こども家庭庁が今年7月、15歳から39歳の2万人を対象に実施した結婚に関する調査(「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」)によれば、既婚者に結婚相手との出会いのきっかけを尋ねた設問に対し、4人に1人にあたる25%が「マッチングアプリ」と答え、最も多かったということです。 因みに、2位は「職場や仕事関係」で21%、3位が「学校」の10%、そして「友人などからの紹介(9%)」、「パーティーなど(5%)」と続いています。
調査を行ったこども家庭庁では、この結果を「若い世代を中心に出会いの場は多様化し、SNSの影響が増している」と受け止め、アプリを安全に利用できる環境整備を図るなどSNSを通じた出会いの支援を強化する方針と伝えられています。
昭和生まれのオヤジとしては、「おいおい、いくら何でも(官民そろって)ネットを信じすぎじゃないの?」とも思いますが、(そもそも)そうした不安や懸念自体を感じないのが「Z世代」の特徴なのでしょう。
前述の調査によれば、結婚のメインの年齢層である25-34歳の独身女性は、結婚のハードルとして「出会いの機会がない」を最も多く挙げている由。職場の人間関係が濃密だったり、おせっかいな人たちがお膳立てしてくれたりして提供されていた「出会い」の場が、アプリを手繰って求人をしなければ得られなくなったという事でしょうか。
少子化の前提となる「若者の未婚化」が進む現在の状況と対策に関し、マーケティングディレクターでコラムニストの荒川和久氏が、11月26日のYahoonewsに『若者の結婚のハードルの男女差「出会いがない」というが、出会えれば誰でもいいわけではない』と題する一文を寄せていたので、概要を小欄に残しておきたいと思います。
先ごろ、「未婚の約7割 相手を見つけたくても何をすればいいのかわからない」というNHKのニュースが話題となったが、1980年代までは「わからない」状態でも、周囲のお膳立てやプレッシャーやお節介の中で「わからないまま結婚していた」からこそ皆婚が成立していたという見方もある。「わからないから結婚できない」のではなく、わからないからこそ結婚できた。まさに、樹木希林さんの名言「結婚なんてものは若いうちにしなきゃダメなの。分別がついたらできないんだから…」そのものだと、荒川氏はコラムの冒頭に綴っています。
15-39歳までの全国未婚男女を対象に、今年7月にこども家庭庁が行った「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」では、結婚のメインの年齢層である25-34歳の女性が「結婚のハードル」として①「出会いの機会がない」、②「自由や気楽さを失いたくない」、③「結婚しているイメージができない」などを挙げる中、同じく25-34歳の男性は、①「経済力がない」、②「出会いの機会がない」、③「結婚資金が足りない」を挙げている。男性にとっての結婚のハードルは、女性と比べて明らかに経済的要因が多いと氏は話しています。
これらは如実に現状の「未婚化」の姿を写している。つまり、男性の経済問題は結婚への大きなハードルであり、女性は自分の生き方の志向が結婚とは逆方向に進んでいるというのが荒川氏の認識です。
「出会いの機会がない」との答えは確かに少なくないが、それはどちらかというと女性側の問題で、より正確にいえば「出会っているが、私がいいと思う相手に出会えてない」という意味でしかない。当たり前だが「相手は誰でもいい」というわけではなく、「私がいいと思う」条件の中に「相手の経済力」は大きな比重として存在しているというのが、この論考で氏の指摘するところです。
もちろん、一方の男性も「出会いの機会がない」ことに違いはないが、そこには「たとえ出会ったとしても経済力の査定でことごとく落とされる」という問題が大きい。それが続くから、男たちは「どうせ…」と学習性無力感に陥ってしまうと、氏は事情を説明しています。
要するに、問題の本質は「出会いがない」のではなく、「男の経済力」が問題となっているということ。(言い換えれば)こうした問題の本質を無視して、「出会いの機会を増やせばいい」とか「婚活支援をすればいい」というのでは、いかにも短絡的すぎるというのが氏の見解です。
実態として、妻より夫の方が所得の高い「妻の経済上方婚」比率は7割、同額婚が2割、妻の方が夫より高い「妻の下方婚」はわずか1割に過ぎない。しかも、その1割も大部分は夫無収入だと(2022年就業構造基本調査・20代妻子無し夫婦の場合)氏は指摘しています。
ちなみに、前述こども家庭庁の調査でも、25-34歳既婚女性において「配偶者の年収は自分より上が望ましい」と回答した人は81.7%に及ぶ。仮に、「私は相手の男性の年収なんか気にしない」という女性がいたとしても、自分の年収より大幅に低い相手と知れば、恋愛はしても結婚は断るというのが(この日本では)一般的だということです。
しかし、だからといって「女性は自分より年収の低い男性と結婚すべき」などと無謀なことを言っても仕方がない。現実的にそうなるはずもなく、自分より稼げない男と結婚するくらいなら、それこそ「自由さを失いたくない」と、女性は結婚を選択しないと氏は言います。
もちろん、「金があれば男は結婚できる」とは言わない…が、間違いなく「金がない男は結婚できない」。おまけに、20代は30年近く額面給料があがっていない上に、社会保険料などは上昇し、物価高もあいまって実質可処分所得は減っている有様だということです。
少子化の大きな原因の一つに「未婚化」があることは、既に人く知られているところ。本当に若者の婚姻増を支援したいのであれば、「出会いの機会」以前にこの経済問題をクリアしないとならないだろうと論考を結ぶ荒川氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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