総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(令和5年)によれば、全国の二人以上世帯における平均貯蓄額は1901万円とのこと。「え、皆んなこんなに貯金してるの?」と驚く向きも多いかもしれませんが、これはあくまで超お金持ちの世帯まで含めて「平均」に均しているから。中央値をとれば1000万円を大きく下回ることは(ほぼ)間違いありません。
ちなみに、都道府県別に見た貯蓄額1位は「愛知県」の2659万円である由。そこに「兵庫県」の2582万円、「神奈川県」の2461万円が続くということで、ガッチリ倹約型の名古屋人や、横浜、神戸などのハイソな家庭の貯蓄額はやはり多いということなのでしょうか。
反対に、最も平均貯蓄が少ない都道府県は904万円の「沖縄県」で、1位の「愛知県」とは実に3倍もの差がある状況です。各県の平均年収ランキングを見ると、愛知県の4位(733万円)、兵庫県の8位(672万円)、神奈川県の3位(734万円)に対し沖縄県は最下位(47位507万円)ということなので、理由は「南国気質でのんびりしているから」というだけではないのかもしれません。
ともあれ、収入が多い人が貯金が多いとも限らないのはまた事実。さらに言えば、貯金が多い人が「幸せ」かと聞かれれば、(沖縄の人と名古屋の人を比べてみても)決してそうでもなさそうなのが人生や社会の面白いところなのでしょう。
結局のところ、お金はあくまで(貯めるためではなく)使うためのもの。4月19日の経済情報サイト「BUSINESS INSIDER JAPAN」に『老後のために「貯蓄しすぎた人」が陥る 3つの落とし穴とは?』と題する記事が掲載されていたので、参考までにその内容の一部を残しておきたいと思います。
記事によれば、世界的ベストセラーとなった『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の著者、ビル・パーキンス氏は同書において、将来のためと節約し過ぎていると(やりたいことを)「自制」してしまい、今しかできない経験をする機会を逃してしまうと話しているということです。
老後のために貯蓄しすぎることのどこが問題なのか。記事はここで、パーキンス氏が説く3つの理由を紹介しています。
その一つ目は、(貯蓄を意識しすぎると)若い時しか経験できない機会を逃してしまうということ。同氏はこの著書で、将来使いきれない未知の出費のためにお金を貯めておくより、生涯をかけて賢く使う方が良いと説いていると記事はしています。
老後の生活を意識しすぎると、若い時に人生を楽しむ能力を制限してしまうというのが氏の主張するところ。思い出作りや楽しい経験をすることは「投資」であり、そのような思い出から得られる喜びが「配当」されるということです。
同書によれば、「早いうちに投資する方が得だ。投資を始めるのが早ければ早いほど、思い出という配当を受けられる時間が長くなる」とのこと。歳を取るとさまざまなしがらみや責任、身体的な理由でできなくなることでも、若い時なら容易にできる。若いうちにしかできない経験こそが、(真に)お金をかける価値のあるものだということです。
さて、(貯金をしすぎることの)二つ目のリスクは、「子どもが老成してから相続しても無駄になる」ことだと記事は指摘しています。
パーキンス氏によれば、子どもたちのためにお金を残すことは本質的に悪いことではないが、自分が死ぬまでお金をとっておくのは相続の形としてベストではないとのこと。60代の多くはすでに老後資金の準備ができていて、「子どもたちの年齢が上に行けば行くほど、お金をあげても彼らには必要ないものとなる」ということです。
それであれば、彼らがまだ若いうちに、社会人として独り立ちする時などの資金を援助してあげる方が良い。そもそも、人生の最期までお金をとっておくというのは本末転倒だというのが氏の主張するところです。
記事によれば、この著書においてパーキンス氏が主張する重要なポイントは、「使われないお金は失われたも同然であり、それと同時にそのお金を稼ぐために費やした時間も無駄になる」という点。
結局、使われることのなかったお金だけでなく、(貯めこむだけの)お金を稼ぐために費やされた若さと時間があれば、貴方はどれだけの経験をすることができるのかと氏は問いかけているということです。
稼いだお金は、自分のために有意義に使って「なんぼ」ということでしょうか。実際、世帯年収(平均733万円)の4倍近い2659万円(世帯平均貯蓄額)を貯蓄に回している愛知県民は、一生の稼ぎうちの4年間をタダ働きしているようなもの。一方、(平均世帯)年収は507万円でも、貯蓄額を1.8倍の904万円で済ませている沖縄県民は、(一生で見れば)時間やお金を有効活用していると言えるかもしれません。
人生を振り返った時に後から残念に思わないよう、お金を必要以上に貯めている人は、貯蓄・出費ともに改めて自分の長期プランを見直しても良いかもしれないと話す記事の指摘を、私も大変興味深く読んだところです。
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