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moon

「あちらにいる鬼」井上 荒野 2019-79

「あちらにいる鬼」井上 荒野

作家の長内みはる(瀬戸内寂聴)は、講演旅行をきっかけに
戦後派を代表する作家・白木篤郎(井上光晴)と男女の関係になる。
一方、白木の妻である笙子は、夫の手あたり次第とも言える女性との淫行を黙認、
夫婦として平穏な生活を保っていた。


実在する人物を書いたと思うと
いろいろ言いにくいけれど、書いたのが娘だとなると
それも許される感じがする(勝手に)

おそらく絶対に共感はしないであろう
と思って読んだ。

凡人には、
というよりも鉄の貞操観念を持つ私には。
だから、寂聴には共感しない。

しかし、予想に反してとても読みやすかった。

この男のどこがいいのかさっぱりわからない。
しかし、この男にこだわる2人の女は
実に穏やかにいろんなことを受け入れる。

受け入れているように見える、
というだけであろう。

おそらく、その奥底に沈む汚泥が
書かれていないだけである。

汚泥を時折巻き上げそうになる、
ところで止まっている、
そうとれて仕方なかった。

鬼はそこにいる。
それぞれがもつ汚泥の中に。

紹介文では鬼は白木なんだよね。
そうなんだぁ、ふうん。
 

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