だった。男女とも「仕事やアルバイトが最多。男性が「1人でいつも通り」女性は「家族と一緒にいつも通り自宅で過ごす」とのことである。

 ♥ 土曜日の動く歩道は待つ人のなき私を速やかに運ぶ

 今日はXmasイブ、土曜日なのに若者たちのXmas離れとは、、。若者の「恋愛離れ」も原因らしい。恋人とレストランやイルミネーションで過ごす費用も原因か。近年、クリスマスを独りで過ごすことを「クリぽっち」と呼ぶそうである。クリスマス離れの傾向もあるらしい。物が溢れ、プレゼントされても、さほど嬉しくないのだろうか。
                                           
 ♥ それ以上言わなくていい、これ以上言いたくはない清しこの夜
                                           プレゼントよりも素敵な言葉をひとことXmasカードに書いて贈るほうがいいではないか。でも相手を喜ばせる言葉を考えるのは難しい。「詩人なら言葉を捨てよ」というように
「恋人なら言葉を捨てよ」でもいいかもしれない。イルミネーションが楽しい言葉をささやいてくれるから。

 ♥ 聖堂の絵ガラスのようにその羽を孔雀はわたしに開いてくれた

 夜の街を歩いているとき、行く手に孔雀がひろがった。電飾の孔雀は教会の礼拝堂のステンドグラスの孔雀のように私に迫ってきた。クリスマスは異国の聖誕祭なのだ。
                              
              12月24日  松井多絵子 、、


笑顔の永田和宏

2016-12-22 14:19:58 | 歌う
           笑顔の永田和宏

 三日前の朝日歌壇の永田先生は選歌を休んでいられた。私は先生は急病かもしれないと不安になった。でも今日の朝刊に笑顔の先生の写真、ほっとした。「スウェーデンのストックホルム市で行われたノーベル賞授賞式に出席してきた。本年の生理学・医学賞の受賞者、大隅良典博士が招待してくれたのである。大隅さんとは20年来の友人であり世間では我々研究仲間を称して七人の侍」などと呼んでいるようだ。受賞者に許されたわずかな招待枠のなかに私を入れてくれたのは、この上なく嬉しいことであり、得難い経験となった」。

 ♦ 友としてあるを誇りに檀上の君を見てをりメダルは君に

 ♦ 友のためはろばろと来し雪の街国王は君に手を重ねたり
                               
 この2首は大隅氏に贈られた永田先生の歌、枯れることのない歌の花束である。十日の受賞式当日はストックホルムに来て初めて雪が積もった。市のコンサートホールは燕尾服とイブニングドレスの人々で溢れかえるようであった。私がそこを訪れたのは30年位前のこと。9月だったが建物のなかは暖房していた。「ここでノーベル賞の授賞式が?」と驚いたが大昔の記憶は茫々としている。あのホールの近くで買った首飾りは今も大切にしているが。

「グスタフ国王からメダルを渡される場面ではさすがに胸が熱くなった、研究対象は違うが、かなり近い分野で、大隅さんの20年の研究を見てきたからである。今回の受賞は大隅さんの単独受賞ということに大きな意味がある。~略~ 檀上の友を見ながら大隅良典という友を誇りにおもうことはもちろんだが、サイエンスを通じて、こんな友人を持つことのできた自分自身を誇らしく思ったことだった」
             
 「自分が喜んでいるときに一緒に喜んでくれる人が有難い」というようなことを永田先生が書かれた文を読み、共感したことがあった。「落ち込んでいる時には慰めたり励ましてくれる人は多いけど賞を頂いたときに<おめでとう>と言ってくれる人は少ない、<さみしいわねえ>と、先日ある歌人が云っていた。永田先生の笑顔の写真はホントに嬉しそうである。
    
                
                12月22日 松井多絵子
                 

ダイヤモンド冨士

2016-12-21 09:47:45 | 歌う
           ダイヤモンド冨士
                   
 昨日午後3時すぎ、私は山中湖に近い「花の都公園」をぶらぶらしていた。花のない公園はまだ枯れないススキだけの枯野の公園。そこにカメラを手にした何十人かの人びとが集まっていた。標高1000メートルの高原、すごく寒い。3時40分前後に富士の山頂に太陽が重なる、その瞬間を見られるのは、秋から冬にかけての晴れている日だけ。

                          
 晴天なのに、昨日の富士山は雲に覆われていた。私は雲を眺めるのが好きだが、昨日は雲に意地悪されているような気がした。3時40分にはまだ雲は太陽を遮っていた。「また見に来いよ」と富士山は私を見下ろしていた。

                                     
      
          ボクと私の富士山    松井多絵子
                           
   あたたかくなっても白いその帽子ぬがないほうがいいよ富士山
                              
   登ったことないけど富士山すきなボク、登ったことがないからでしょう
                
   ボクたちの富士山の高さはアバウトで二千、三千、五千メートル             
   今は静かにしているけれどそのうちに噴火するかも富士山、あのひと
              
   いくたびも落選せしを知りしより片岡球子の冨士の絵たのし
                                
   落ち込んだときには遠くの富士山をひき寄せたまま眺めていたい
                                             富士山を見るため四十八階にきて鯖雲に見られていたり
                                  
                             
 
 昨日はダイヤモンド冨士を見るため濃紺のサングラスをかけ続けていた。そのためか富士山は暗く不機嫌に見えた。「傲慢な太陽」が疎ましかったのかもしれない。私の周りにはギラギラ活躍している女たちが常にいる。眩しい女たちから離れて富士山を眺めていると、他者のことはどうでもよくなる。富士山は私の精神安定剤なのかもしれない。                                          
               12月21日 松井多絵子                            
                                     
                    
 

疲労は脳が原因か

2016-12-19 09:43:58 | 歌う
           疲労は脳が原因か
                                         
 ♦ 異国語のようなり古語を収めたる辞書をひらけば「なずき」とは「脳」
                              松井多絵子

 「すべての疲労は脳が原因」という本の広告を見ながら「私の脳も疲れているのか」と気になる。著者・梶本修身は大阪市立大学大学院特任教授。氏は ●「食事」「睡眠」「環境」など今すぐできる疲労解消法を提案している。

    ① 30回噛んで食べると疲れにくい 1/2枚の鶏胸肉で疲れはとれる

    ② 梅干し2個分のクエン酸が疲れを防ぐ

    ③ 横向きで寝ると熟睡できる

    ④ 冬の睡眠中は起き上がったときの室温に注意
 
    ⑤ 立ち上がって歩くだけでも疲労の回復に有効
    
    ⑥ 窓を開けて風を入れるだけで疲れは軽くなる
                           
 
 この程度のことで疲労が回復するのだろうか。鶏肉と梅干しを食べるのはすぐできる。しかし30回噛んで食べる、横向きで寝る、容易ではない。暖房の部屋の窓を開ける気になれない。これらは継続しなければダメだ。脳は「怠け者」や「飽きる人」が嫌いらしい。
       
 ☀ 第16回 大仏次郎論壇賞は森千香子氏(44)一橋大学准教授(社会学)
『排除と抵抗の郊外 フランス<移民>集住地域の形成と変容』(東京大学出版会)パリ郊外の「移民」が集まる地域に入り込んでフィールドワークを敢行。若者からの聞き取りや歴史をたどり直す調査を通じて、フランス社会にひそむ人種差別と移民排除の問題を考察した。
                                         
 巴里のシャンゼリゼ通りをぶらぶら歩くのではなく、移民集住地域での調査、女盛りなのにオシャレより研究か。疲れを知らない女性だろう。だから脳に愛されるのだ。

                             
      12月19日 晴天だが窓はまだ開けない 松井多絵子