咲人との電話と並行して、仁との連絡も続いていた。
彼は一向にこちらへくる日の話をしなかった。
その割りに例のアプリ上ではオンラインになっている事が多く、
誰かと通話していることもあった。
最低すぎてどうしようもなかったのだけど、
とりあえず物事が白黒つくまではしつこい性格なので、
一度ビデオコールをする話にまで持って行った。
それが、咲人に好きと言った翌日だった。
「仁ちゃん、電話して大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。どうして?」
「忙しそうだから…」
「あぁ全然元気だよ。忙しくなかったらつまらないから」
何だよ、余裕そうじゃん。
ホントに何でこの人フライトとかホテル調べないんだろ。
来る気がないのかな。
でも…………何だろう。
ふと私は、昨日とは全然違う気持ちなのに気づいた。
昨日は咲人を見るだけで嬉しくなった。
あぁこの人が大好きだ
この人に抱かれたい、と思った。
仁と話していても、その顔を見ていても、何も感じなかった。
しゃくれのせいじゃないなー。
別にただ興味がないんだ。
久しぶりに見た彼の顔、
嬉しいって思いそうなものだけど。
好きなら。
こういうことの積み重ねで、自分の気持ちが離れてることを確信していくんだな。
たくさん笑ってる所を見たけれど、
笑顔を見ても、キュンともしない。
あぁでも、こういう風に話してたんだなって思い出した。
そうだ、いつもたくさん笑って、色んなことについて話し合ってたね。
その時はきっと好きだったんだろうなぁ。
だから、その時間、すごく幸せだったんだろうな。
もう本当にすっかり、忘れちゃってたけど。
最後にビデオコールしたのって、いつだろう。
多分、2ヶ月くらい前だ。
たったそれだけで、こんなに気持ちが離れちゃうものなんだな。
それくらい嫌な思いしたりガッカリしたんだろうな。。。
彼のこと、理解できないと思ったんだな。
そして、多分
新しい恋をしているんだ、私は。
「仁ちゃん、ずっと笑ってるね」
「メイサちゃんと話してるからね」
キュンともしないはずだけど、笑顔でそう言う仁を可愛いと思った。
まだ私のこと好きなのかな?とよくわからない言葉が浮かんだ。
そもそも好きなはずじゃないの?
多分そんな話するのが久しぶり過ぎて、なんかもう彼の中でも過去だろうって勝手に思ってるのね。
行く行く詐欺も、1週間連絡が来ないことも、その間他の人とは電話していることも、
きっと、信頼関係や恋愛感情がキープされていれば不安要素にならなかったんじゃないかな。
一度もう信頼を失っているから(彼が笑)
何もかも信じられないんだと思うし
好きだと思えなくて許せないんだと思う。
だって
咲人が話したよくわかんない事も
エラそうな話し方や面白くない冗談も
突然送ってきた謎のVTRも(彼は本当に何のためなのかわからない動画を送ってくる笑)
全部含めて、可愛いなと思ってるもん。
愛情って、そういうものなんじゃないの。
ふと、私は仁はどう思ってるんだろうと
本当に不思議な気持ちになった。
「久しぶりに話して、どうですか?」
「楽しいよ」
仁は間髪入れずにニコニコと答えた。
「メイちゃんは?」
私にも言わせたがるのが、そういえば彼らしかった。
そろそろ寝なきゃねと私は言った。
仁はそうだね、と時計を見て、あと3分、と笑った。
仁ちゃん、まだ話したいんだね。
そう思うのは、好きだからだろうな。
「じゃ、何話そっか?」
「メイちゃん話したいこと話して。」
「んー、そうだな。」
ガッツいてると思われるかもしれないけど
ここでこれを言わなかったらわざわざビデオコールした意味がない。
きっと、これをすることで、私は少しずつ答えに向かって行っている。
どんな結末が待っていても、自分の中で、
ハッキリとでも少しずつでも、この恋を終わらせられると思った。
終わらせるために、ハッキリさせたいんだ。
「仁ちゃん、
この街に、来る?」
「んー、そうだね」
と言っておそらく仁はパソコンを触りはじめた。
スケジュールの確認でもしているのかわからないが、
大抵言われたその場で何かを調べ始める。
「チケット取らなきゃ。(予想通り取ってない)来月…」
「来月?」
「来月はもう試験が始まるから…。来週か再来週。
メイちゃんどっちがいい?」
いやその話もうしたやん
と心の中でツッコミながらも、ここは、大事なことは伝えるべきだとハキハキと答えた。
「どっちでもいいけど、早く知りたい」
「わかった。明日の夜までに教える。仕事の後」
わかった、と私は微笑んだ。
仁も微笑んで、こんなことを言った。
「メイちゃんは、いつこっち来る?」
行かねぇよ
とは言えないので、ちょっと笑って見せた。
「そうねー」
「(笑)」
「じゃあそれについては、ここで話そう」
私の提案に、わかった、と仁は笑顔で答えた。
「じゃあメイちゃん、そろそろ」
「うん」
「ありがとう。電話してくれて」
仁は笑顔で続けた。
「たくさん笑った。」
「うん、私も楽しかった。」
「じゃぁ、おやすみ。明日仕事後連絡するね。」
「うん」
バイバイしたあと、私はすぐに眠りについた。
彼が来たならどうすればいいんだろう。
そんなことを考えるだけ無駄なんだろうな。
それでも考えるのは、思い出がそうさせているのかも。
翌日、彼は連絡をよこさなかった。
私から連絡し、連絡するって言ってたよね、と詰めた。
そしてさらに翌日、ようやく返信が来た。
『連絡が遅くなってごめん』
『色々な方法を考えたけど、スケジュール的に、今回もそちらへ行くのを諦めなきゃいけない』
私は
ポチポチポチポチ
『ちなみに色々な方法って何?』
と訊ねた。
ピロリン
『大学を欠席したり、仕事の会議を休んだり……』
その日が、彼と連絡した最後の日でした。
私は何も返信しませんでした。
思うことはあっても、言いたいことはありませんでした。
何故なら、話したいと思うほどの気持ちがなかったのです。
多分、責める術や材料が沢山あったし、私にはその権利があったと思います。
でも、返信しなかったのには理由が二つありまして。
一つは、もう本当に愛想をつかしていたこと。
エネルギー問題ですね。
もう一つは、不安を残したまま音信不通になったら彼が苦しむだろうと思ったからです。
彼は私のことをなめていたと思うけど
ヘタレで自己中だけど
私のことが好きだったし私と共有していた思い出がありましたので
私の方から無視してやったら痛いだろうと思いました。
それはおそらく効いたでしょう。
けれどヘタレな彼が2度と連絡することは出来ないだろうと予想した通り
今日まで一度も連絡はありません。
それでいいのです。
私はようやく平和な心を取り戻りました。
そして
ついに
咲人に会うのです。
続きます。
彼は一向にこちらへくる日の話をしなかった。
その割りに例のアプリ上ではオンラインになっている事が多く、
誰かと通話していることもあった。
最低すぎてどうしようもなかったのだけど、
とりあえず物事が白黒つくまではしつこい性格なので、
一度ビデオコールをする話にまで持って行った。
それが、咲人に好きと言った翌日だった。
「仁ちゃん、電話して大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。どうして?」
「忙しそうだから…」
「あぁ全然元気だよ。忙しくなかったらつまらないから」
何だよ、余裕そうじゃん。
ホントに何でこの人フライトとかホテル調べないんだろ。
来る気がないのかな。
でも…………何だろう。
ふと私は、昨日とは全然違う気持ちなのに気づいた。
昨日は咲人を見るだけで嬉しくなった。
あぁこの人が大好きだ
この人に抱かれたい、と思った。
仁と話していても、その顔を見ていても、何も感じなかった。
しゃくれのせいじゃないなー。
別にただ興味がないんだ。
久しぶりに見た彼の顔、
嬉しいって思いそうなものだけど。
好きなら。
こういうことの積み重ねで、自分の気持ちが離れてることを確信していくんだな。
たくさん笑ってる所を見たけれど、
笑顔を見ても、キュンともしない。
あぁでも、こういう風に話してたんだなって思い出した。
そうだ、いつもたくさん笑って、色んなことについて話し合ってたね。
その時はきっと好きだったんだろうなぁ。
だから、その時間、すごく幸せだったんだろうな。
もう本当にすっかり、忘れちゃってたけど。
最後にビデオコールしたのって、いつだろう。
多分、2ヶ月くらい前だ。
たったそれだけで、こんなに気持ちが離れちゃうものなんだな。
それくらい嫌な思いしたりガッカリしたんだろうな。。。
彼のこと、理解できないと思ったんだな。
そして、多分
新しい恋をしているんだ、私は。
「仁ちゃん、ずっと笑ってるね」
「メイサちゃんと話してるからね」
キュンともしないはずだけど、笑顔でそう言う仁を可愛いと思った。
まだ私のこと好きなのかな?とよくわからない言葉が浮かんだ。
そもそも好きなはずじゃないの?
多分そんな話するのが久しぶり過ぎて、なんかもう彼の中でも過去だろうって勝手に思ってるのね。
行く行く詐欺も、1週間連絡が来ないことも、その間他の人とは電話していることも、
きっと、信頼関係や恋愛感情がキープされていれば不安要素にならなかったんじゃないかな。
一度もう信頼を失っているから(彼が笑)
何もかも信じられないんだと思うし
好きだと思えなくて許せないんだと思う。
だって
咲人が話したよくわかんない事も
エラそうな話し方や面白くない冗談も
突然送ってきた謎のVTRも(彼は本当に何のためなのかわからない動画を送ってくる笑)
全部含めて、可愛いなと思ってるもん。
愛情って、そういうものなんじゃないの。
ふと、私は仁はどう思ってるんだろうと
本当に不思議な気持ちになった。
「久しぶりに話して、どうですか?」
「楽しいよ」
仁は間髪入れずにニコニコと答えた。
「メイちゃんは?」
私にも言わせたがるのが、そういえば彼らしかった。
そろそろ寝なきゃねと私は言った。
仁はそうだね、と時計を見て、あと3分、と笑った。
仁ちゃん、まだ話したいんだね。
そう思うのは、好きだからだろうな。
「じゃ、何話そっか?」
「メイちゃん話したいこと話して。」
「んー、そうだな。」
ガッツいてると思われるかもしれないけど
ここでこれを言わなかったらわざわざビデオコールした意味がない。
きっと、これをすることで、私は少しずつ答えに向かって行っている。
どんな結末が待っていても、自分の中で、
ハッキリとでも少しずつでも、この恋を終わらせられると思った。
終わらせるために、ハッキリさせたいんだ。
「仁ちゃん、
この街に、来る?」
「んー、そうだね」
と言っておそらく仁はパソコンを触りはじめた。
スケジュールの確認でもしているのかわからないが、
大抵言われたその場で何かを調べ始める。
「チケット取らなきゃ。(予想通り取ってない)来月…」
「来月?」
「来月はもう試験が始まるから…。来週か再来週。
メイちゃんどっちがいい?」
いやその話もうしたやん
と心の中でツッコミながらも、ここは、大事なことは伝えるべきだとハキハキと答えた。
「どっちでもいいけど、早く知りたい」
「わかった。明日の夜までに教える。仕事の後」
わかった、と私は微笑んだ。
仁も微笑んで、こんなことを言った。
「メイちゃんは、いつこっち来る?」
行かねぇよ
とは言えないので、ちょっと笑って見せた。
「そうねー」
「(笑)」
「じゃあそれについては、ここで話そう」
私の提案に、わかった、と仁は笑顔で答えた。
「じゃあメイちゃん、そろそろ」
「うん」
「ありがとう。電話してくれて」
仁は笑顔で続けた。
「たくさん笑った。」
「うん、私も楽しかった。」
「じゃぁ、おやすみ。明日仕事後連絡するね。」
「うん」
バイバイしたあと、私はすぐに眠りについた。
彼が来たならどうすればいいんだろう。
そんなことを考えるだけ無駄なんだろうな。
それでも考えるのは、思い出がそうさせているのかも。
翌日、彼は連絡をよこさなかった。
私から連絡し、連絡するって言ってたよね、と詰めた。
そしてさらに翌日、ようやく返信が来た。
『連絡が遅くなってごめん』
『色々な方法を考えたけど、スケジュール的に、今回もそちらへ行くのを諦めなきゃいけない』
私は
ポチポチポチポチ
『ちなみに色々な方法って何?』
と訊ねた。
ピロリン
『大学を欠席したり、仕事の会議を休んだり……』
その日が、彼と連絡した最後の日でした。
私は何も返信しませんでした。
思うことはあっても、言いたいことはありませんでした。
何故なら、話したいと思うほどの気持ちがなかったのです。
多分、責める術や材料が沢山あったし、私にはその権利があったと思います。
でも、返信しなかったのには理由が二つありまして。
一つは、もう本当に愛想をつかしていたこと。
エネルギー問題ですね。
もう一つは、不安を残したまま音信不通になったら彼が苦しむだろうと思ったからです。
彼は私のことをなめていたと思うけど
ヘタレで自己中だけど
私のことが好きだったし私と共有していた思い出がありましたので
私の方から無視してやったら痛いだろうと思いました。
それはおそらく効いたでしょう。
けれどヘタレな彼が2度と連絡することは出来ないだろうと予想した通り
今日まで一度も連絡はありません。
それでいいのです。
私はようやく平和な心を取り戻りました。
そして
ついに
咲人に会うのです。
続きます。
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