MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯485 沖縄の婚姻事情と出生率

2016年02月27日 | 社会・経済


 引き続き、全国の地域ごとの合計特別出生率を追っていきます。

 厚生労働省が発表した人口動態統計(2015)により合計特殊出生率を都道府県別に比較すると、群を抜いて高いのが沖縄県で1.86、次いで宮崎県が1.69、長崎県、島根県の1.66、熊本県の1.64)と続いています。

 一方、低い方から見ると、こちらもダントツで低いのが東京都の1.15、次いで京都府の1.24、北海道の1.27、奈良県の1.27、宮城県の1.30といったラインナップになります。

 大阪府、神奈川県、埼玉県がそろって1.31、千葉県が1.32と大都市やその周辺地域の出生率が軒並み大きく伸び悩み出生率低迷の原因が様々に指摘される中、本土から遠く離れた沖縄県の出生率(だけ)が以前から飛び抜けて高いのは、いったい何が原因なのでしょうか?

 少し前の記事になりますが、時事通信社の情報サイト「i JAMP」ではその理由を、結婚へのハードルが低く、子供がいても離婚しやすい沖縄独自の社会環境、文化的風土に求めています。(「結婚しやすく離婚しやすい好条件」2013.7.4)

 先に述べた直近の人口動態統計(2015)によると、人口1000人当たりの婚姻率は、東京都が6.7(特に区部は7.3)とずば抜けて高く、以下、沖縄県が6.0、少し離れて愛知県5.7、神奈川県、大阪府。福岡県5.4という順で若者が多い大都市圏が続いています。

 一方、離婚率(人口1000人当たり)を見ると、沖縄県が2.54でダントツの1位。以下、宮崎県2.07、大阪府2.05、北海道2.04と続いており、その順位はあまり大きく変化していないようです。

 こうした数字から、沖縄県は婚姻率も離婚率も常にトップクラスで高く、結婚しやすくまた離婚もしやすい、有体に言ってしまえば「熱しやすく冷めやすい」県民性にあることが判ります。

 以下、2011年の数字になりますが、記事によれば婚姻総数に占める「夫婦とも初婚」の割合は沖縄県では70.4%(全国74.1%)と全国的に見て有意に低く、夫婦ともに再婚のカップルに占める離別(その前の結婚で配偶者と離婚している)割合は97.7%(全国95.8%)と、いわゆるバツ1、バツ2同士の結婚の割合も高いことが判ります。

 また、19歳以下の若年結婚の割合を見ると、初婚の夫では沖縄県が3.3%で全国1位(全国平均1.1%の約3倍)、初婚の妻は5.6%とこちらも全国1位(全国平均2.3%の2倍強)であり、10代の若さでの結婚が他の地域に比べ特異的に多いとされています。

 一方それに合わせるように、母親の年齢が19歳までの若年出産が出産数全体の2.6%を占め全国で1位(全国平均1.3%)。逆に届出時の年齢が19歳以下の若年離婚は夫が0.4%で4位(全国平均0.2%)、妻が1.4%で1位(全国平均0.6%)などという統計データもあるようです。

 興味深いのは離婚時の子供の数で、子供が3人いる夫婦の離婚は全国平均で7.1%なのに対し沖縄県では12.0%、子供が4人いる夫婦については全国平均で1.2%なのに対し沖縄県では3.9%と、いずれも全国平均を大きく上回っています。

 さらに言えば、そのうちの3人の親権を妻が行う割合は、全国平均が5.6%のところ沖縄県で9.6%、4人の親権を妻がとる割合は全国平均で0.9%のところ2.8%と、多くの子供を抱えて離婚に踏み切る夫婦の割合や、そうした子供のめんどうを母親が見る割合が、他の地域と比較して沖縄は高いということになるでしょうか。

 さて、整理をすると「若くして結婚し子供を持つ夫婦が多い一方で、結婚生活が維持できなくなると子供がいても離婚する割合が高く、そのため再婚も多い」という沖縄県の若者の特徴が、こうしたデータからはおぼろげに浮かび上がってきます。

 記事はその理由として、
(1) 人間関係が密なことから出会いが多いこと
(2) 親兄弟など親戚が近くにいることから子育てのサポートが得やすい(子供がいても離婚しやすい)こと
(3) 離婚に対するマイナスイメージが少ないことから抵抗感が低いこと
などを挙げています。

 さらに記事は、沖縄県における結婚に際しての挙式率の低さについても指摘しています。

 沖縄県の婚姻届出数は年間約9000組で、そのうち結婚式を挙げるのは概ね40〜45%だということです。

 挙式率は全国では北海道が特に低くて50%強と言われているということですが、沖縄はさらにそれよりも低い。そしてその大きな要因のひとつは、「授かり婚」いわゆ「できちゃった婚」が非常に多いからだということです。しかも、二十歳前後の若年層の授かり婚が多いため、経済的余裕がない状態で離婚をするケースも多いということです。

 一方、沖縄県で再婚率が高い理由について、記事は「沖縄ではシングルマザーになっても親や周囲が協力的で、再婚に関しても非常に寛容」であることを挙げています。

 沖縄には「ゆいまーる」という相互扶助の精神があり、子供は地域で育てるという考えが浸透している。これにより母親には心の余裕が生まれ、次の恋愛に向かいやすいということにつながるのではないかとしています。

 さらに記事は、「模合(もあい)」と呼ばれる沖縄地方独自の文化の存在についても触れています。これは一種の無尽講(むじんこう)で、沖縄の人々は職場、同級生、趣味の仲間などでこうした「模合」作り、グループでの絶え間ない活動を通して人と人との日砂を太くするということです。

 記事は沖縄の結婚事情を、こうした地域における濃密な人間関係を抜きにしては語れないとしています。

 人間関係が希薄になっている都市部における出生率の低下が問題視されている昨今ですが、沖縄の結婚や育児の環境を細かく見ていけば、少子化問題の解決の糸口を様々なところに見つけることができるかもしれないと感じた次第です。




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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-02-09 16:48:01
沖縄は婚外子出生率も本土の倍。
政府も、沖縄を特区として、少子化対策の一環として、マイナンバー連動DNAデータベース駆動により、婚外子の実父を強制認知させることを始めたらよい。中国では婚外子戸籍登録に130万罰金がいるので、もし、沖縄が中国に占領されそうになったら、DNAデータベース駆動・強制認知制度後なら、沖縄の若い女性たちはこぞって反対するはず。
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