『すごく細かい、カワイイ、知的、スキ、日本人の女の子と
一晩中語り明かす夢』
咲人は日本語超初心者なので、形容詞の活用ができない。
正しい日本語で言うなら、
『すごく細かくて、可愛くて、知的で、俺の好きな日本人の女の子』になる。
さらりと好きと言われてしまったが、
例の時以外にも咲人は、ちょいちょい俺は君が好きだからね、と言っていて、
私が「咲人は私が大好きだからねー」とエラそうに言ってもthat’s trueと同じくエラそうに返した。
例の時だけ心底驚いた理由は、あんなに真面目な声で言われたことがなかったからだ。
今までは冗談っぽ過ぎたのだ。
なので、この一文も物凄く嬉しかったけれど、またいつもの冗談かとも思った。
あと、好きって意味広いし。(元も子もない)
『ふぅーん?それは直接会って?それとも電話?』
『ほぼ直接ぽかったけど、多分あれは電話だ』
『おもしろーい』
『面白い?メイサハ、ジツニ、ヘン(笑)』
突然変呼ばわりされたので、タタタと軽快なタップで文章を訂正してやった。
『メイサハ、ジツ二、ヘンダケド、カワイイ。
オレハ、ジツニ、ヘン。』
すぐに咲人はハハハ!一つ目には賛成だけど二つ目には反対、と楽しそうに返信した。
『私も言えるわよ。
咲人は実に可愛いけど、超変。』
『うーん、わかんないけど(笑)』
『咲人は笑うと鼻と目の間にたくさんシワができるよね』
と送った途端、咲人はHAHAHAHAHA!!と大文字で送ってきた。
え、何でそんなウケてんの?
『あのシワ可愛いよ』
『あのシワについて何か言ったのは君が初めてだよ』
『エェッ?本当に??』
『本当だよ。っていうかエェ!?可愛いか!?』
話し込んでわかったのだけど、彼の国には笑いジワという概念がない。
ていうか、日本にしかないのか?
私にはわからないが、とりあえずクシャッと笑うのが可愛い♡という発想はあまりないらしい。
多分、彼or彼女の笑顔って可愛い!って思うことはあるけど、
そう思わせる理由までは誰も気にしないようだ。
日本人はとても細かいのだ。
私の説明を聞いて、咲人はOKと答えた。
『じゃぁ今度君とワライジワについて話すのを楽しみにしてるよ』
『ハハ、そうね。あーでも……』
私はうーんと天井を見上げた。
私たちには最近、問題があるのだ。
『私達、ちょっとお喋りを控えた方がいいわ。
じゃなきゃ、すぐ体調悪くなると思う』
そう。
連日の深夜の長電話が効いて、2人とも慢性的な寝不足だった。
日に4時間くらいしか寝ていない日も何度かあり、
私は勿論だけど彼も相当キツかったようで、昼間もしょっちゅう眠いとメッセージを送ってきた。
それでもなぜか、二人ともなかなか長電話をやめなかった。
咲人はすぐに返信した。
『体調が悪くなる点については賛成。減らす点については反対。』
『でしょ。っていうか減らす点について反対なの?(笑)』
『おう』
『週に一回でどう?』
はぁー!?と、咲人は秒速で送って来た。
そして矢継ぎ早に『週に一回?なんで?なんで週に一回だけ話したいの?』と聞いてきた。
『(えー!?週一って妥当じゃない??)だって私達いつもすごく長く話すし、
いつもうまいこと我慢したり、短くしたりできないじゃない』
『うぅーん…わかる』
『週に一回しかしないなら、それがどんなに長くてもそんなに気にしなくてすむでしょ』
私は、ちょっと笑ってこう続けた。
『まぁ別の問題があるけどね。
咲人はきっとその日本人の女の子が恋し過ぎて死んじゃうかも。
もしくは、そのルールが守れなくて彼女に電話する、か?』
咲人はいつもの平坦な書き方に戻って、こう答えた。
『君は正しい。いや、おそらく正しい。俺はもっと君と俺自身の健康について配慮すべきだ。』
『(相変わらず理屈っぽい話し方だな…)』
『自制は大事だ。でも君と話すのも大事だ。だから……』
なんだろう?と待っていると
『俺たちは、バランスが取れるようトライしてみるべきだと思う』
いやだから
続きます(笑)