MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2161 日本はうまくやったのか

2022年05月20日 | 日記・エッセイ・コラム

「世界で新型コロナウイルスの影響で亡くなった人は、実は(各国の集計数の)3倍も多かった」と、5月7日の「テレ朝news」が報じています。

 2020年と2021年の2年間に、新型コロナへの感染による死者として世界で報告されたのは約540万人。一方、WHO(世界保健機関)が5月5日に発表したレポートによれば、同じ期間に(世界で)直接的または間接的にコロナの影響によって亡くなった人は、実に1490万人にのぼるとみられるということです。

 実際には新型コロナの影響で、例年の2.8倍の人がコロナの影響で亡くなっていたということ。これは「超過死亡」として、実際に亡くなった人の数と、過去のデータをもとにコロナがなかった場合に予想される死者数との差で計算されたものだとされています。

 この数字を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれでしょう。しかし、社会生活における精神的・経済的なダメージも含め、新型コロナの感染拡大が人類史に残した爪痕は、やはり(それなりに)大きかったことがデータからは見て取れます。

 一方、WHOはこうした「隠れたコロナ死」について、コロナの感染拡大で医療体制がひっ迫したため、ほかの病気の予防や治療に影響が出たことを一因と見ているようです。

 勿論その中には、コロナと診断されないまま亡くなった人たちも含まれていると考えられます。各国の超過死亡数を見てみると、インドは474万人、アメリカは93万人、ブラジルは68万人、ドイツは19万人などとなっており、先進国でも意外に多いことが判ります。

 では、わが日本の状況はどうだったのか。この期間中、超過死亡が最も多かった月はちょうど1年前、2021年の5月で5081人だったとされています。この期間は東京や大阪で緊急事態宣言が出されていました。医療機関がひっ迫し、新規の感染者が急増し、高齢者などが適切な医療を受けられずに亡くなっていた時期に重なります。

 ただし、日本の場合、期間全体(2020年~2021年の2年間)を通してみると、死者数は(例年に比べ)1万9471人のマイナスとなっています。マイナスというのは、予想されたよりも実際の死者が少なかったということ。粗く言えば、日本ではコロナの感染拡大の結果、通常の年よりも死者が減ったということです。

 なぜ、そういう結果になったのか。WHOはその要因として、コロナ対策として強化された衛生対策が、コロナ以外の病気による死を防いだことを挙げていると記事はしています。

 WHOは、日本の人々が、ソーシャルディスタンス、マスク着用、手指の消毒などの感染対策を講じたことによって、そのほかの感染症が抑えられた可能性を示唆している。実際、日本ではインフルエンザ患者の顕著な減少が見られており、国立感染症研究所によると、2020-2021シーズンのインフルエンザの受診者の推計値は1.4万人で、前シーズン(728.9万人)、前々シーズン(1200.5万人)に比べ大きく減少しているということです。

 また、記事によれば、「ステイホーム」の掛け声の下、社会活動が抑えられたことなどで、交通事故やその他の事故、犯罪などによる死者数も大きく減っているということです。警察庁によると、交通事故死だけをとってもコロナ前の2019年は3215人だったものが、2021年には2636人にまで減少し、これまでの最低記録を更新したとされています。

 しかし、だからといって、日本ではコロナの影響が「なかった」というわけではなさそうです。厚労省は、日本では昨年末までに(高齢者を中心に)1万8000人以上が新型コロナに罹患したことで亡くなったと見ています。中でも60歳以上では、2021年の超過死亡は男女ともプラスになっていて、コロナが高齢者に大きな影響をもたらしたことがわかると記事はしています。

 さて、色々と数字を比べてみましたが、もとより日本における新型コロナによる死亡者数の統計は、亡くなった時にコロナに感染していたかどうかで判断されるため、老衰や基礎疾患の影響は加味されていません。つまり、例えコロナに感染していなくても亡くなっていた(はずの)人も、その中には含まれているというのが実態です。

 そう考えれば日本のコロナ対策は、(確かに高齢者には厳しかったとしても)全体的に見ればそんなに非難されるべきものではなかったというのが、客観的な評価と言ってよいのかもしれません。

 少なくともこの2年間のコロナ禍が、世界中の人たちに健康や環境、人命の大切さなどの基本的な価値を改めて思い出させてくれたのは紛れもない事実でしょう。総括するのはまだ早いとは思いますが、そうした意味で日本の厳しいコロナ対策は、(経済面での批判の声が一部にあったとしても)「命を守る」という視点では一定の良い影響もあったのではないかと考える記事の指摘を、私も「さもありなん」と受け止めたところです。

 



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