2015年度のEU難民申請数統計がユーロスタットから発表されました。こちらからその統計が見られますが、国ごとにクリックしないといけないので少々面倒かも知れません。
この統計はあくまでも「申請数」しかカウントされていません。申請数は申請のための順番待ちがありますので、当然入国者数より少なくなります。また審査の結果認可される人数はもっと少なくなります。ドイツの統計は拙ブログ「ドイツ:2015年度難民申請&認定数統計」ですでにご紹介いたしましたが、それを見ると、入国者数約110万人に対して申請数は441,899件、難民申請手続きが終了したのは282,726件で、うち難民(準)認定されたのは140,915件で、認定率は49.8%となっています。ドイツ以外の詳しい統計は見ていないので一概には言えませんが、「申請数」というのがどういう数字であるのかはドイツの統計でおおよそ掴めるかと思います。
以下はユーロスタットから数字を採って、人口100万人当たりの難民申請数の多い順に並べ替えたものです。
Country | Total | per Million Inhabitants | Share in EU28 Total |
Hungary | 174,435 | 17,699 | 13.89% |
Sweden | 156,110 | 16,016 | 12.43% |
Austria | 85,505 | 9,970 | 6.81% |
Finland | 32,150 | 5,876 | 2.56% |
Germany | 441,880 | 5,441 | 35.19% |
Luxembourg | 2,360 | 4,192 | 0.19% |
Malta | 1,695 | 3,948 | 0.13% |
Denmark | 20,825 | 3,680 | 1.66% |
Belgium | 38,990 | 3,463 | 3.10% |
Bulgaria | 20,165 | 2,800 | 1.61% |
Netherland | 43,035 | 2,546 | 3.43% |
Cyprus | 2,105 | 2,485 | 0.17% |
Italy | 83,245 | 1,369 | 6.63% |
France | 70,570 | 1,063 | 5.62% |
Greece | 11,370 | 1,047 | 0.91% |
Ireland | 3,270 | 706 | 0.26% |
United Kingdom | 38,370 | 591 | 3.06% |
Spain | 14,600 | 314 | 1.16% |
Poland | 10,255 | 270 | 0.82% |
Estonia | 225 | 171 | 0.02% |
Latvia | 330 | 166 |
0.03% |
Slovenia | 260 | 126 | 0.02% |
Czech Republic | 1,235 | 117 | 0.10% |
Lithuania | 275 | 94 | 0.02% |
Portugal | 830 | 80 | 0.07% |
Romania | 1,225 | 62 | 0.10% |
Slovakia | 270 | 50 | 0.02% |
Croatia | 140 | 33 | 0.01% |
1,255,640 | 2,470 | 100% |
絶対数ではドイツがダントツ一位(35.19%)ですが、人口比で見ると、意外かもしれませんが、バルカンルートで真っ先に国境封鎖に踏み切ったハンガリーが100万に当たり17,699人でトップを占めています。2位のスウェーデンは100万人当たり16,016人で、3位のオーストリアを大きく引き離しています。ドイツは100万人当たり5,441人で、5位です。ということは、ドイツではまだ難民を受け入れる余力があることになります。実際、バルカンルートが閉鎖されて以降、一日約100人くらいの難民がドイツに入国しているようですが、ドイツ東部などではせっかく借り受けた臨時収容所ががら空きで、収容された難民数よりも施設の従業員数の方が多いところが出てきています。ベルリンなどの大都市では依然キャパシティ一杯の難民がいるようですが、都市部でなければ、住民感情を無視すればまだまだ余裕がありそうです。
先日発効となったEU・トルコ難民協定ですが、トルコに追い返されるリスクも顧みず、難民たちは昨日・今日と変わらず大量にレスボス島に流入しています。レスボス島にできたEUの難民収容センター(ホットスポット)は牢獄のようです。難民たちは簡易難民申請審査手続きが終了するまでそこから出ることはできません。審査の結果、不認可となった人たちはトルコに4月4日から送還されることになっています。トルコからは既に8人の役人が観察官としてレスボス島のホットスポット入りしたとのことですが、簡易審査手続きのための人員や通訳などはまだEUから派遣されていません。EU・トルコ難民協定の実務レベルでのスタートは困難なものとなりそうです。
(c)Zoran Dobric