4月18日の日本経済新聞は、「迫る債権取り崩し国 経済若返りへ覚悟問う」とする記事において、「20年ぶりの円安が進むなかで、日本経済が急速に老け込んでいる」と厳しく指摘しています。(2022/4/18[円安再考(下)])
資源高で貿易赤字が続く現在の日本は、海外からの利子や配当で貿易赤字を賄って経常黒字を保つ「成熟した債権国」に変貌したと考えられている。しかし、今後さらに貿易赤字が膨らみ経常赤字となれば、最終段階の「債権取り崩し国」に至るというのが、記事の懸念するところです。
産業構造の転換が進まず、老化が加速している日本経済。老化は、さらなる円安圧力を招くリスクもはらんでいると記事はしています。
リーマン・ショック後の円安期において、日本経済の信認を裏打ちしたのは、長期の経常黒字で積み上げた世界最大の対外純資産だった。しかし、デフレ下の長期停滞にあえぐ間にドイツに肉薄され、さらに今回のウクライナ危機の下で「有事の円買い」は過去のものになりつつあるということです。
これから先、日本は海外投資からの収益に頼る超高齢国家への道を歩むのか。それとも(痛みを伴う)経済の若返りを目指すのか。
「英国病」と呼ばれ、1980年代に「債権取り崩し国」になったとされるイギリス。経常赤字拡大の歯止めとなったのは金融サービス事業による手数料収入で、サッチャー政権下の規制緩和で金融立国として活力を取り戻したと記事はしています。
日本でも、国際金融都市構想が胎動し始めている。さらに、再びインバウンドに活路を求める道もあるというのが記事の認識です。
50年前の第1次オイルショックは、産業界の努力で日本のエネルギー効率が急速に高まる転機となったと記事は言います。一方、足元のウクライナ危機は世界の省エネ需要を高めるとみられており、今の日本もこれを好機として生かす道を歩まなければならないということです。
さて、このような状況の下、日本経済は、反転攻勢、立ち直りの道を進めるだけの気力・体力と、それを発揮できる態勢を持ち合わせているのか。
8月18日の日本経済新聞の投稿コラム「私見卓見」では、コーストホテル社長の小茂田勝政氏が「変革の躍動感に欠ける日本」と題する一文を掲載し、(米国で活動する経済人の視点から)現在の日本の状況を俯瞰しています。
米国から日本を見ていると、このままで日本は大丈夫だろうかと(思わず)考え込んでしまう。まず言えることは、日本には変革に向けた「躍動感」というものが感じられないと、小茂田氏はこのコラムの冒頭に記しています。
日本では、金利が年0.001%の銀行預金通帳を印鑑と一緒に大切に保管して、預金残高を確認しながら人生100年の道のりに備えている人が多いように見えると氏は言います。
一方、米国では、老後に向けて色々な組み合わせの年金投資ファンドが用意されていて、株式市場が大幅に下落しても元本はそのままで毎年5%程度のリターンを得られるものもある。米国の相続税に相当する遺産税の基礎控除は1170万ドル(2021年、15億円超)もあり、日本の相続税の基礎控除とは比較にならないということです。
米国人は失敗を繰り返しながらも、高齢になっても「攻める」ことをやめず、経済は成長を続けていると氏はしています。
これに対し、日本はただひたすら「今あるもの」を守っているに過ぎない。そして、その結果、近いうちに先進国から脱落しそうだというのが、このコラムにおける氏の認識です。
そうならないためには、全く新しい発想で社会に活力を与え、ダイナミックな成長をもたらす仕組みづくりが必要だというのが氏の指摘するところです。
例えば、個人が環境問題などSDGsに寄与する事業に投資した場合、それを非課税で孫に相続させられたり、社会的に有効活用できる不動産を自治体などに30~50年貸し付けたら、返却時には非課税で子孫に相続させられたりできないか。
親から相続した不動産なども、いま自分が必要としなければいったん社会に預け、地域社会が必要とする施設を作り社会の利便性を高めるといった仕組みをつくれないか。
相続税に悩む不動産所有者と社会のニーズをうまく組み合わせ、眠っている資産を大胆に動かし、経済が循環する仕組みを考えればいい。少し発想を変えるだけで、米国とは違った日本らしい成長戦略を生み出せるはずだと、氏はこのコラムで提案しています。
氏も指摘するように、個々が持つ資産を少しずつ取り崩したり削り取っていったりするだけでは、確かに先は見えています。一定の目的の下に資産をとりまとめ、次の投資に向かわせる道筋さえ示せれば、世の中は変わっていくかもしれません。
長期的に目指す社会を描き、それに向けて眠っていた資産が動き出すような仕組みをつくれば、経済が活性化して社会に躍動感も生まれる。そう考えるこのコラムにおける小茂田氏の指摘を、私も興味深く読んだところでます
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