令和3年の簡易生命表によれば、日本人の平均寿命は男性で81.47歳、女性では実に87.57歳。40歳時点の平均余命を見ても男性40.81年、女性47.17年ということなので、40歳は(現在の)日本人の人生のちょうど折り返し地点と言って良いかもしれません。
戦国時代の末期、「人生50年…」と好んで謡ったのは織田信長ですが、 「人生100年」と言われるようになって久しい現在、高齢となった渋沢栄一翁がしばしば色紙に残したとされる「40,50は洟垂れ小僧」という金言も、まさに現実のものになっている観があります。
そうした折、筑波大学大学院教授の平井孝志氏が総合経済サイト「東洋経済ONLINE」(10月12日)に寄せていた『40歳で人生の83%が「終わっている」という衝撃』と題する(ある意味キャッチ―なタイトルの)記事が目に留まったので、ここで紹介しておきたいと思います。
人生100年時代と言われる中、40~50代になって「残りの半生をどう生きようか」と考える人も多いだろう。しかしその一方で「人生の後半戦は瞬く間に過ぎる」と言われることも多い。(そこで)人生の折り返しを迎える私たちに残された時間は(実際)どのくらいあるのかを考えてみたいと、平井氏はこの論考に綴っています。
人生100年とすると、50歳の貴方に残された人生はあと50年。普通は、「平均寿命で考えると残り30年か…」などと考えがちだが、その認識は間違いだとこの論考で氏は断じています。
実際には、貴方にそんなにまとまった時間は残されていない。それは、貴方の脳が認識できる時間の速度が、後半生になるにつれ加速度的に速くなるからだというのが氏の見解です。
貴方にとって、これまで感じてきた50年分の時間感覚と、これから先の50年の時間感覚はおそらく全く違うものになる。それでは何故、歳を取れば取るほど1年があっという間に感じられるようになるのか。
「人は歳を取ればとるほど未経験のことが減るので、その分時間を短く感じる」…この論理は「ジャネーの法則」と呼ばれ、19世紀のフランスの哲学者・ポール・ジャネが唱えたものだということです。
それは簡単に言えば、生涯のある時期における時間の心理的長さは「年齢に反比例する」というもの。
この法則に従えば、1歳の時に感じる時間の流れはそのまま1年だが、2歳の時に感じる1年は、2年間の人生のうち半分なので2分の1年。3歳の時の1年は、2歳までに経験したことに対し新しい経験が3分の1になるので、感じる時間は3分の1年になるということです。
つまり、50歳の人間にとっての1年の長さは、1歳までに感じた長さのおよそ50分の1(ざっと7日と8時間)にしか感じられず、100歳になればその体感時間は100分の1程度にまで縮んでしまうということ。この考え方によれば、その人が100歳まで生きると仮定して、人生全体の体感時間は、1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + …… + 1/99 + 1/100 = (体感時間は)5.2年 …となるということです。
一方、そうした前提の下、例えば40歳時点までの体感時間を計算すると、4.3年という数字になると氏は言います。
100歳をゴールにして合計するとその値は5.2年。そして40歳までの合計の数値は4.3年なので、人は40歳の時点で(なんと)人生の約83%(=4.3/5.2)を既に過ごしてしまっている計算になる。しかも、50歳時点ではそれが87%に達してしまい、残りの人生で体感できる時間は、それまでの人生のおよそ1割に過ぎないというのが氏の説明するところです。
因みに、この計算のスタートを、(自覚のない0歳から始めるのではなく)物心の着く小学校入学時点に変えてみても、50歳時点の結果は80%程度。(それでは、と)1年単位ではなく10年単位で計算してみても、50歳時点で人生の78%が終わっている計算になったと氏は記しています。
聞けば聞くほど寂しい話ですが、残念ながら確かにその感覚は、実感としても十分に理解できるもの。少なくとも人生の後半戦が、人生の成長過程にあった前半生とイーブンと言うわけにはいかなそうだというのは、誰もが覚悟しておかなければならない現実なのでしょう。
とはいえ、いつまで(青春時代のような)新鮮な持ちでいられるかは人それぞれに違うはず。人生に残された時間を有意義に過ごすためにも、いつまでも世の中に達観せ、純粋な気持ちで過ごしていきたいものだと、氏の論考を読んで私も意を新たにしたところです。
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