「Hi, long time no see」
と、いつものクソかっこいい声と気取った言い方で咲人は挨拶した。
私も小首を傾げて可愛らしく応戦した。
今日は久しぶりにビデオコールをしている。
すごく稀なことに、2人の休日が合ったのだ。
週に何度も会話しているせいで緊張感はゼロだが、そういえば咲人の顔を見るのはこれがやっと2度目だった。
「今日はちゃんと着てるのね」
「勿論」
「もちろん?誰だったかしら、初めてだってのに日本人の可愛こちゃんと裸でビデオコールしたのは?」
咲人は笑ってそんな奴いるの?とすっとぼけた。
笑うと大きな目が細くなって目尻と目頭にたくさんシワが寄る。
クシャッとできるそれを好きな人は多いと思う。
私はそれも好きだけど、その間の高い鼻も結構好きだ。
それと、その国の人間にしては暗めの色の髪も。
咲人は一般的にはそこまでハンサムじゃない。
でも私のタイプの系統だった。
久しぶりにちゃんと顔見たけど、やっぱそんなカッコよくないなー。
でも好きなんだよね、咲人と話すの。
実際この日の会話はとても楽しかった。
私たちは真面目な話からどうでもいい話までたくさん話し、たくさん笑った。
「…メイサ、君は全然わかってないだろ」
「わ、わかってないけど、わかる必要があるの?」
「それは定かではないが。いいか、普通窓っていうのはこういう風に開くと思ってるだろ」
と言って咲人は手の平を真っ直ぐ立てて見せた。
そしてそれをクネクネと動かしながら
「俺の国の人間はほとんどがこの事を知らない。窓ってのは縦じゃなくて横斜めにも動くんだ」
ブーッ!と私は吹き出し、声に出して爆笑した。
私が散々笑っているのに、咲人は大真面目な顔で話を続けている。
君も知るべきだ、こうすれば変質者は入れない、と熱弁していた。
「ブハハハハ!!!」
「おい聞いてるか」
「聞いてないわよ!(笑)いや、聞いてるけど、あんたのそのアクション…ハハハハハ」
「オッケーわかった。今度うちの窓でgif作って送ってやる」
「(いらねー!笑)わかった、楽しみにしてる。ハハハハハ」
咲人は本当に変わっている。
私は“変わっている人”自体はそんなに嫌いじゃない。
ユニークじゃないけど意地悪な人なんかいっぱいいるから、それよりずっとマシだし。
彼は本当に優しかった。
話題はいつしか、梓の話になった。
「あれからもう一度連絡したわ」
「おう、熱心だな」
「勿論よ。私は彼のこと友達として大好きなの、彼を失えないわ」
「ほうほう。で、どうだった?」
「返事なしよ」
Oh no...と同情の声が上がった。私はシクシクと泣き顔を作って見せた。
「はぁぁぁぁ〜」
「ま、しょうがないな」
「そうだけどぉぉぉ」
あまりに私が凹んでいるので、咲人はこんなことを訊ねた。
「メイサは、今まで男をその……何て言うんだ」
英語が出てこないらしくも又しても手のひらを立ててクネクネ動かした。
笑かさないでくれ。
「振った事はないのか?」
「そら、あるわよ。でも大抵私に寄ってくる男の子はもっとわかりやすいって言うか、直接的って言うか。
情熱的?なんていうの、手が早いって言うか…」
「ほー。」
「だから私が彼らを振った時は、彼らはまだなんでもない関係の人たちだったの。
友達じゃないわ。
でも梓はもっと気遣いがあるし慎重な人だから…彼は私の大切な友達なのよ」
咲人は、そりゃ全然違うな、と頷いた。
窓の話も、梓の話も。
それからお互いの仕事の話も。
私達は本当に色々なことを話した。
できればもっともっと話したかったけど、休みとはいえお互い他の予定もある。
「じゃ、メイサ。そろそろ切ろうか」
咲人にそう言われると、途端に悲しくなってしまった。
もっと話したいし、もっと………
違うことも話したいし
違うことも聞きたい
「………咲人」
私が名前を呼ぶと、咲人もメイサ、と答えた。
なに?と言うと、君が呼んだから答えただけだよと笑った。
ど、どうしよう。
言うの?
えっと、えっと、えぇぇぇぇっとぉぉぉぉぉ
「咲人」
「Yes?」
「わ、わたし」
咲人は目を丸くして待っていた。
「あ、あ、あなたに、あの日本語の文章を言ってもらいたいんだけど……っ」
勇気を出してそう言った私に、咲人は
「うん?サヨナラ?」
(T▼T)
「違うわー!!(号泣)」
「へ?じゃ、何?」
もぉぉぉぉう!!
言ったれ!!
意を決して、私は声高に希望を突き付けた。
「わ、私のこと好きって日本語で言って!!」
咲人は目を見開いた。
続きます。
と、いつものクソかっこいい声と気取った言い方で咲人は挨拶した。
私も小首を傾げて可愛らしく応戦した。
今日は久しぶりにビデオコールをしている。
すごく稀なことに、2人の休日が合ったのだ。
週に何度も会話しているせいで緊張感はゼロだが、そういえば咲人の顔を見るのはこれがやっと2度目だった。
「今日はちゃんと着てるのね」
「勿論」
「もちろん?誰だったかしら、初めてだってのに日本人の可愛こちゃんと裸でビデオコールしたのは?」
咲人は笑ってそんな奴いるの?とすっとぼけた。
笑うと大きな目が細くなって目尻と目頭にたくさんシワが寄る。
クシャッとできるそれを好きな人は多いと思う。
私はそれも好きだけど、その間の高い鼻も結構好きだ。
それと、その国の人間にしては暗めの色の髪も。
咲人は一般的にはそこまでハンサムじゃない。
でも私のタイプの系統だった。
久しぶりにちゃんと顔見たけど、やっぱそんなカッコよくないなー。
でも好きなんだよね、咲人と話すの。
実際この日の会話はとても楽しかった。
私たちは真面目な話からどうでもいい話までたくさん話し、たくさん笑った。
「…メイサ、君は全然わかってないだろ」
「わ、わかってないけど、わかる必要があるの?」
「それは定かではないが。いいか、普通窓っていうのはこういう風に開くと思ってるだろ」
と言って咲人は手の平を真っ直ぐ立てて見せた。
そしてそれをクネクネと動かしながら
「俺の国の人間はほとんどがこの事を知らない。窓ってのは縦じゃなくて横斜めにも動くんだ」
ブーッ!と私は吹き出し、声に出して爆笑した。
私が散々笑っているのに、咲人は大真面目な顔で話を続けている。
君も知るべきだ、こうすれば変質者は入れない、と熱弁していた。
「ブハハハハ!!!」
「おい聞いてるか」
「聞いてないわよ!(笑)いや、聞いてるけど、あんたのそのアクション…ハハハハハ」
「オッケーわかった。今度うちの窓でgif作って送ってやる」
「(いらねー!笑)わかった、楽しみにしてる。ハハハハハ」
咲人は本当に変わっている。
私は“変わっている人”自体はそんなに嫌いじゃない。
ユニークじゃないけど意地悪な人なんかいっぱいいるから、それよりずっとマシだし。
彼は本当に優しかった。
話題はいつしか、梓の話になった。
「あれからもう一度連絡したわ」
「おう、熱心だな」
「勿論よ。私は彼のこと友達として大好きなの、彼を失えないわ」
「ほうほう。で、どうだった?」
「返事なしよ」
Oh no...と同情の声が上がった。私はシクシクと泣き顔を作って見せた。
「はぁぁぁぁ〜」
「ま、しょうがないな」
「そうだけどぉぉぉ」
あまりに私が凹んでいるので、咲人はこんなことを訊ねた。
「メイサは、今まで男をその……何て言うんだ」
英語が出てこないらしくも又しても手のひらを立ててクネクネ動かした。
笑かさないでくれ。
「振った事はないのか?」
「そら、あるわよ。でも大抵私に寄ってくる男の子はもっとわかりやすいって言うか、直接的って言うか。
情熱的?なんていうの、手が早いって言うか…」
「ほー。」
「だから私が彼らを振った時は、彼らはまだなんでもない関係の人たちだったの。
友達じゃないわ。
でも梓はもっと気遣いがあるし慎重な人だから…彼は私の大切な友達なのよ」
咲人は、そりゃ全然違うな、と頷いた。
窓の話も、梓の話も。
それからお互いの仕事の話も。
私達は本当に色々なことを話した。
できればもっともっと話したかったけど、休みとはいえお互い他の予定もある。
「じゃ、メイサ。そろそろ切ろうか」
咲人にそう言われると、途端に悲しくなってしまった。
もっと話したいし、もっと………
違うことも話したいし
違うことも聞きたい
「………咲人」
私が名前を呼ぶと、咲人もメイサ、と答えた。
なに?と言うと、君が呼んだから答えただけだよと笑った。
ど、どうしよう。
言うの?
えっと、えっと、えぇぇぇぇっとぉぉぉぉぉ
「咲人」
「Yes?」
「わ、わたし」
咲人は目を丸くして待っていた。
「あ、あ、あなたに、あの日本語の文章を言ってもらいたいんだけど……っ」
勇気を出してそう言った私に、咲人は
「うん?サヨナラ?」
(T▼T)
「違うわー!!(号泣)」
「へ?じゃ、何?」
もぉぉぉぉう!!
言ったれ!!
意を決して、私は声高に希望を突き付けた。
「わ、私のこと好きって日本語で言って!!」
咲人は目を見開いた。
続きます。