あれはまだ暑かった時
仕事から帰宅したら蜘蛛がいた。壁に。
大きさは足も入れてCDくらい。
茶色というのかグレイというのか
そんな色。
グロい、だいぶグロい。
虫は苦手だ
写真さえも触れない。
だがしかし、蜘蛛は殺せない。
小さな蜘蛛はお見掛けすることがあるが
ティッシュにくるんで外に放つという方法を幼いころからとっていた。
だが、でかい。
そしてグロい。
現代人らしくスマホで調べてみる。
毒はない、害もない、むしろ益虫。
そおか、さすがにあの大きさのは、ティッシュにくるむとか無理。
蜘蛛氏を見ることをやめて
シャワーしたりお茶飲んだりしたら
いつの間にかいなくなっていた。
さて、蜘蛛氏は何処から来たんだろうか。
ずっとこの2年、いたのか。
いや、いないだろう。
心当たりはある。
掃き出し窓を開けて風を入れるときに
網戸が拭いても拭いても綺麗にならないから
カーテンが網戸にあたるのがいやで
網戸にしないで開け放っていた。
考えられるとすれば、その時に
うっかり入っちゃったんだろうな。蜘蛛氏。
もう出ないで欲しいと願いながら過ごした。
だがしかし、時々、うっかり出会うのだ。
蜘蛛氏は浴室にいることがあった。
洗濯機のそばにいたこともあった。
部屋のど真ん中にいたこともあった。
風を入れるときに窓を開け放って
蜘蛛氏が出て行けるようにもした。
だが、どうも、蜘蛛氏は出て行かない。
もしや気に入っているのか。
とうとう、私は次に会ったら噴射すべく
殺虫剤を購入した。
どうか、私に、これを使わせないでくれ。
娘が帰ってきて、息子が帰ってきて
そして、今日。
玄関で靴を脱いでスリッパを履いた。
振り返ったら三和土にいるじゃないか。。
お、おー
玄関ドアの近く。
これはもしや追い出すチャンスでは?
速やかに殺虫剤の封を切る。
そぉーっと玄関ドアを開ける。
蜘蛛氏の近くに噴射する。
逃げる。。
だが、蜘蛛氏は思っているよりも
ずっとゆっくりと玄関ドアに向かって移動を始めた。
なんてゆっくりなんだ。
ダメージ?ごめん、ほんとごめん
ちょっとくらってるよね。
そして、玄関ドアの向こう側に行った。
玄関ドアを、これはとっても速やかに閉める。
鍵をかけてチェーンをする。
闘いは終わった。
蜘蛛氏、もし、あの噴射で
立ち直れなくなっていたら本当に申し訳ない。
だが、やはり、同居は無理だったよ。
さらば。