詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

夜と朝の境に流れていく体

2016年10月18日 | 
それぞれの街角の金木犀が
めいめいのおさな心を
ほろほろ道にこぼしていく頃
昼間のこもったような熱は
シフォンのショールのように
軽やかに夜空へと舞いあがり
窓を開けていると
電気の消えた部屋の中で
ふくらんだりしぼんだり
カーテンがひとり
深呼吸を繰り返している

透き通った小さな鈴たちの震え
敷居を越え部屋へ入ってくる
暗い道を歩き
家、家、の明かりが並んでいるのを
順番に見つけていくような音
草がなびくと
音のさざなみが皺を寄せ
地面はここと同じ高さになる

布団に手足を投げ出して
二つの矢印のように横たわっていると
浅瀬にうちあげられた体のように
波紋が背中を撫でていく
昼間の情景があらわれては
ゆるんでいく

煙草の匂い
ベランダからゆうらり訪ねてくる
隣家のひとの物憂い表情
浮かびあがってくる
小さな埠頭に立ち
夜ごと出帆を見送っている

打明け話を聞いているうち
体はいつしか
誰かと誰かの誕生日の継ぎ目をまたいで運ばれ
明日の岸へとうちあげられている

うっすらと意識が覚えるのは
体全体が目を閉じたまぶたになって
明るさを計っている感触
ひんやりと灰色に滲んだ空気
夢とうつつの波間が窓の外から
打ち寄せてはひいていく

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