詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

洋梨を多面体にしていく手

2017年10月06日 | 
ステンレスが鈍く冷たい光を放つキッチンで
黄緑色のボールからすくいあげる
壁をはう蜘蛛のように指を動かし
地球のように軸を斜めに傾けて
気付けばいつも一周まわしている
洋梨はなめらかでいびつ
昨夜の夢のように

ナイフの刃をあて
うすく皮を剥いていく
体に傷をつけないよう
小さな息をすべりこませて

隣室で遠い記憶の人が
衣を脱いでいる音を
聞いているような気がする
そんな話を聞いたような気がする
シンクに衣が落ちた

月が落ちた
いま手元にある
いびつなかたちになって
レースのカーテンを幸福にした朝の光が
いまここに遅れて届き
ずしりと噛むとうれしい果実になった

左手にしっくりと
風景にかなう曲線の
芯を中心に抱く白いデッサン
いびつなかたちに沿おうとたどった影が
繊細な角度で面を接する多面体
ふたつに割るとぽろり
茶色のなみだをこぼした

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