詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

館内に響く声

2015年02月21日 | 
どこかで人の話す声が響き
反響は館内の広がりを存分に試して
それ以外の静けさを際立たせている
踊り場を照らす照明と
階段の折れ曲がった手すりの影が
自分が死んでいることに気付かない亡霊のように
じっと聞き耳を立てている

声は抑揚も二人の性格の違いも知らせるのに
内容は響きに包んでもらさない
大事なのは言葉じゃない
残響が耳元でささやく
そうかしら?
つぶやきもすぐに響きとなって
他の記憶を追いかける

鞠のように跳ねる子どもの声
きっと幼い兄達の
階下からはテナーの優しく響く父の声
ソプラノを低く抑えた母の声
横に長く伸び
土地の起伏に合わせて
上がったり下がったりする
施設の人となにやら話をしている
あたりは木の葉のさざめきを乗せた風の吹く白樺林

響きは館内をあちこち寄り道したあとで
柔らかい土に飛び出していく
大切な思い出のように落ちている
木漏れ日に憧れて
太陽の光と同時に
みんながいっせいに振り返るので
急に弱々しくなり消えてしまう

閉じ込められてこその命だったのか
声が死ぬと意識が戻ってくる
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