植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

墨に置けない 高級な墨

2020年06月08日 | 書道
相変わらず、書道に関する、あまり役に立たないお話ばかりであります。
 
 ワタシの尊敬する師である藤原先生の口癖の一つが「書は、紙と筆と墨の組み合わせ次第よ」であります。書こうとする書体や文字に合った半切(条幅)、半紙を用意し、それに適した筆を用いるのが当然であります。そして、墨がまた、重要な役割を担うのだそうです。
 約4年前、藤原先生の書道教室に初めて伺った時、硯と固形墨を取り出すと先生は仰いました。
「墨を磨ってると、お稽古の時間が終わってしまいますよ」。
2時間みっちりと練習すると大体半紙に30枚以上書きます。使う墨は相当な量になるので、液体墨(墨汁)でなければ話にならないのです。
 仮名文字を練習する場合は薄墨で小筆の先数ミリにつければいいのでこれは、硯で磨ります。カナ用の墨もありますが、練習なので何でも構いません。
 漢字の練習に使う墨汁は、極端に言えば学童用の安いものでも書けます。ウチのコンビニで100円やそこらで売っています。まぁ、しかし、いやしくも準中級者のオジサンが、数万円の銘々筆を手にして手漉き半紙に書くのに、子供用の墨汁はいかがなものかと。

 そこで、見栄を張って呉竹・墨運堂・開明あたりで売っている作品用とか濃縮液などを使うことになります。天然素材(膠系)と合成樹脂系に大別され、紫紺、純黒とか濃度とかで区別されますが、あまり違いは分かりません。高級品の方がなにかといいのであろう、と思い高い方の液体墨を使っております。

 作品作りになればもう少し研究して書に合った墨選びをしなければならないでしょう。墨の濃淡やらカスレ、色合いなどが書道展の選考にも影響するのです。今のところワタシはお呼びで無いのですが。最初は近所のホームセンターで買っていましたが、ネット販売やオークションでははるかに安く入手できるのにようやく気付いて、今はかなりのコレクション(笑)です。

これらの高級墨は、概ね4、5千円いたします。練習にはもったいないのですが、天然の膠を使った高級墨は開封後劣化するということなので、ヤフオクで落札した開栓済みの墨は、とっとと使うべきなのです。隅っこに飾っておくものではありません。

 結局固形墨は、書道をやっていても基本的に不要なのですが、そこはヤフオクで眺めていると欲しくなります。古墨といわれるジャンルには収集家さんもいるようです。日本の墨は100年以上も経過すると、みんな劣化して「泥」のようなものに変質するそうです。原材料や製法が異なる中国の墨(唐墨)は、その点劣化が少なく数百年も前の墨が残されているようです。

 老舗の製墨会社は、練習には固形墨は使われず、恐らく消費量も極端に少ないと思われます。そこで旧来の伝統的な製法の和墨は、記念墨・高級墨にして販売されます。呉竹精昇堂 千寿墨や、墨運堂 百選墨のシリーズがもっとも著名であります。年に数種、個数限定で発売され一点3万円から10数万円までの価格になっています。また、著名な書家の記念・書道団体の大会の記念に配られることもあるようです。
 ワタシも、書道を志すものとして一つくらいは欲しいものだと思って、やっとヤフオクで数点入手しました。

例えばこれが「千寿墨」。37千円ちょっとで落札したNo39「華厳・東大寺」記念墨500丁のうちの24だそうです。

裏面はこんな風になっています。
左が金の延べ棒ならぬ金墨。2本セットですね。なかなかの大きさで、手に取るとちょっとした貴重品、しっとりして重さもある芸術性が感じられる墨です。これを、実際に磨って使う人はあまり居ないでしょう。


こんな記念墨もあります。ワタシの没後に、遺品整理をする時、身内が「おー、おとうは現代書作家になっていたのか」と早とちりするでしょうか?。それはない( ´艸`)

 これらの固形墨は、やはりどこかにしまっておくのももったいないです。たまに取り出して、感触と墨の香りを楽しむのがいのです。

 ワタシは念のため、千寿墨と同素材・同程度の実用に作られて割安で販売される固形墨も入手しました。いつか、専門家が使うようなその墨を心静かに磨って、誰かが捨てずに大事にしてくれるような書を書くことを夢見ております。

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