めるつばうのおもうこと

めるつはミーム機械としてばうを目指します。

『猫を抱いて像と泳ぐ』

2009-08-14 13:05:15 | book
小川洋子。
静かな佇まいは変わらないのだけれど、
細かい設定がたくさん出てきて違和感を感じた。
像のインディラのお話はとてもなじんでしまったのだけれど。
大きくなることでそこから出ることが出来ないという不条理。

唇が閉じあわされて生まれたこと。
そこには脛毛が生えること。
身体がある一定のときから成長しないこと。
盤下でしかチェスが打てないこと。

こまごましながらも、尋常で無い設定が続いて出てくると
なんだかぞわぞわしてしまう。
ひとつ、ふたつの尋常ならざる設定があって、それを軸にして
お話がまわるのはいいのだけれど、あまりにたくさん出てくると
身体が拒否反応をはじめてしまう。

しかし、最後の最後でこれらすべての設定が活きてはじめて
つながっていくことを理解してわたしのひっかかりは溶け出した。
一切を語らない。でもチェスの棋譜は宇宙のすべてを現している。
その人、性格、姿かたちまでをも現す。
その軌跡は素粒子の動きもあらわすのだろう。
そこへ到達するためには語ることの無いチェス指し。人形という設定。
唇が閉じあわされていること。盤下。そういった記号が収斂してくる。

幼いころ兄とチェスをやったことがある。お互いよくルールもわからず、
こうかな?ああかな?といって本をひも解いていた。
わたしはとても負けず嫌いだったらしく、負けると泣いたことを覚えている。
そう考えるとわたしの性格も棋譜に表現できたのだろうか?

彼の本名はとうとう出ずじまい。そして幻の棋譜だけがのこる。


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