この国の「言論の自由」はじわじわと蚕食されて、中身の部分は空洞化して来ているのではないか?
極めて憂慮すべき状態になっていると思う。
ひとつは愛知県で展示が中止になった「表現の不自由展・その後」について、萩生田文科相は採択を決めていた補助金7800万円の全額を交付しないと発表した。
展示内容ではなく、会場の運営を危うくする事態が予測できたのに申告しなかった「手続きの不備」を理由に挙げている。
しかしこのような理由で不交付にするのは文化庁でも前例がないとしている。
明らかに「表現の不自由展・その後」の内容に介入しているとみなさざるを得ないだろう。
萩生田文科相は、森友加計問題でも暗躍した人物だ。
この時の疑問点がまだ完全に問題解明がなされていないのに、堂々と表舞台に出てきた。
もう一つは、昨年4月、かんぽ生命保険の不適切販売をNHKの「クローズアップ現代+」で報じた際、日本郵政グループが抗議していた問題だ。
郵政グループは、元総務次官の鈴木日本郵政副社長を筆頭に総務省出身者が多い。
放送行政を所管し、NHK予算も握る総務省元幹部からの抗議は、明らかに「報道の自由」に対する圧力と見なされる。
しかもその報道内容が間違っていたなら抗議を受けざるを得ないが、かんぽ生命の実態は不適切な勧誘がなされていたのである。
郵政グループのトップは総退陣すべきだろう。
さらに問題だと思われるのがNHKの「経営委員会」である。
郵政グループからの抗議を受けてNHKの上田会長に対し厳重注意していたという。
だいたいこの「経営委員会」なるものがくせ者で、安倍政権の息のかかったもので占められている。
安倍第2次政権以降マスメディアに対する締め付けは陰湿を極めている。
そしてその先鋒役を担ってきたのが、今回の内閣改造で再入閣した高市総務大臣と初入閣の萩生田文科相だ。
高市大臣は2016年「国は放送局に対して電波停止できる」という飛んでも発言をしている。
萩生田大臣も要所要所でマスコミにプレッシャーをかけるような発言や行動をしている。
ニューヨークタイムズの発行人アーサー・グレッグ・サルツバーガー氏は次のように述べる。
「民主主義における独立した報道機関の役割は、置き換えることのできないものです。米国の建国の父たちは、人々自らが統治する社会において、報道機関がいかに不可欠な存在であるかということにしばしば言及していました。ここ数年、こうした権力に対する監視の責任を果たすだけの力を持った報道機関が減っており、非常に懸念しています。私たちがその分大きな役割を担わされています」
今や「言論の自由」は全世界的に危機に瀕しつつある。
この「言論の自由」を守るべく最前線で戦っている記者諸君の奮闘と、それをサポートする上層部の「気概」がまさに試されようとしている。
同じように国民も両の眼(まなこ)を開いて、「民主主義と言論の自由」を破らんとしているものに対して厳しい目を向けるべきだ。
野党は統一会派のまとまりが出来つつある。
今回の内閣改造で徹底的に追及すべきは、萩生田文科相と高市総務相だ。
小泉進次郎などのような「吟遊詩人」を追求しても時間の無駄であろう。