みかん
2024年01月11日 | 詩
部屋を流れる朝の光の川
その中洲にたたずんで
みかんの皮をむく
皮にくっついた薄皮がむけ果肉があらわれる
まだむかれていないほうの丸い皮の外側に
橙色を消さない透明なしずくがひと粒
こんなつるりとした肌の内側に
こんな涙をためていたなんてとあらわれる明かり
その汁を味わいたいと手にとったみかん
偶然の重なる傾きではじめて見えること
そのときわたしは時間と光のプールを泳いでいた
目はいつも開いている
ただまぶたが
すべてを見ないですむために蓋をしているだけ
ひとみの丸みにやさしく沿うように
涙で覆われている地球
その丸みにやさしく沿って
こぼれ落ちずずっと湛えてられているしずく
いつもうるおっている
無数の情報のプールに浸る
そのうるおい
閉じられることのないまぶた
代わりに夜がゆっくりひと回りする
外側にしかいられないわたしたち
いっしょにいたくて
こぼれるときもその丸みに沿って流れる
瞬きはやさしく
小鳥のまつげのように繊細に
ときどき感じてほしくて
あなたの手の甲にまつげを沿わせる
主に夜
新しい感覚が眠り
親しい感覚がそっと目覚めるじかん
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