12月12日の総合経済サイト「東洋経済ONLINE」に、経済評論家の鈴木貴博氏が「日本人は急速な人口減の深刻さをわかっていない」と題する論考を寄稿しています。
11月30日に総務省から発表された2020年国勢調査の確定値。(氏によれば)NHKの報道のタイトルは『日本の総人口減少続く 5年前より94万人余減少』というものだったということです。
全国紙の見出しも、(申し合わせたように)全て「5年で94万人減」で統一されていた。このことから、今回の報道に「思っていたよりも小幅だな」と感じた人も多かったのではないかと氏はこの論考に綴っています。
2008年に日本の人口が減少に転じた後、5年で94万人とは減少ペースがずいぶんと遅く感じられる。しかし、総務省の発表を読んでみて、数字のからくりと実態がよく分かったと氏は言います。
それは、
①日本人の人口は、5年間で実は倍近い178万人減少している
②外国人人口がこの5年間で84万人増えている
③その差し引きで日本の総人口が94万人減少と報道されている
ということ。
ちょうど10年前、2011年に総務省が発表した資料では、(その時点で)予測されていた2030年の日本の総人口は1億1520万人。2020年の人口と比較すれば、これからの10年間で1100万人も減少する予測となっていると氏はしています。
実際、日本の人口は、いったん減少に転じた後は放物線を描くように乗数的に減っていくことが予測されている。とりあえずここまでの5年間が178万人減だったとしても、徐々に加速がついて減少幅が大きくなり、ここからの10年で1100万人減少というペースで減っていく可能性が高いということです。
昨年の後半、テレビの世界では(リメイクされた)「日本沈没」というドラマが話題になりましたが、日本の人口はこのままいけばそう遠くない将来に半減し、さらにその先には「日本消滅」を迎える日が来る可能性だって、ないわけではないでしょう。
さて、日本の人口をめぐるこうした未来予測に対し、コラムニストでマーケティングディレクターの荒川和久氏が12月21日のYahoo news(「日本の人口は6000万人へ。まもなくやってくる「多死時代」の幕開け」2021.12.21)に、「日本の人口減少に対して「恐ろしい未来」だの「未曾有の危機」だのと仰々しい枕詞をつけて、ことさら危機感を煽るような論説が目立つが、今必要なのは、恐れることではなく、正確なファクトを知ることである。」と綴っています。
結論からいえば、2100年には日本の人口が現在の約半分、6000万人程度になることはおそらく避けられない。これは、国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口(平成29年推計)報告書」の出生中位推計にもあるとおりで、ちょうど1925年(大正14年)の人口5974万人に戻るということです。
勘違いをしている人もいるようだが、人口減少は少子化によってのみ引き起こされるわけではない。人口減少とは、死亡数が出生数を上回る自然減によって生じると氏はここで説明しています。
日本は世界1位の高齢化率で、長寿の国。なぜそうなったかというと、1951年から2011年まで60年間にもわたって人口千対死亡率がわずか10.0未満の状態が続いきたからだというのが氏の認識です。
日本は、「世界一死なない国」だからこそ、戦後わずかの間に、諸外国を一気に抜いて世界一の超高齢国家になった。しかし人間は不老不死ではない。現在の高齢者たちにも亡くなる時が確実にやってくると氏は言います。それが「日本の多死社会化」であり、そして、それはもう間もなく、そして確実に始まるということです。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2024年から毎年、年間に150万人以上死ぬ時代が到来するとされている。これは、日本の統計史上最大の年間死亡者数を記録した1918年の149万人(スペイン風邪のパンデミックがあった年)を超え、統計が残っていない太平洋戦争期間中の年間平均死亡者数に匹敵する規模だと氏はしています。
日本は、戦争もしていないのに、(毎年)戦争中と同等の人数が死ぬ国になる。しかも、それが約50年間継続する。単純計算しても、2022年から2100年まで述べ1億1576万人が死亡する一方で、生まれてくる子供はわずか4728万人。差し引き6850万人の人口が消滅することになるので、22世紀初頭の人口半減も決して誇張ではないということです。
人口学的には、人類は「多産多死→多産少死→少産少死→少産多死」というサイクルで流れていく。これは日本に限らず、世界のすべての国が同じ行程を歩むと氏は話しています。
少子化も人口減少もマクロ視点でみれば、このような人口転換メカニズムの大きな流れの中で推移していく。婚姻数や出生数が多少改善されたところで大きな流れは変わらず、(人口学的には)人口構造の新陳代謝には少なくとも100年はかかると言われているということです。
そうした現実を直視すれば、そろそろ私たちは「人口は減り続ける」という現実を前提に適応戦略を考えないといけないフェーズに来ているのではないかと、氏は改めて指摘しています。
人口が今の半分の6000万人になってしまう未来を「恐ろしい」「危機だ」と言っていても未来が変わるわけではない。人口減少を「恐ろしい未来」ではなく「当然やってくる未来」としてとらえ、6000万人になってもやっていける道筋を(これから80年かけて)築いていく必要があるというのが氏の見解です。
これから先、大量の高齢者群が「多死時代」を経て縮小した段階で、現在の中高年者偏重型のいびつな人口ピラミッドは(全年代均等型に)補正されると氏は言います。絶対人数は減るがバランスは整う。その時代になって初めて、むしろ現在の1億何千万の人口の方が異常だったことに私たちは気づくかもしれないと考える氏の指摘を、私も大変興味深く読んだところです。
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