東証プライム上場企業のうち5月16日までに決算(2022年3月期)の発表を終えた1148社の決算状況を集計したところ、純利益合計が4期ぶりに最高益を更新し、最高益企業の比率も約3割とバブル経済期の1991年3月期以来の多さだったと5月18日の日本経済新聞が報じています。
同紙によれば、中でも製造業の純利益(合計額)は、円安が輸出企業の収益を押し上げたこともあって前の期から68%の増加を見ており、世界経済が新型コロナウイルス禍から徐々に回復しつつある状況が見て取れるということです。
収益状況を業種別にみると、製造業では自動車が特に好調で、最大手のトヨタ自動車は半導体不足などサプライチェーンの制約を乗り越え、世界販売台数を前の期に比べて5%伸ばしたということです。また、ここのところの円安は輸出にも大きく貢献しており、営業利益ベースで6100億円の増益要因となったとされています。
実際、コロナ対策の財政出動によって家計が潤った米国では「リベンジ消費」が勢いづいており、マツダが最終損益で黒字に転換したほか、米国で販売奨励金を減らした日産自動車も今期復配を果たしたということです。
また、世界的なリモートワークの普及により、デジタル機器に使われる半導体の供給も追いつかない状況にあると記事はしています。半導体製造装置の東京エレクトロンやディスコ、電子部品大手の村田製作所、TDKなどが軒並み好調だったほか、SMCは半導体製造装置向けの空気圧機器がけん引して4期ぶりに最高益を記録したとされています。
その一方で、非製造業の業績回復はまだら模様。石炭や鉄鉱石など資源価格が高騰した総合商社が7社そろって最高益を更新。経済回復の国際物流が動き出し日本郵船など海運大手3社も最高益を記録する一方で、電力と建設は減益。電力は天然ガスなど燃料費の上昇に苦しみ、建設は、鋼材などの資材高騰や人手不足による人件費上昇が重荷となり、ゼネコン大手4社のうち大林組、大成建設、清水建設が減益となったということです。
一方、好調に見える製造業でも、原材料高の価格への反映が遅れ業績に響いている業種・企業も多いと記事はしています。スズキは22年1~3月期に原材料高が393億円の営業減益要因となり、ファナックの営業利益率も21年4~6月期の28%から、22年1~3月期の22%まで3四半期連続で下がった。ロシアビジネスを展開してきた企業では、今回のウクライナ侵攻で事業の一時停止や縮小、撤退を余儀なくされ多くの損失を計上せざるをないという状況も生まれているということです。
さて、未だコロナにより閉ざされている日本国内だけに暮らしていると、ロシアによるウクライナ侵攻で世界は活気や元気を失っているように見えますが、その実、マスクから解放された経済は案外タフに動き始めているようです。
各国が実施した経済対策もあり、世界では既にコロナへのリベンジ消費が始まっている。米国を中心に株価は安定感を失っているものの、先進国で続くインフレや金利の上昇が足元の消費を煽っている側面などもあると聞きます。
金融機関に勤める友人から、「ここのところ製造業がかなり好調のようだ」という話は聞いていましたが、こうしたデータを見る限り(まだまだ「まだら模様」ではあるものの)、昨今の為替相場の円安などで一息付けている業種もそれなりにあるのだろうと感じるところです。
経済サイトやテレビニュースなどを見ていても、聞こえてくるのは人心を不安にする話ばかり。戦争、物価上昇、株安、円安と、お先真っ暗と言った昨今です。でも、本当にそれだけなのか。
折しも、先日、政府が新型コロナウイルス禍に伴う雇用調整助成金(雇調金)の特例措置を9月末まで延長する方向で最終調整に入ったとの報道がありました。全業種を対象に6月末までだった給付の期限を3カ月延ばし、助成水準も変更しないということです。
コロナ禍の緊急事態を踏まえ始めた給付制度を、政府はこのままずるずると続けるつもりなのか。既に日本経済は、次のフェーズに移り始めているのではないか。
ウクライナ危機に端を発する原材料高や中国のゼロコロナ政策を背景とするサプライチェーンの混乱など、不確定要素が山積しているように見える現在、日本経済の再生を図るならもう少し違ったアプローチが必要なのではないかと改めて感じているところです。
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