『今日は絶対に会えない。本当に体調が悪い』
その二文だけだった。
時間と体調が都合つけば君とお茶したいって、そういえば言ってたな。
ま、でもそうだろうな。と携帯をしまった。
何も言う気にならない。
一晩経って、自分がショックから立ち直っていることに気づいた。
でもショックの代わりに、悲しさや虚無感が、
ぼんやりと心に霧をかけていた。
自分がどうしたいかは、自分がどんな感情を今持っているかによる。
それが整理できないと結論が出ない。
爽やかな天気の中、ヒールの音が私を急かす。
仕事場に向かう街のいろいろなところに彼の断片がある。
思い出したいわけないのに。
あそこで私を待っていた。笑顔で手をふって走ってきた。
ここで出会った……。
そうだ、このまま連絡が途絶えればいいと思った。
もう話したくなかった。
話すエネルギーが勿体無かった。
これ以上嘘を聞きたくもないし、大好きだった顔を見たくもない。
私がは意外とか弱いメンタルをしていた。
働かなければおまんまが食べられないので、なんとか働いた。
なんとか、なんて言ったけど、実際はまぁ別に大丈夫だった。
私は帰宅してすぐにキッチンへ行った。
モッツァレラチーズとクレソン、チェリートマトをカットした。
ごま油とバルサミコ酢とハーブ塩をかけて混ぜ合わせた。
オリーブオイルもあるんだけど、食べ飽きたからちょっと変わり種。
混ぜるのに使ったスプーンを洗いながら、ぽつりと日本語で喋り始めた。
「あなたは私のこと、口説こうとしたでしょう」
水の音がBGMのように流れる。
「彼女にしようとしていたでしょう」
指に触れる水が冷たい。
「船に乗ろうって言ったでしょう。
私の心を開かせようとしていたでしょう。
あなたは結婚しているのに。
ただ私を満足させる、よりよいセックスをするためだけに、
それをしていたんでしょう。
それはすごくフェアじゃないわ。」
シャンプーしてる時の頭が冴える感じと似ていて
素直にクリアな言葉が溢れていた。
「言ったでしょう。
私は気にしないわ。あなたがただやりたいだけでも。
あなたはあの日、初めてホテルに行ったあの日にちゃんと言うべきだった。
いずれにせよあなたは私を抱けたじゃない。
私は他に女がいるかもと思っていても、来たんだから。
そうしたら私、こんな風に思わなかった。
あぁわかった。
時々会ってsexするだけの仲でいましょうって思ったわ。
それでよかったの。」
蛇口を閉じて、ワイプでスプーンを拭いた。
「あなたがした事はとても自己中心的だわ。
私の心を、嘘で開かせようとした。
バカにしないでって言ったじゃない。
あなたはもっと私のことを尊重するべきだったわ。
そうした私はもっと………」
引き出しを開いてスプーンをしまい、手が止まった。
「私、あなたにプレゼントを買ったわ。」
引き出しのある棚には、黄色い小さなボックスが載っていた。
彼のために買った、レモンジンジャーのハーブティー。
ものすごく
悔しかった。
クソ、好きだった。
好きにならないように一生懸命コントロールしてた。
でも本当に本当に、好きになりそうで大変だった。
でももう好きだったんだ。
悔しい、悔しい、悔しい、と
ボロボロと涙がこぼれた。
どんどん泣いて仕舞えばいい。
泣いた方がいい。
すぐにスッキリできる。
忘れられる。
泣かない方がよっぽど辛い。
「あなたになんか………
もう二度と会わないわ。
あなたとなんか二度とセックスしないわ
あなたなんか大嫌いよ」
悔しい、悔しい、悔しい………
なんであんな奴なんかに心開きそうになってたんだろう。
いや、しょうがないけど。
だって楽しかったもん。
全然怒らない彼も、やっと本音らしいところを見せてきてくれた彼も
バカみたいな奴だったけど、楽しかった。
だからもう会えない。
答えが出た。
続きます!
その二文だけだった。
時間と体調が都合つけば君とお茶したいって、そういえば言ってたな。
ま、でもそうだろうな。と携帯をしまった。
何も言う気にならない。
一晩経って、自分がショックから立ち直っていることに気づいた。
でもショックの代わりに、悲しさや虚無感が、
ぼんやりと心に霧をかけていた。
自分がどうしたいかは、自分がどんな感情を今持っているかによる。
それが整理できないと結論が出ない。
爽やかな天気の中、ヒールの音が私を急かす。
仕事場に向かう街のいろいろなところに彼の断片がある。
思い出したいわけないのに。
あそこで私を待っていた。笑顔で手をふって走ってきた。
ここで出会った……。
そうだ、このまま連絡が途絶えればいいと思った。
もう話したくなかった。
話すエネルギーが勿体無かった。
これ以上嘘を聞きたくもないし、大好きだった顔を見たくもない。
私がは意外とか弱いメンタルをしていた。
働かなければおまんまが食べられないので、なんとか働いた。
なんとか、なんて言ったけど、実際はまぁ別に大丈夫だった。
私は帰宅してすぐにキッチンへ行った。
モッツァレラチーズとクレソン、チェリートマトをカットした。
ごま油とバルサミコ酢とハーブ塩をかけて混ぜ合わせた。
オリーブオイルもあるんだけど、食べ飽きたからちょっと変わり種。
混ぜるのに使ったスプーンを洗いながら、ぽつりと日本語で喋り始めた。
「あなたは私のこと、口説こうとしたでしょう」
水の音がBGMのように流れる。
「彼女にしようとしていたでしょう」
指に触れる水が冷たい。
「船に乗ろうって言ったでしょう。
私の心を開かせようとしていたでしょう。
あなたは結婚しているのに。
ただ私を満足させる、よりよいセックスをするためだけに、
それをしていたんでしょう。
それはすごくフェアじゃないわ。」
シャンプーしてる時の頭が冴える感じと似ていて
素直にクリアな言葉が溢れていた。
「言ったでしょう。
私は気にしないわ。あなたがただやりたいだけでも。
あなたはあの日、初めてホテルに行ったあの日にちゃんと言うべきだった。
いずれにせよあなたは私を抱けたじゃない。
私は他に女がいるかもと思っていても、来たんだから。
そうしたら私、こんな風に思わなかった。
あぁわかった。
時々会ってsexするだけの仲でいましょうって思ったわ。
それでよかったの。」
蛇口を閉じて、ワイプでスプーンを拭いた。
「あなたがした事はとても自己中心的だわ。
私の心を、嘘で開かせようとした。
バカにしないでって言ったじゃない。
あなたはもっと私のことを尊重するべきだったわ。
そうした私はもっと………」
引き出しを開いてスプーンをしまい、手が止まった。
「私、あなたにプレゼントを買ったわ。」
引き出しのある棚には、黄色い小さなボックスが載っていた。
彼のために買った、レモンジンジャーのハーブティー。
ものすごく
悔しかった。
クソ、好きだった。
好きにならないように一生懸命コントロールしてた。
でも本当に本当に、好きになりそうで大変だった。
でももう好きだったんだ。
悔しい、悔しい、悔しい、と
ボロボロと涙がこぼれた。
どんどん泣いて仕舞えばいい。
泣いた方がいい。
すぐにスッキリできる。
忘れられる。
泣かない方がよっぽど辛い。
「あなたになんか………
もう二度と会わないわ。
あなたとなんか二度とセックスしないわ
あなたなんか大嫌いよ」
悔しい、悔しい、悔しい………
なんであんな奴なんかに心開きそうになってたんだろう。
いや、しょうがないけど。
だって楽しかったもん。
全然怒らない彼も、やっと本音らしいところを見せてきてくれた彼も
バカみたいな奴だったけど、楽しかった。
だからもう会えない。
答えが出た。
続きます!
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