【週刊ゲーム市場分析】PS VITAはなぜ苦戦しているのか?

2012年01月07日 | 団長は断腸の思い
ゲームソフトの週間販売本数からゲーム市場を分析する記事の第35回。

コンシューマソフト週間販売ランキングTop20(4gamer.net/メディアクリエイト調べ)
※上記の週間販売本数以外のデータ(前作データ等)はすべてゲームデータ博物館様(ファミ通データ)より転載。


■発売から3週が経過したPS VITA、本当に苦戦しているのか?

今回は上位に新作のランクインもないので、苦戦していると言われるPS VITAに注目してみた。
そもそも本当に苦戦しているのか、改めてデータを眺めてみた。



PS VITAは3週目までに44.5万台を販売。発売直後に品薄が続いたPSPの推移を上回っているが
3DSの65%の推移となっている。

前世代機のPSPの累計販売台数はDSの56%なので、後継機のPS VITAの初期需要としては妥当なんだけど
発売3週目の販売台数は、商戦期にも関わらず3DSの発売3週目の半分以下にまで落ちており、
苦戦していると言わざるを得ない状況だろう。


■PS VITAが苦戦している理由は?

ではPS VITAはなぜ苦戦しているのか、仮説を立てて検証してみよう。

<仮説1>PSPがまだ売れている(強い)から。

PSPは、2011年12月4週と2012年1月1週(PS VITAの発売2週目と3週目)の週販でPS VITAを上回っている。
このことから、PS VITAの代わりにPSPが選ばれている、という仮説が立てられる。

しかし、今ごろになって新規にPSPを購入するユーザーは、ハードの価格やソフトのラインナップ等を考慮し
手頃な価格で豊富なソフトを遊べることに魅力を感じて購入しているのではなかろうか。
そういったユーザーが、携帯ゲーム機の割に高価で、ソフトも少ないPS VITAを選ぶことはないだろう。

既存のユーザーが旧型のハードを買い替える際、互換が貧弱なPS VITAの購入を見送るケースは
ありそうだが、それは後述の「PSPとの互換が弱く~」に含めた。

結論:理由としては弱い。


<仮説2>PSPを購入してからまだ日が浅いユーザーが多く、後継機の購入に抵抗があるから。

ここでDSとPSPの年間販売台数推移を見てみよう。



DSの販売ピークは2006年から2007年頃であり、購入からすでに4~5年が経過しているユーザーが多いのに対し
PSPは購入からまだ2~3年しか経過していないユーザーの割合が高く、後継機の購入に抵抗が
あるのかもしれない。これがPS VITAの発売が遅れた(遅らせた)理由でもありそうだ。

結論:そこそこありそう。


<仮説3>PSPとの互換が弱く、PSPユーザーの支持を得られていないから。

PS VITAはUMDを使えない。UMDパスポートというサービスがあるが、以前の調査では
PSPソフトの販売本数TOP50のうち、UMDパスポート対応タイトルは、販売本数ベースでわずか5%しかない。

始めからUMDではなく、ダウンロード版を購入しているユーザーもある程度いそうだが
ダウンロード版のシェアはUMDと同時発売のケースでも5%程度と言われている。
つまり、今のところ大半のPSPユーザーは、PS VITAとの互換の恩恵を受けることはできない。

これはPSPがまだ強いからというよりは、既存のPSPユーザーの支持を得られていない、ということ。

結論:かなりありそう。


<仮説4>3DSにユーザーを奪われている。

DSが3000万台以上売れながらPSPが1800万台以上の販売実績となったのは、ユーザーの棲み分けが
出来ていたからと言われている。しかしPS VITA発売の1週前に、PSPの看板だったモンハンシリーズ最新作が
3DSで発売され、ハードを大きく牽引したという事実はPS VITAにとって非常に大きなマイナスだろう。

つまり、DSとPSPでできていた棲み分けが、3DSとPS VITAではできずに
完全な競合製品となるかもしれないということ。
実際、自分の周辺にも、モンハンが出たのでPS VITAではなく、とりあえず3DSを買ったという人は多い。

結論:非常にありそう。


実際は、携帯ゲーム機の割に価格が高いこと、ソフトラインナップがまだ貧弱なこと、がツートップなんだろうけど
3DSの発売直後も同様であり、また、この二つが揃えばハードが売れるのは当たり前である。
ここでは、それ以外の理由として考えてみた。

そして、価格を下げたり、ソフトラインナップを充実させるのは、すぐにできることではない。
いまPS VITAができることは、仮説3のUMDパスポートの拡充くらいだろうか。


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