詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

街の片隅で

2015年04月01日 | 
ジンジャーエールの金色の泡が
行儀良くまっすぐにあがってきて
表面で直角に曲がり
コップのふちに向かって
流れて消える

たくさんの泡たちの戯れ
ストローで吸い込むと氷が動き
フォーメーションが変わって
また新しい演技が始まる

今日の空は特別。
もう桜の木は満開。
畑や庭など
草の生えているところにはどこでも
色とりどりの花が咲いているけれど
この大きな窓の向こうに見える景色の中には
シルエットのくっきりとした木が一本
生えているばかり

小さなノートを取り出して
続きを書く
道を入ると突き当たりに工場(こうば)があって
そこで私は……
そこで私は……

そこで私は思い出しそうになる
トタンの工場は
光を黄色く古びさせて
舞っている埃と同じくらい
時を巻き戻す

誰もいない静まり返った
がらくたのような機械の間に
汗まみれの男が帰ってくる
黒く汚れた指で
ボルトやナットをいじっている

金属片に注ぎ続けた
その熱くとがったまなざしを
もらった人はついになく
男の魂は埃と一緒にひっそりと沈んでいく
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