MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2389 消費税は公平か?

2023年04月01日 | 社会・経済

 ARINA株式会社が運営する情報サイト「mellow」が、昨年12月に日本全国の18歳以上を対象に行った「最も負担に感じている税金はなに?」とのアンケート調査の結果、ダントツの1位となったのは(やっぱり)『消費税』で、回答者の39パーセントがその名を挙げているということです。

 日本で消費税が導入されたのは、今を去ること34年前の1989年。気が付けば消費税なんていうものがなかった時代を覚えている人も、次第に少数派になり始めているようです。

 この間、当初3%であった税率は紆余曲折を経て10%まで引き上げられ、(特に)少子高齢化の進展によって膨らむ社会保障費の(景気に大きく左右されない)安定財源として重要な役割を果たしているとされています。

 とはいえ、国民の懐に直結しているだけに(政局のたびに)何かとやり玉にあがることの多いこの消費税については、昨今ではインボイス制の導入や防衛力増強のための税率引き上げなどの様々な議論の中で、その功罪についての意見を目にする機会も増えてきました。

 経済を左右する消費者の消費意欲や、選挙の動向にも大きく影響すると言われる消費税。2月10日の総合情報サイト「文春オンライン」が、『消費税を社会保障財源にしてはいけない“納得の理由”』と題する記事において、経済アナリストの森永卓郎氏の近著『増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学』(角川新書)の一部を紹介しているので、その内容を小欄にも残しておきたいと思います。

 すでに消費税の税率アップは、政府の俎上に載せられている。そして、消費増税で増えた税収のかなりの部分は、法人税の減税に回っていると森永氏は話しています。この点について、2022年6月19日のNHK『日曜討論』で自民党の高市早苗政調会長(当時)は「消費税は法律で社会保障に使途が限定されている」と否定した。しかし、お金に色はついていないし社会保障費は最大の歳出項目だから、いくら消費税が充てられていると強弁しても表面上は矛盾しないとことです。

 「金持ちと大企業の減税」と「庶民と中小企業の増税」は常にセットで実施されてきた。それが小泉純一郎政権以来ずっと続いてきていると氏は言います。それをやめれば庶民の負担増はなくなるのだが、増税派議員はいつも「消費税は全額社会保障の財源になっている」として議論を進めようとしないということです。

 2022年7月に行われた参議院選挙では、れいわ新選組の山本太郎代表が消費税の廃止を打ち出していた。しかし、党首討論などでそれを訴えると、他の党の党首は鼻で笑うような反応を見せ、山本代表を馬鹿にするような空気を醸し出していたと森永氏は振り返ります。

 しかし、私はその時、山本代表の主張する経済理論は非常にまともだと思ったと氏はこの論考に綴っています。彼の理論は、経済学者で立命館大学教授の松尾匡さんがサポートしている。間違ったことなど言っていないというのが氏の見解です。

 私は、そもそも「消費税を社会保障財源にしてはいけない」と考えている。第1の理由は、社会保障負担を消費者だけが負担することになるからだと、氏はこの著書に綴っています。

 厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料は労使折半、つまり、企業も半分を負担している。ところが、高齢化で苦しいからみんなで協力して支え合いましょうという時に、消費者だけに(社会保障の)すべてを押し付ける形になっていると氏はしています。

 言い方を変えれば、つまりそれが消費税を社会保障財源にすることの本当の意味だということ。自分たちにはなんの負担もなくなるわけだから、企業にとってこれほど都合のいいことはないというのが氏の見解です。

 次に、第2の理由は「消費税の逆進性」だと、氏はこの著書で指摘しています。低所得者層ほど収入に対する税負担率は高くなる。低所得者の場合、収入の8割程度を消費に回しているから、8割に消費税がかかる。一方、富裕層は収入の3~4割しか消費に回していないので、それだけ税負担率は低くなると氏は言います。消費税率が同じ10%でも、低所得者は8割×10%で実質8%だが、富裕層は3割×10%で実質3%にしかならない。そこには、とてつもない不平等が存在しているということです。

 そしてそれどころか、富裕層は消費税を1円も支払わずに暮らすことも可能だと氏は話しています。よく聞くのは、「消費税は誰でも買い物したときに支払うから平等だ」との主張。しかし、現実にはそんなことはない。少なくとも私の知っている富裕層で、消費税を自ら負担している人はほとんどいないというのが氏の認識です。

 なぜかと言えば、富裕層の多くは自分の会社を持っているから。実際、彼らの暮らしは、大部分が会社の経費で賄われている。例えば、庶民は自分のお金で車を買うが、富裕層は会社に車を買わせているため、車に課されている消費税は仕入れ控除の形で申告の際に戻ってくると氏はしています。

 車の保険料、ガソリン代、車検代も同じこと。ありとあらゆる付帯経費も全部会社で経費に計上しているので、消費税は実質的に1円もかかっていないということです。

 サラリーマンには想像がつかないかもしれないが、彼らの身の回りの費用は、すべて会社の経費から支出されている。それだけではない。都心の外資系ホテルも同じこと。普通の人がお金を支払ってホテルに泊まっていると思うかもしれないが、実は常に数割は法人に貸し出しされており、借りている企業は、ホテルの部屋を執務室代わり、会社以外の仕事場として使っていると氏は説明しています。

 そこで、食べ物や飲み物をケータリングしたり、衣類をクリーニングに出したりして、身の回りの費用はすべて会社の経費から支出。銀座のクラブもスポーツジムも会社の経費で、自分で財布を開くことなどほとんどなく、これが富裕層は消費税など1円も支払っていないという理由だということです。

 結局のところ、「消費税は皆に平等にかかる税」などと説明され、実態を知らずに「一番馬鹿を見ているのが庶民だ」ということに気が付かなければ状況は改善されない。私自身は、「社会保障をみんなで支えようと言っているにもかかわらず、一番お金を持っている人がビタ一文負担しない仕組みが消費税を社会保障財源にすることだ」と理解していると話す氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。

 



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