第二部は仮名手本忠臣蔵から五段目より七段目まで。
一応通し狂言となっていますが、三回にわけての通し狂言。
今回の演目が仮名手本忠臣蔵の名場面ですね。
猟師となった勘平は、山崎街道で同志の千崎弥五郎に出会い、仇討ちの資金調達を約束します。一方、おかるの父与市兵衛は夜道で斧定九郎に襲われて殺され、懐の五十両を奪われます。それは、勘平の仇討ち資金を用立てるため、おかるを身売りした前金。しかし定九郎は、猪を狙って発砲した勘平の銃弾であえなく絶命。誤って人を撃った勘平は、慌てながらも懐からその五十両を抜き取り、その場から逃げ去ります。
おかるを引き取りにきた祇園一文字屋才蔵の言葉から、昨晩撃ち殺したのが舅の与市兵衛と思い込む勘平。そこへ現れた不破数右衛門と千崎弥五郎、姑に詰問された勘平は、罪を吐露して腹を切りますが、真犯人が定九郎であったことが判明します。疑いの晴れた勘平は、仇討ちの連判に名を連ねることを許されると、安堵して息絶えるのでした。
祇園で遊興に耽る大星由良之助のもとへ、おかるの兄の寺岡平右衛門が訪れ、仇討ちに加わりたいと願い出ますが、相手にされません。息子の力弥が届けにきた密書を、遊女おかると、師直と内通する斧九太夫に盗み読みされたことに気付いた由良之助は、おかるを殺そうとします。それを察した平右衛門は、自ら妹を手にかける覚悟を決めますが、由良之助に止められます。事情を知った由良之助は、おかるに九太夫を殺させて勘平の仇を討たせると、平右衛門を連判に加えます。
五段目
山崎街道出会いの段 小住太夫 勝平
二つ玉の段 靖太夫 錦糸 燕二郎(胡弓)
人形 早野勘平 和生
先崎弥五郎 玉勢
百姓与市兵衛 亀次
斧定九郎 玉輝
六段目
身売りの段 咲太夫 燕三
早野勘平腹切りの段 呂勢太夫 清治
人形 女房お軽 一輔
与市兵衛女房 蓑二郎
早野勘平 和生
原郷右衛門 玉也
先崎弥五郎 玉勢
七段目 祇園一力茶屋の段
由良之助 呂太夫
力弥 咲寿太夫
おかる 津駒太夫
一力亭主 南都太夫
伴内 希太夫
九太夫 三輪太夫
平右衛門 藤太夫
宗助 清友
人形 斧定九郎 勘壽
伴内 文司
一力亭主 玉路
大星由良之助 勘十郎
寺岡平右衛門 玉助
大星力弥 玉翔
遊女お軽 蓑助 一輔
七段目では右の床にずらりと太夫が並び、
寺岡平右衛門が登場すると舞台の左に一人分の席が設置され、そこに平右衛門を語る太夫が座ります。
自分が持っているDVDではその席に緋毛氈が敷かれていましたが、今回は敷かれていません。
ちなみにそのときの寺岡平右衛門を語ったのは五代目織大夫(後九代目綱大夫、その後九代目源太夫)。
大星由良之助宛ての密書を一力茶屋の二階から盗み見したお軽、
それに由良之助が気づいて、
「由良さんか」
「おかるか。そもじはそこに何してぞ」
「アイ、わたしやお前に盛り潰され、あんまり辛さの酔ひ醒まし。風に吹かれてゐるわいな」
「ムウ、ハテなう。よう風に吹かれてぢやの。イヤかる、ちと話したい事がある。屋根越しの天の川でこゝからは言はれぬ。ちよつと下りてたもらぬか」
「話したいとは、頼みたい事かえ」
「マアそんなもの」「廻つて来やんしよ」
「アヽイヤイヤ、段梯子へ下りたらば、仲居が見つけて酒にせう。アヽどうせうな。アヽコレコレ、幸ひこゝに九つ梯子、これを踏まへて下りてたも」
と、小屋根に掛ければ、
「この梯子は勝手が違うて、オヽ恐。どうやらこれは危いもの」
「大事ない、大事ない。危ない恐いは昔の事、三間づゝまたげても赤膏薬も要らぬ年輩」
「阿呆言はしやんすな。船に乗つた様で恐いわいな」
「道理で、船玉様が見える」
「エヽ覗かんすないな」
「洞庭の秋の月様を、拝み奉るぢや」
「イヤモ、そんなら降りやせぬぞえ」
「降りざ降ろしてやろ」
「アレまだ悪い事を、アレアレ」
「喧しい、生娘か何ぞの様に、逆縁ながら」
と後より、ぢつと抱きしめ、抱き降ろし。
このような卑猥なやりとりをして、梯子で二階から降りてゆくのですが、
お軽を遣う蓑助さん、体調が悪いのか、梯子で降りた場面からは一輔がお軽を遣っていました。
ちなみに、自分の持っているDVDは若い蓑助が最後までお軽を遣っています。
若手の義太夫、育ってきましたね。