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ガンガンガンガン!
看守「76番!76番!いつまで寝ている!!」
扉を叩く音で起こされる。どうやらいつもより寝過ごしてしまったようだ。
まあ無理もない。昨日は緊張しててんで眠れず、まさに寝不足だ。
ガチャ
看守が部屋に入ってくる。
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看守「面接の時間だ。ついてきなさい」
この人は僕が入所した時からお世話になっている看守。
実に12年ものつきあいだ。名前は・・思い出せない。
薄暗い建物の中での生活は、日々の経過を感じられる機会が少ない。
皮肉なことに、日頃見慣れた人の年を取った姿が最も経年を感じさせられる。
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普段は決して帽子を取らないが、頭髪がすっかり後退してしまったことは
もちろんみんな気付いているが、誰一人そのことは触れない。
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長い廊下を無言で、後ろを歩いていく看守とナナロー。
76番「あの・・・看守さんって、【モンスターハンター】って知ってます?」
看守「談話室以外は私語厳禁だ。それ位知っているだろう」
76番「す、すいません!!」
申し訳なさそうに謝るナナロー。
看守「・・・・まあいい、で、モンスターハンターがなんだって?」
76番「え?あ、はい!僕、ここに来る前、「モンスターハンターフロンティアっていうゲームに夢中で・・・」
早口で話しはじめるナナロー。
76番「ま、まあ僕は上手くないほうだったんで、後ろで狩猟笛ばかり使ってたなー・・はは・・」
会話がたどたどしいが、狭い空間に閉じ込められていたせいか、語りたいという気持ちは妙に伝わってくる。
76番「それと、時々ゲーム中にね〇ち・・というかプレイ中に寝てしまうこともあって、皆に迷惑かけてしまってたかなー・・なんて」
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ぱたっ。
看守の足が止まる。
看守「プレイヤーの名前は何だった?」
76番「え?」
看守「そのゲームのキャラクター、なんて名前にしてた!?」
ちょっと強張った声で看守が質問してくる。
76番「え、えー・・自分と同じ名前ですけど・・?」
看守「!!」
妙に驚いているような感じだが、後ろ姿なのでよくわからない。
看守「・・・・そうか」
看守は何事も無かったかのように、再び歩き始める。
看守「時々どころじゃ・・・ねえだろ!」(ぼそっ)
ナナロー「?」
看守が何かを言ったような気がしたが、声が小さくて聞き取れなかった。
長い廊下を越え、面談室に到着する。
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テーブル越しに看守と向き合い、椅子に座る。
看守「さて、今年で6回目だったかな・・・仮釈放がかかった面談は」
ナナロー「そうですね・・・やっぱり僕には向いてなかったんですかね・・・」
看守「・・・・どうやらそうでもなさそうだぞ?」
ナナロー「・・・?」
看守「フ・・・その前に、このままでというわけにはいかないな」
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そう言うと看守は帽子脱ぐ。見事なまでのスキンヘッドだ。
看守「76番、いやナナロー、よく頑張ったな・・・」
そう言うと、1枚の紙をスッと取り出す。
看守「オツ・キャメリー。釈放だ」
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