メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

デニムの穴から

2019-07-05 04:08:04 | アイアン
今日こそ美容院に行こう!!


そう思い立った日だった。



重いエントランスドアの閉まる音を聞きながら、私は足早にある所へ向かった。
コツコツとヒールの音をさせながらメッセージを打った。




『30分後、暇?』




ここから美容院までは徒歩で1時間。
そのちょうど間くらいにアイアンのオフィスがある。
いずれにせよ通り道なら、もし彼が抜けられなくても無駄足にはならない。


この2週間、くだらない話や、日本の話、
彼の子供の頃の写真を送ってもらったり、
今度いつ会えるか話し合ったり、
私はそこそこに、このしょうもなーく信用できない男との交流を楽しんでいた。
アイアンのノーテンキでマメで冗談好きなメールは
当然全部英語だったので、
この男とメールしているのは私の語彙回収にも役立った。




なかなか返事が来なかったが、私は取り敢えず道を急いだ。
フカフカのダウンは次第に暑くなり、私は途中で右手にバッグ、左手にコートを持ち直して歩き続けた。





ピロリロリーン





『うん。どこにいるの?』




と返事が来たときにはもう20分は歩いていた。




『近く。あと10分。』

『どこに居るの?どこへ行けばいいの?ちゃんと教えて!(笑)俺のオフィスにまた来るの?;)』

『(行かん!)この駅』

『オッケーすごい近く。ベンチがあるからそこで会おう』




“駅の上の広場に”、と書いてあるのを見落とした私は、駅の隣の公園にいた。
ベンチはっけーん。パシャ。




『ここにいる』




写真付きでそう送り、フゥと一息ついた。
歩くのは大好きだけど、やっぱダウン暑いな。
でもコーデ的に着ておくか。




ミラー越しの自分はいつも通りだ。
軽く髪を整えてコートを着て、携帯を見た。
やっとそこで『駅の上の広場に』という文言に気づいた。




あっヤベ!ここじゃねーべ!でも駅の上って…?



見回すと、駅の屋根の三方がフェンスで囲まれていることに気づいた。
上に何かある……?
公園の出口に向かうとすぐに、階段を見つけた。




おぉー、ここか!
なんかおもしろー。穴場じゃない?




階段を登りながら文言を見落としていたとメッセージを送らんと、
携帯を取り出したその時だった。
誰かが後ろから私の目を塞いだ。





「だぁーれだ」

「わぁっ!!」




大きな声を出した私をアイアンはハハハハ!!と笑った。
振り向くと、Hey how are you? と笑顔を見せる彼がいた。




「まぁーたビックリさせちゃった?(笑)」

「さ、さ、させたわよ!!」

「怖がらないで怖がらないで〜!俺怖くないよー♡ハッハッハ!」





な、何よ〜!!
冷静にカッコよく登場するつもりだったのにー!!




動悸でうまく喋れない私を、大丈夫?大丈夫?あ、ここ座ろ!ハハハ!とアイアンは笑い続けた。
とにかく軽快ってゆーか軽いのよね、この人は………




「で、落ち着いた?」

「…ついてないわよ」

「ウッソなんで?大丈夫?怖がらないでよ、俺またやっちゃった感じ?(笑)」

「いや、もう、ホント…(そうだよ)はぁ。もう大丈夫だから。」

「そ、よかったよかった。で、元気?」

「はぁ。元気よ。あなたは?」

「うんいいよ!ちょっと忙しかったけどね!どうやって来たの?今日美容院行くんだっけ?」

「そうよ。歩いて来たの」

「そっかそっか、美容院はこれから?」

「そう」

「で、ここで何してたの?」




何してたも何も今ついたとこなんですけど…と返答に困っていると、
いつもの軽い笑顔で、俺に会いに来たの?(笑)と言った。




「え、そうよ?あなたが私に会いに来て欲しがってたから……」

「えっ、マジで?ありがとありがと!いいジーンズだね、可愛いよ」

「あ、ありが…」




とお礼を言い終わらないうちに、彼はデニムの穴をつついて




「おっと!穴から君の脚が見えるね。ハロー♡」




と挨拶した。私は思わず笑ってしまった。
アイアンはえ?何?どうしたの?俺何か変なこと言った?とまた笑っていた。




「はぁあ…アイアンは本当に変…」

「ん?何、HEN?」

「あなたはstrangeって言ったのよ」

「俺が?どうして。俺超フツーよ」




どこがよ、と私はまた笑った。





続きます!


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