植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

値打ちものが、安い中できらりと光る 

2022年03月12日 | 篆刻
このところヤフオクで「田黄石」などの希少で人気が高い印(材)が妙に高値になるのです。需要が大きいせいか田黄石の出品も多く真贋不明の石を含めると常時数百の田黄石が見つかります。

 明らかな偽物・人造石を除くと数万円の値段が付き、一部の珍品はヒートアップして深夜まで入札合戦が続いて最後は「出品取り消し」も多発しています。落札予定時間が夜10時としても、最高額が更新されるたびに6,7分期限が延長されそれが延々と繰り返されるのです。それに回数や時間に一定の制限があって自動的に入札停止となるのか、あるいや出品者側の操作によるのかは存じません。

 ワタシも、たまにこれは欲しいと思うと、最後の数分の入札合戦に参戦することがありますが、「熱く」なって思わぬ高値でつかまされるのを恐れ、だいたいはすぐに撤退するようにしています。その撤退基準は「入札件数・競争相手数・時間・金額」であります。残り時間が数十分となった時すでに50件以上の入札があれば中には懐がとても豊かな人、熱狂的に欲しがる人がいるので価格競争するとエスカレートします。最後に複数が諦めないで競争になるとやはり意地になって降りなくなるのです。また、起きて趨勢をチェックすると睡眠時間を削られます。

 自分が最高額になるとすぐに、それを上回る入札があると危険信号、深入りは禁物です。それでまぁいいか、と諦めたら翌朝その価格で落ちたことも何度もあります。しかし、ではもう少し(500円か千円くらい)乗せたら落札出来たか?というとその可能性は低く、その場合、相手方がもっと高値を出す公算が大きいのです。

 さて、そんなわけで、このところほとんど不調に終わっていたのですが、ひさしぶりに3件落札しました。そのうち2件は最低入札価格、つまり無競争での落札です。一つは、篆刻関連の中国本3冊千円、もう一つは「幽玄斎」の中筆であります。これは、仮名書きや調和体(漢字とひらがなの混じった書)に向いた長鋒の羊毛筆二本です。幽玄斎の筆は10本程度所有していますが、非常に良質で書きやすいので、昔は(恐らく)とても高価で、専門の書道家さんでないと買えないような高級筆です。今はネットで「幽玄斎」を検索しても商品はヒットせず、高知県と台東区に書道販売店があるだけです。

 その幽玄斎の中古筆、写真に見えるラベルの定価で2本27千円が2,999円でありました。ワタシの見立てでは、30年ほど前の古筆ですが、墨が付いたまま固まっているので状態が悪いとみて人気が無かったのだと思います。30年前と推定する理由は①幽玄斎の価格ラベルには消費税が付加されていない ②今や原料供給が途絶えた良質の羊毫筆=細嫩光鋒(サイドンコウホウ)を使っている  ③幽玄斎は「文林堂」という書筆屋さんの職人の敬称(屋号)ですが、軸には幽玄斎や文林堂・筆名が刻まれていない(店頭販売のみ)のでインターネット販売が主流になった20年くらい前にはすでに廃盤となっていると思われるからです。未使用の幽玄斎の筆は見つかりません。
 「ビフォー」今朝ポストに投函されていた手入れの悪いこの筆をとりあえず洗いました。
写真左2本が「アフター」です。へたりや毛切れもなく、新品同様の状態です。定価の1割で、滅多に出回らない幻の筆を入手でき、至極満足であります。因みに右の5本もすべて幽玄斎の古筆、これだけで定価が15万円ほどいたします。

 幽玄斎筆は、使ってみないとその良さが分かりません。特徴は細めの軸で、普通の筆より5㎝くらい長いものもあります。手練れの書道家さんが愛用したその穂は、入手困難で高価な山羊の白い色が抜け飴色と銀髪の中間程になり艶やかさもあります。非常に高価な毛を用いるせいで、割合穂先のボリュームが少なめで、大筆は見たことがありません。

 狭義の細嫩光鋒とは、中国長江下流地域のごく限られた地方のみで野生であった山羊を食用に飼い、その若い雄山羊の髭(たてがみ)の毛を指します。世の中で、最も供給が少なく最高の品質の筆の原材料なのです。細光鋒 と同じところから選別して採取しますが、ごくわずかしかとれないのです。非常に細い絹糸のような毛なので熟練しないと書きこなせません。昔は高く売れたのでそんな貴重な山羊も姿を消し、今は似たような山羊の毛が代用されています。 

 落札したもの三つめは、印泥2個と「紅芙蓉」の紐つき印を含む6個の印材計16千円でありました。実は同じ出品者で「田黄石」らしき印2個が出ていたのですが、残念ながら期限間際で3万円を超えていたので断念しました。(どうやら時間切れで入札取り消しになったようです)

 印泥の一つには非常に質がいい「高式熊」の表示をみつけたのです。1両装(30g)で安いランクのものでも8千円ほどします。もう一つは珍しい印泥で「品名・印泥会社名」が明示されていないのです。(お土産用の粗悪な印泥にもそうしたものがありますが)。初めて目にする印泥ですが、直感で自称印泥研究家としてぜひ入手したいと考えたのです。

 その印を入れる「印合」が安物では無く、現在、一般的に流通する中国の印泥では最も著名で高級な「 高式熊 」やそれとタイアップした印泥製造の第一人者李耘萍( 潜泉印泥 の中心人物)のブランドなどに使われているような印合でした。これが少なくとも2両装残っている(ほぼ未使用)ようなのです。

 さて、この印泥は明日にも到着する様ですが、これは別稿にて紹介するだけの由来や価値がありそうなのです。

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2 コメント

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Unknown (lemonwater2017)
2022-03-12 13:11:56
始めまして、象が転んだです。

少し前に印鑑をネット買った事があります。
安かったので騙されて元々だったんですが、”黒水牛”という宣伝文句に惹かれました。
どう見ても、黒いプラスチックの様な質感で少なくとも水牛ではないかな。

でも買い物ってそういうのも楽しみの一つなんですよね。
騙されて笑えるくらいが華という事で・・・
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騙されるつもりではないのです (槐松亭主人)
2022-03-12 16:37:14
時価に比べて極端に安いものは、ニセモノ・模造品だと知って安く買うので、正直騙されたー-というのは少ないです(一杯食ったなぁというのは無くもないか)
高価なものを真正品と確信して、高額で落札しても楽しみは少ないですね。1万円で買ったものが2万円というのがうれしい(笑)
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