芸術って言葉に弱い。
苦手と言い換えてもいい。
何か、高級で、敷居が高い感じ。
中学や高校のころ、
『芸術鑑賞会』と称した催し物が、
悉くつまらなかったせいもある。
あまりのつまらなさに、
だんだん、寝るかサボるかになっていった。
……音楽以外。
小学生のころ、
友達の両親が音楽好きで、
そこの家では、
一日中クラシックが鳴ってた。
そこで聞いた、以下の曲が好きだった。
『トルコ行進曲』(モーツアルト&ベートーベン)
『エリーゼのために』
『交響曲第四十番』(モーツアルト)
『バイオリン協奏曲・四季』
『魔王』
『トロイメライ』
『ペルシアの市場』
『交響曲第五番・運命』
『剣の舞』
『美しく青きドナウ』
くどいようだけど、私は曲が好きだった。
……曲だけが。
曲や作曲家についてとか、
テーマだとか、いつ書かれたかとかは、どうでも良かった。
軽い興味は覚えたけど、その程度。
知った後で「へえ~」って思うだけ。
ラジカセの巻き戻しと再生のボタンを押すほうが大切だった。
音やメロディやリズムやハーモニーが好きだっただけで、
それを説明する言葉が好きだったわけじゃない。
曲によっては、邪魔でさえあった。
そういう説明に時々出てくる言葉が、
……芸術。
だから、余計に良い印象がないのかもしれない。
友達の両親は、説明しなかった。
自分たちの好きな曲を、聞きたいように流すだけ。
リクエストには応えてくれるし、
質問にも答えてくれる。
でも、基本的には、
心地よいBGMとして聞くのみだった。
音楽を芸術として特別扱いして鑑賞させるのではなく、
暮らしに根付いた、
テレビやラジオと変わらぬ扱いで聞かせてくれた。
『さるとびえっちゃんの主題歌』と、
『トッカータとフーガ』が同じ部屋で同じように流れた。
『ヤンボーマーボーの天気予報の歌』も、
『白鳥の湖』も、同じ耳に心地良い音楽だった。
偉そうにしてないから、余計好きになれたところもある。
そういう意味では、
幸せな出逢いかたをしたと思う。