ほのかにあかく流れていく時間を
日々惜しむことはできるでしょうか
空へ時間へ挑むようにそびえる建物も
冬に向かって早くなっていく一日を
引き延ばそうとがんばっている
わたしはあきらめに似た気持ちで
憧れている
毎日
読むこと、書くこと
特に、読むこと
平らなわたし
無力な人で
感じることしかできない
グラスに残った氷が溶けていく
そこから漏れだした液体を少しずつ飲む
音楽のように
流れるそれを急いで
味わってしまうことはできないの
わたしの読むことにかかる時間は
社会の回り続ける速さに
うまく噛み合わないけれど
わたしはそれで百年二百年を少しのことのように
一日や一瞬をとてもとても長く
光のように旅することを知った
冷たくてあたたかくて
どんなに急いでいても
ひとの時間は変わらない
同じ太い光の柱で
生まれてから死ぬまで焦らずに
触れることのできるもの
たくさんの紙のやわらかさ
どれほどの円を描いたことか
読みきれない文字が少しだけ広げる
樹皮のような
わたしの感受性で
伸びたり縮んだりしながら
愛することを誓います
***
早稲田祭2023
作家堀江敏幸氏によるご講演
「本を読むこと、書くこと」を聴講して
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