先日ヤフオクで入手した「石印材」の一つ
「寿石」の側款がある石の鑑定であります。
一応、入手価格を先に書いておきますが、たったの「千円」でありました。
ヤフオクの出品物の表示では「篆刻 古印材 鶏血石・田黄・パリン石」などの頭書きがあったのですが、さほど美しい石・高価な石であるという風には見えませんね。
結論から言えば、「最低落札価格の千円」で、ワタシ以外の入札が無かったわけですね。印箱も無し、ただ寿山石で刻の文字があるだけの、15mm角の印で、「京子」と印面に朱文で彫られているのです。
ワタシが単独で安い価格のまま落札できた最大の幸運は、出品されていた品物の1枚目の汚らしく見える説明写真であったのです。
こちらの最も注目し、鑑定するポイントは3点になります。
①石の種類
②側款名の作者が「雨宮寿石」さんか
③施されている薄意・石の仕上げ
まず、石の種類であります。
説明ではどれである、と限定できておりません。ワタシが見るところでは「寿山石系 赤い朱の斑点が沢山ある 艶やかで黄土色の半透明」のいい石だとピンときました。届いた品物がコレであります。
ワタシの見立てでは「坑頭洞」の産であろう。いわゆる坑頭黄あるいは坑頭紅ではなかろうかと思ったのです。
小林徳太郎先生著の「石印材」でも2ページを割いて取りあげられている「銘石」です。坑頭洞は天藍凍や牛角凍・坑頭紅などマニア垂涎の石を輩出した「名坑」で名高いのです。
下地が黄色味がやや強いこと、大きさが半分程度ということを除けば酷似しております。
さて、次のポイント「作者名」です。この場合は石の作者ではなく、印面に彫った人を差しますが、それが「寿石」ですね。ネットでググると真っ先にヒットするのが間宮壽石(まみや じゅせき )先生であります。多くの篆刻職人を生み出した名門間宮家の号で、戦後でも指折りの篆刻家さん、現在は3代目が跡取り・名跡だそうです。
そして③の石の細工です。原石を出来るだけ残すために波の形の「薄意」という薄い彫りがそっくりなのです。経験的に言えば、珍重される美しい印材、希少性の高い石には、こうした装飾が施されることが多いのです。ダメな(安物)順番から言えば、こうなります。
切り出した石のままの角材→各面を研磨する→上部を丸みを持たせた曲面にし、4隅は「面取り」して丸みを帯びた形に磨く・または上部に獅子などの飾り彫(紐)を施す→石を減らさないため、あるいは採石した自然石の形を残すため、表面に薄い浮彫を彫る(薄意)
本現物は頂点の4隅全体にやんわりとした波(雲)型の薄意があり、いかにも奥ゆかしいのです。石の形自体が自然系を加工しているように見え、非常に美しく磨かれて艶があります。これらは、何と言おうが貴重な石だからこその細工・扱いなのであります。刻字は、なんとも言えません。字画も少なく雅号ではなく「本名ー京子」と彫られております。
「寿石刻」の側款は、行書体で一目で手練れの手によるものだとわかりますね。
というわけで、ワタシにとっては掘り出し物、大変お買い得であったと喜んでおります。千円で入手したものですが、石は坑頭紅(黄)という大変高価な美しい印材であります。「間宮寿石先生」の真作と断定してよかろうと思うのです。ではいくらの価値があるか?、それはよくわかりません。ワタシはコレクターではありますが、商いをしているわけでは無いし、今までのところ集める一方で、一度もヤフオクに出品したことが無いのです。大体2.3万円とみてもいいかもしれませんが・・・。
因みに、昨夜は大変貴重な石材や田黄石が多数出品されておりました。年の瀬にきて「宝くじ」を買ったと思えば空くじなしのヤフオクの方がはるかに良かろうと思って、5件の出品に対して、普段の3,4倍ほどの高額な入札をいたしました。35千円以上で、最高で55千円の入札もしたのです。全部落札出来たら最大20万円位になるところでした。今朝起きて見たら結果は全敗、他人様に落札されてしまいました。夜中近くまで入札価格競争に巻き込まれたら、一件で6万円とか7万円とかになってしまうのです。ま、悔しいけれど仕方ありませんね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます